ファイアリー・クロス礁は岩だと判定されたのだが?

久保善昭氏がデタラメを言っています。

ナチスに酷似する中国、宥和では悲劇再現も

JBpress 8月8日(月)6時15分配信
 フイリピンがオランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴していた南シナ海への中国進出、いわゆる「九段線」という南シナ海全域に及ぶ歴史上の管轄権は、正当性がなく国連海洋法条約(UNCLOS)違反と認定された。
 その他においても中国の主張は全面的に認められなかった。
 すなわち、中国の南沙諸島における埋め立て(ミスチーフ礁、ファイアリー・クロス礁など)は低潮高地(満潮時水没)の人工島であり領海や排他的経済水域EEZ)は認められない、フイリピン200海里内の水没しないスカボロー礁は中国のEEZや大陸棚の根拠たる島でなく岩である、というものである。
(略)
久保 善昭

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160808-00047517-jbpressz-cn

中国が実効支配しているファイアリー・クロス礁については、そもそもフィリピンも「岩(high-tide features)」と主張し、仲裁裁判所もそれに同意しています。

(仲裁裁判所判断)
The Tribunal agreed with the Philippines that Scarborough Shoal, Johnson Reef, Cuarteron Reef, and Fiery Cross Reef are high-tide features and that Subi Reef, Hughes Reef, Mischief Reef, and Second Thomas Shoal were submerged at high tide in their natural condition. However, the Tribunal disagreed with the Philippines regarding the status of Gaven Reef (North) and McKennan Reef and concluded that both are high tide features.

http://thediplomat.com/wp-content/uploads/2016/07/thediplomat_2016-07-12_09-15-37.pdf

それ以外にも中国が実効支配する Gaven Reef (North)(南薫礁)、McKennan Reef(西門礁)についてフィリピンの主張を退け、「岩(high-tide features)」という判断を下しています。この他、Johnson Reef(赤瓜礁)もCuarteron Reef(華陽礁)も「岩(high-tide features)」と判断されています。
これは判決文やプレスリリースを読めばわかることですが、久保氏は読んでもいないようです。それで「中国の主張は全面的に認められなかった」とかよく言えたものですねぇ。

その結果、中国が実効支配するScarborough Shoal(黄岩島)、Fiery Cross Reef(永暑礁)、Johnson Reef(赤瓜礁)、Cuarteron Reef(華陽礁)、Gaven Reef (North)(南薫礁)、McKennan Reef(西門礁)については、中国の領有権が確定すれば周辺12海里に中国の領海が発生します。仲裁裁判では各岩礁の領有権については一切判断していませんので、中国側とすれば、これまで通り、各岩礁の実効支配を続け、他の南沙諸島も含めて領有権の主張をするだけです。
その範囲であれば、仲裁裁判の判決に抵触しません。そして今のところ、中国はその態度を取っています。