どうにも混乱しているようですが、報道内容を元に後藤さん関連事件経過を見てみます。

誰かが嘘をついているんでしょうね、これ。

2014年10月以前、日本政府は後藤さんに対してシリア渡航をやめるよう3回直接伝達

という報道があります。

後藤さんに「渡航やめるよう3回伝達」 世耕官房副長官

2015年2月2日23時04分
 世耕弘成官房副長官は2日のBSフジの番組で、後藤健二さんが過激派組織「イスラム国」の支配地域へ自ら入ったことについて「我々は自己責任論には立たない。国民の命を守るのは政府の責任であり、その最高責任者は安倍総理だ」と語った。そのうえで「日本国憲法渡航の自由を保障しており、禁止はなかなかできないのが悩みだ。後藤さんに関しては過去にシリアへ行ったことも把握しており、退避勧告渡航延期勧告も出ているので(シリア入りを)やめてくださいと伝えていた事実はある」と述べ、外務省から3回に渡って後藤さんに直接、注意喚起をしていたことを明らかにした。

http://www.asahi.com/articles/ASH227HQ8H22UTFK00W.html

事実なら、日本政府は湯川さんの事件を踏まえて、慎重な対応をしていたように思えます。

2014年11月以降、後藤さんが行方不明になったにもかかわらず日本政府の動きが鈍い

こういう報道がありますね。

1人だけ身代金要求=後藤さん家族に20億円−「イスラム国」人質事件

 過激組織「イスラム国」を名乗るグループが日本人男性2人の殺害を警告した事件で、1人の家族に昨年11月以降、身代金を要求するメールが届いていたことが21日、政府関係者への取材で分かった。要求は20億円余りで、拘束されたが生存していることが分かる内容だった。もう1人の家族には届いていない。
 グループは今月20日、2人を拘束している映像を公開し、日本政府に身代金の支払いを要求。2人分の名目で2億ドル(約235億円)を指定した。政府は2人の早期開放を呼び掛けるとともに、要求の推移や背景を分析している。
 政府関係者によると、メールが届いたのはジャーナリスト後藤健二さん(47)の家族。行方不明になった後の昨年11月以降、イスラム国を名乗る人物から複数回送られた。後藤さんを拘束したことを伝え、日本円で20億円余りの身代金を要求。本人が書いたものではないが、拘束と生存を家族が確信できる内容だった。
 一方、もう1人の湯川遥菜さん(42)は、後藤さんより前の昨年8月に拘束されたが、同様の身代金要求は確認されていない。(2015/01/21-19:05)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201501/2015012100866

後藤さん妻に20億円要求 「イスラム国」側がメール

2015年1月22日05時50分
 イスラム過激派組織「イスラム国」に拘束されたジャーナリスト後藤健二さん(47)=東京都=の妻あてに昨年11月〜今年1月、後藤さんの拘束を伝え、身代金を要求するメールがイスラム国関係者から送られていたことが政府関係者への取材でわかった。妻は相手側と約10通のメールをやりとりして、後藤さん本人の拘束が間違いないことを確認した。身代金の要求額は20億円余だったという。
 後藤さんは昨年10月下旬にシリア入りし、間もなく連絡が途絶えた。政府関係者によると、妻は同月末に外務省に相談。メールが届いたのはその後で、昨年12月初めに、このメールに気づいて開封した。メールには、後藤さんの身柄を預かっていることが英文で記されていた。
 妻は内容の真偽を確かめるため、後藤さん本人しか知り得ない事柄についてメールでただしたところ、複数の質問に対して正しい回答が返ってきた。届いたメールのなかには、他の外国人の誘拐事件で被害者側とイスラム国側がやりとりした情報にたどり着くアドレスが記されたものもあり、情報の内容が過去の被害と合致したという。
 イスラム国側が身代金を要求したのは、今年1月初めのメールで、20億円超に相当する1千数百万ユーロを指定してきた。外務省はメールの内容をふまえ、警察当局とともに海外の関係機関の協力を得ながら、メールを送信した人物の解明や情報収集にあたってきた。メールに後藤さんの写真など画像が添付されていたことはなかったという。

http://www.asahi.com/articles/ASH1P65P7H1PUTIL03K.html

イスラム国を名乗る人物から11月以降複数回、後藤さんの家族宛にメールが送られています。家族がメールを確認したのは12月とのことです*1。2015年1月初めのメールで、20億円の身代金要求が伝えられています。

しかし、2014年10月の渡航以前には、3回も渡航をやめるよう直接伝達するほど後藤さんのことを気にかけていた“はずの”日本政府ですが、行方不明になった11月以降の動きがほとんど見られませんね。
3回も渡航をやめるよう直接伝達するほど、後藤さんのシリア行きを懸念していたはずの外務省ですが、後藤さんがシリアに行ってしまった後は行方不明になっているにもかかわらず動いていません。イスラム国側からメールが届く以前の2014年10月末に、後藤さんと連絡が取れなくなった家族は外務省に相談していますが、家族がメールに気づくまでの1ヶ月間、ろくに情報を把握した様子がありません。

イスラム国を名乗る人物からのメールに2014年12月には気づいていたにもかかわらず

安倍首相は2015年1月20日になるまで、イスラム国だと知らなかった、と言っています。

人道支援表明 不適切ではない”

2月4日 12時32分
一方、安倍総理大臣は、先月20日に「イスラム国」のメンバーとみられる男が日本人2人を殺害すると話す映像が確認されたことについて、「残念ながら、われわれは、20日以前の段階では『イスラム国』という特定もできなかった」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150204/k10015205751000.html

おかしな話です。

まとめ

渡航以前の外務省は3回も渡航をやめるよう直接伝達するほど後藤さんのことを気にかけていました。
しかし、後藤さんがシリアで行方不明になった10月末以降、何もつかむことができませんでした。
2014年11月に「イスラム国を名乗る人物」からのメールに家族が気づいたのは2014年12月初めでした。
2014年10月末には家族は外務省に相談していましたから、外務省は2014年12月には、後藤さんが行方不明であること、「イスラム国を名乗る人物」が後藤さんの家族宛にメールを送ってきていることを把握していたはずです。
2015年1月初めには、イスラム国側から20億円の身代金が要求されました。

外務省は、後藤さんが行方不明になり、イスラム国側が20億円の身代金を要求してきていることを知っていたはずですが、安倍首相の中東政策スピーチにゴーサインを出します*2

イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me1/eg/page24_000392.html

そして、2015年1月20日になって、イスラム国側が湯川さん・後藤さんを殺害警告動画を公開しますが、そのときまで、安倍首相は、イスラム国だということを知らなかった、らしいですよ。

一方、安倍総理大臣は、先月20日に「イスラム国」のメンバーとみられる男が日本人2人を殺害すると話す映像が確認されたことについて、「残念ながら、われわれは、20日以前の段階では『イスラム国』という特定もできなかった」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150204/k10015205751000.html

個人的な感想としては、安倍首相が虚言を吐いてるとしか思えないんですけどね。

まあ、可能性としては、外務省は後藤さんが人質になっていることを知ってて安倍首相に対して隠してたということもあるかも知れませんがね。

*1:http://www.asahi.com/articles/ASH1P65P7H1PUTIL03K.html

*2:http://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/prs/page4_000955.html の外務省の抗議を見る限り、外務省は後藤さんが人質になっていることを知ってて安倍演説に積極的にゴーサインを出したと解釈しても良いでしょう。