「<世界遺産>「徴用政策」日本が措置言及 韓国が期待表明(毎日新聞 7月6日(月)0時25分配信 )」
韓国メディアの報道では「強制労働」という文言と「強制徴用」という文言が混在していることが多いのですが、日本メディアの報道では6月前半までくらいは「強制労働」という文言が多かったものの徐々に「徴用」の文言が増えてきた感じがします。
佐藤地(くに)ユネスコ日本代表部大使は決定直後、「日本は、1940年代に幾つかの施設で、その意思に反して連れてこられ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者などがいたこと、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことを理解できる措置を講じる」と発言。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150706-00000000-mai-int
という記載を見ると、日本政府代表者が「徴用政策」をいう文言を使っていることが分かります。
韓国側は「強制労働」と「強制徴用」で大して意味の違いがないと考えているように思えますし、日本側の一般も今のところはそこに注目はあまりしてないと思います。
ただ、日本政府は「徴用」という言葉を国民徴用令という法律に基づく徴用に限定しており、1959年時点で日本に在住している朝鮮人徴用労務者は245人だと外務省が発表しているように(1959年7月11日)、強制連行・強制労働犠牲者の極々一部しか、日本政府用語での「徴用」の被害者として扱われていません。
それを踏まえて、審議での日韓の発言要旨を見てみると、
◇世界遺産委員会の審議での日韓の発言要旨
<日本側>
一、日本は1940年代に多くの朝鮮人や他の人々が自らの意思に反して幾つかの産業革命遺産に連れてこられ、厳しい環境下で労働を強いられたことへの理解を促進させる措置を準備している
一、第二次大戦中、日本政府は徴用政策も敷いていた
一、情報センターの設置など犠牲者の記憶をとどめる目的で、適切な措置を取る用意がある<韓国側>
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150706-00000000-mai-int
一、韓国政府は日本の声明を真摯(しんし)に受けとめ全会一致の決定に加わる
一、決定は世界遺産の精神に沿い、共に協議してきたから可能となった
一、日本が誠実に全ての措置を履行することを期待する
明らかに日本政府は、「募集」「官斡旋」による強制連行被害者については言及する気がない、とわかりますね。「自らの意思に反して幾つかの産業革命遺産に連れてこられ、厳しい環境下で労働を強いられたこと」とは徴用のことであって、「募集」「官斡旋」は「自らの意思」に反していないとみなしている日本政府の解釈からすれば、「募集」「官斡旋」について一切言及しなくても、発言内容に背くことにはなりません。
国内的には、政府圧力でいくらでも騙せますし、実際メディアもこぞって「徴用」表現を使っています。
韓国側は、日本が「自らの意思に反して幾つかの産業革命遺産に連れてこられ、厳しい環境下で労働を強いられた」と表現したことを踏まえて、「強制労働」の表現を削除して譲歩したとみられますが、日本側に上手く騙されたということでしょうね。
日本側が韓国側意見の「強制労働」の表現を削除するように執拗に圧力をかけた理由はこの辺でしょうね。“自由意志”で来た「募集」「官斡旋」については強制労働とはみなさない、「徴用」は日本人も対象だった合法行為、とお決まりの歴史修正主義を適用するというレールは既に敷かれているようなものですし。
さすがに日本外交は巧みだといわざるを得ません。
言葉のダブルミーニングを狡猾に使って、相手側の要求を聞いたかのように見せかけるテクニックはさすがです。韓国政府がこれに気づくにはもう少し時間がかかるでしょうし、国際社会はもっと時間がかかるでしょう。国内はマスコミに圧力をかけて“韓国が悪い”という排外主義を煽らせれば、手も無く騙せます。
やはり日本政府は韓国政府に対して、狡猾さにおいて一枚も二枚も上手でしたね。
以前、「「弱腰日本外交」というマボロシ」という記事を書きましたが、どうも私は、“日本は外圧に弱い”というのが都市伝説なのではないかと考えています*1。