「愛する家族の命を奪った加害者に対しても死刑反対といえるのでしょうか。」という問い

加害者に対して“死ねばいいのに”とは思うだろうが、制度としての死刑には賛同しない。
というのが「自分の問題として考え」た場合の私の答えですね。

「死刑反対と軽々しく口にしないで」闇サイト殺人で一人娘を奪われた遺族が訴え(産経 2016.12.19 06:19更新 )
「まじめに生きている人を守る司法に」闇サイト殺人事件の遺族、死刑存続訴える(弁護士ドットコム 12/20(火) 9:54配信 )

もし自分の家族が、危険運転致死の被害者、あるいは医療ミスによる被害者になっても、あるいは詐欺やいじめ・パワハラ被害によって自殺に追い込まれたとしても、自分はその加害者に対して“死ねばいいのに”と思うでしょうね。それは遺族として自然な感情ですから。
ですがこれらの場合、制度的に死刑にはなりませんし、世間も死刑に賛同しないでしょう。

自殺に追い込むようないじめと刑法上の殺人で遺族感情に差があるのでしょうか?私が「自分の問題として考え」た場合、そこには差がないんですよね。家族を失う苦しみって、その原因となった行為が故意か過失かで変わるものでもないでしょう。殺人で身内を失った場合と飲酒運転や未熟な手術・治療で身内を失った場合で、遺族感情にどんな差が生じるというのか、それが私には理解できません。死刑が規定されていない犯罪被害者の遺族は、加害者に死んで欲しいと願わないわけでもないはずなのに。
結局“死刑にすべし”となるか否かの境界線って刑法上死刑が規定されているか否かの差でしかないんじゃないかと。

遺族感情が刑法上の刑罰規定に左右されるなら刑法から死刑が無くなったら遺族感情も変わるでしょうし、遺族感情が刑法上の規定と関係ないのなら遺族感情を理由とした死刑の正当化はおかしいということになります。
普通に考えれば、遺族感情は刑法上の規定とは無関係ですから、遺族感情を理由に死刑は正当化できないと考えざるを得ません。さもなくば、遺族感情を理由にすれば死刑の適用範囲が際限なく広がっていくことを許容しなければいけなくなります。

加害者の死を願う遺族感情は当然のことと考えますが、それが死刑制度を正当化するわけでない、と考えるゆえんです。

2016.12.19 06:19更新

「死刑反対と軽々しく口にしないで」闇サイト殺人で一人娘を奪われた遺族が訴え

 犯罪被害者支援弁護士フォーラムのシンポジウムが17日、東京都千代田区で開かれ、平成19年に「闇サイト殺人事件」で一人娘を奪われた磯谷富美子さん(65)が「愛する家族の命を奪った加害者に対しても死刑反対といえるのでしょうか。自分の問題として考えてほしい」と訴えた。
 日本弁護士連合会(日弁連)は10月、「2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきだ」とする宣言を採択。終身刑などの導入を検討するよう求めている。
 磯谷さんは、長女の利恵さん=当時(31)=が男3人に拉致され、ハンマーで頭を数十回殴られるなどして殺害された状況を説明。「あえてむごい内容をお話ししたのは、死刑反対と軽々しく口にしてほしくないからです。終身刑といっても誰が彼らを養うのか」と宣言に疑問を呈した。
 パネルディスカッションでは、日弁連死刑廃止検討委員会事務局長の小川原優之弁護士が「日本は人権を尊重する民主主義社会を選択している。被害者支援をする一方で、生命を奪う刑罰を終身刑に置き換えられないかということだ」と宣言に理解を求めた。
 産経新聞の長戸雅子論説委員も参加。死刑をめぐる国際状況などを説明した。

http://www.sankei.com/affairs/news/161219/afr1612190006-n1.html

「まじめに生きている人を守る司法に」闇サイト殺人事件の遺族、死刑存続訴える

弁護士ドットコム 12/20(火) 9:54配信
犯罪被害者支援や死刑制度について考えるシンポジウム(主催:犯罪被害者支援弁護士フォーラム)が12月17日、東京都内で開かれた。2007年に起きた「闇サイト殺人事件」で、一人娘の利恵さん(当時31)を亡くした磯谷富美子さんが登壇。磯谷さんは「死刑反対と軽々しく口にしてほしくない」「私が(被告)3人の死刑を望むのは当然のこと」と述べ、死刑制度の存続を訴えた。
●「加害者の更生は不確定」
闇サイト殺人事件」は2007年8月、名古屋市内で発生。当時会社員だった利恵さんは、帰宅中に、金目当ての男3人に車で拉致された。男たちは利恵さんから現金約6万円を奪ったうえ、ハンマーで何度も頭を殴るなどして殺害。遺体を岐阜県の山中に埋めて逃走した。
一審では、被告3人のうち、2人に死刑判決、1人に無期懲役が言い渡されたが、控訴審で、1人が無期懲役減刑され、最終的には1人死刑、2人無期懲役が確定した。ところが、無期懲役減刑された被告が、過去に別の強盗殺人事件に関与した疑いで、再び逮捕・起訴された。その結果、一審で死刑、控訴審でも死刑が言い渡され、被告が最高裁へ上告している。
磯谷さんは加害者について、「これまでの裁判を通して、身勝手な欲のために何の関係も落ち度もない人の命を簡単に奪えるほど、善悪に対する根本的な考えが一般の人とは違うということを知りました。被告の1人は殺害行為は仕事感覚といいました。ゴキブリを殺すのと一緒だと」と述べ、「加害者の更生という未来の不確定なことを前提にして裁くのではなく、まじめに生きている人を守ることを優先して裁く司法であってほしい」と語った。
さらに、死刑反対派に向けて、「あなたの娘や息子の命、それに愛する家族の命を奪った加害者に対しても死刑反対と言えるのでしょうか。本当に親として家族の一員として反対に満足なのでしょうか。ひとごととしてではなく、今一度お考えください」と呼びかけていた。
弁護士ドットコムニュース編集部

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