世界銀行とIMFでは米国が拒否権持ってるし、ADBでは日米が共同で拒否権持ってるけど、中国がAIIBで拒否権持つのはまかりならんって発想は何なんだろうねぇ・・・

この手の話をすると、理解力の怪しいコメントがたくさんつくのは通貨スワップ協定の時と変わらないなあという感じ。

an56 加盟国を増やす為に一回取り下げた拒否権を中国が握ることについてはどう思ってるんだろhttp://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150522/frn1505221532003-n1.htm
2015/05/24

http://www.wsj.com/articles/with-development-bank-china-challenges-japans-role-in-asia-1427197698

中国単独で29%出資するんなら重要事項に関する拒否権を持つのは当然だとしか思いませんけど。
世界銀行IMFでは米国が拒否権持ってますし、アジア開発銀行でも日本が事実上の拒否権*1を持ってますからね。

The U.S. has a lock hold on major decisions at the World Bank and IMF. Japan lacks formal veto powers over the ADB, but together with the U.S. controls around a quarter of votes, many more than any other member. China’s voting share is about 6%.

http://www.wsj.com/articles/with-development-bank-china-challenges-japans-role-in-asia-1427197698

日本や米国が拒否権持つのは許すが、中国が持つのは許さんとかいう発想は何なんでしょうねぇ・・・。
別にこの手の拒否権を中国が握ったからと言って、やりたい放題できるわけもありませんし。拒否権って拒否する権利であって自案を押し通す権利じゃありませんよ。

あとですね。
この手の銀行って、途上国のインフラ開発の費用を融資するためのものですが、多くの場合その融資が自国の企業に還元されることが期待されているわけです。例えば、途上国にダムを作ろうとかいう案件では単に途上国政府にお金を渡して「後は任せた」なんてことは絶対にしません。もちろん途上国の企業に渡されるわけでもなく、当然“技術のある”先進国の企業に発注されるわけですね。
つまり単純な構図として考えれば、景気の悪い自国企業に政府系資金で仕事を発注する公共事業です。「ADBの絡む案件は利益が少なく機会費用まで考えればボランティア、それで言葉が悪ければ本当に発展を願ってのものだった」とか言ってるコメンタはその辺が理解できていなさそうです。多分、日本人は純粋無垢な天使ちゃん、とでも思ってるのでしょう。

先進国のコンサルタントが途上国の役人らを買収して“インフラ需要”を作り融資のための体裁を整え、先進国の企業に発注する段取りを決めて、融資が決まる。銀行から融資された資金は一部が地元対策と賄賂に消える他は途上国に落ちてくることなく、先進国の企業の懐に入っていく、と。
まあ、それでもうまく回れば、有用なインフラが残るわけですが、無理やり需要を作り出した場合だと無駄なハコモノと化したり環境破壊を招いたりするわけです。

AIIBに対する懸念としては例えばこういうのを考慮すべきでしょう。

欧米から経済制裁を受けるロシアが主要出資国の一つになる見込みで、AIIBがロシアに融資すれば「制裁の抜け穴になる」(国際金融関係者)可能性がある。人権侵害などが指摘される国々への融資を防ぐことができるのか、懸念は拭えていない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150522-00000128-mai-bus_all

こういった懸念はもっともではあります。日本も人権侵害が指摘されていたビルマに対してODAを続けていたことがありますからね。

*1:公式には日本だけでは拒否権を持てないですが、ADBに関しては日本に委ねている米国が日本と同じ判断しかしないことを考慮して一般的には日本が拒否権を持っていると解されていますね。