反論にしては反証に乏しい内容ですね

2月2日放送 テレビ朝日「報道ステーション」の報道(総理中東訪問関連)に関する申し入れ 」の件。

 貴社は,平成27年2月2日放送の「報道ステーション」において,シリアにおける邦人人質殺害事件につき報じる中で,総理の中東訪問に関し,「そもそも外務省関係者によれば,パリのテロ事件もあり,外務省は総理官邸に対し中東訪問自体を見直すよう進言していた」旨報じ,また,エジプトで行われた総理の政策スピーチに関し,「外務省幹部によると,この内容についても総理官邸が主導して作成されたという」と報じるなど,あたかも外務省の意に反して,中東訪問が行われ,スピーチの当該部分が作成されたかのような報道がありました。
 この報道内容は事実と全く異なるものです。
 総理の中東訪問については,同2日の参議院予算委員会で総理も述べられているとおり,様々な観点を総合的に判断して決めたものであり,貴社のように社会的に影響力の大きい報道機関が,このように事実に反する報道を行うことは,国民に無用の誤解を与えるのみならず,テロリストを利することにもつながりかねないものであり,極めて遺憾と言わざるを得ません。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/prs/page4_000955.html

「外務省は総理官邸に対し中東訪問自体を見直すよう進言していた」と「(総理の政策スピーチは)総理官邸が主導して作成された」の二点について、「事実と全く異なる」と外務省は抗議しているわけですが、反証と言える記載が極めて曖昧で「事実と全く異なる」と抗議するには理解に苦しむものになっています。

例えば「総理の中東訪問については,...様々な観点を総合的に判断して決めた」とありますが、総合的に判断する過程において「中東訪問自体を見直すよう」な進言は一切なかったのでしょうか?最初から中東訪問は確定事項で、誰も異論を唱えなかった、と主張するならば「事実と全く異なる」というのもわかりますが、「様々な観点を総合的に判断」という以上、「中東訪問自体を見直す」という観点もあったのではないかと思えますし、少なくともそれを否定するような内容ではありません。

あるいは、外務省は終始一貫統一して中東訪問をプッシュしていたということなら、「報道内容は事実と全く異なる」と言えますが、この記述からはそれも読み取れません。
「(総理の政策スピーチは)総理官邸が主導して作成された」についても、違うと言うなら、外務省が積極的に政策スピーチの素案を作り、その線で最終案が固まったということでしょうか。そうならそうだと書くべきでしょうが、この記載からはそうは読めません。

はっきり言って、「事実と全く異なる」とだけ主張し、その根拠も実際はこうだったという説明もなく、単に気に入らない報道に対して圧力をかける意図以外何も無いように見えますね。

安倍政権の萩生田総裁特別補佐がデマを流した時*1のように情報源となった人物から誤った情報を受け取ることもあるでしょうが、テレビ朝日の番組が取材に基づいて報道している限り、それに対して政治が圧力をかけるのは言論弾圧に他なりません。

しかも「テロリストを利することにもつながりかねない」とは、政府が使う表現としは異常です。
こういう言論の自由が政治権力によって圧力をかけられる状況、それを非難できない状況になることこそ、テロリストの思う壺でしょうね。