8年間、死刑執行を停止してきたヨルダンと報復としてのリシャウィ氏死刑

ヨルダン政府がリシャウィ氏に死刑判決を下したのは2005年です。ヨルダンは2006年6月の死刑執行を最後に8年間、死刑の執行を停止してきました。死刑制度があっても10年間執行しない場合は、事実上の死刑廃止国とみなされること*1を考慮すると、ヨルダンは事実上の死刑廃止国に近かったと言えるでしょう。
しかし、2014年12月21日にヨルダンは死刑執行を再開しました。

ヨルダンが死刑執行再開=8年ぶり、殺人犯11人に

 【アンマンAFP=時事】ヨルダンの国営ペトラ通信によると、同国内務省報道官は21日、死刑判決を受けた11人の絞首刑を同日執行したと明らかにした。ヨルダンは2006年6月を最後に死刑執行を停止したが、8年ぶりに再開した。
 報道官によれば、刑が執行されたのは全員ヨルダン人の男で、05年から06年にかけて、それぞれ別の殺人事件で死刑判決を受けた。死刑執行停止後、ヨルダンでは122人が死刑判決を受けている。
 ヨルダンのマジャリ内相は最近、「犯罪増加は死刑執行停止のせいだと人々は考えている」と発言。執行停止を終了する可能性を示唆していた。(2014/12/21-18:03)2014/12/21-18:03

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201412/2014122100120

リシャウィ氏の死刑執行が延期されていたのは、基本的に死刑執行停止という事実上の死刑廃止の政策に伴うものと言えます。また、こういう報道もあります。

イスラム国」人質:ヨルダン態度硬化 ISはスパイ処刑

毎日新聞 2015年02月01日 00時50分
 ヨルダン政府寄りのニュースサイト「アンマンニュース」は30日、「治安当局高官が『リシャウィ死刑囚と他のISメンバーの命は、カサスベ中尉の命にかかっている』と語った」と報じた。中尉が殺害された場合、死刑囚の刑を執行する可能性を示唆した発言だ。

http://mainichi.jp/select/news/20150201k0000m030093000c.html

これらを踏まえて考えれば、リシャウィ死刑囚の死刑執行は、明らかにイスラム国に対する報復であると言え、改めて報復としての死刑には賛同できないといわざるを得ません。

執行猶予していた旨の情報もありますが、上記記載からイスラム国との交渉上執行猶予していたわけではなく、死刑モラトリアムの方針から猶予していたと解釈すべきと思います。
だとすれば、昨今の中東情勢に乗じて死刑復活の動きが活発化し、その流れから報復としての死刑が執行されたわけで、やはり問題と言わざるをえませんね。