日韓政府間合意検証に関する雑感0

とりあえず報道内容(「慰安婦合意検証報告書の要旨」)で見た限りの感想。

裏合意があること自体は以前から指摘されていたので、それほど意外感はないが、思ってた以上に韓国朴政権側も慎重な対応をとっているなというのが第一印象。
もちろん被害者そっちのけで合意を進めたことは批判されるべきではありますが、ソウルの少女像撤去を裏合意で確約したわけでも無さそうで、この点で朴政権を批判するのにはあまり同意できないですね。

・日本政府が韓国政府に海外での慰安婦追悼碑設置を支援しないことを要求し、韓国政府がそれに応じたこと。
・日本政府がソウルの少女像移転を要求し、韓国政府は「適切に解決するよう努力する」と応じたこと。
・日本政府が韓国政府に「性奴隷」表現を使わないよう要求し、韓国政府が公称は「日本軍慰安婦被害者問題」だけと応じたこと。

元々朴政権は慰安婦問題に冷淡で、この問題で日本と対立したいとは思ってなかったでしょうが、2011年の憲法裁判決*1により発生した義務として日本と交渉したに過ぎません。
それでも日韓交渉の中で「韓国側は被害者訪問などを求めたが、合意に盛り込めなかった」「韓国側は日本の首相の公式謝罪について、不可逆性を担保するため、閣議決定を経た首相の謝罪表明を求めた」などの対応を取っています。
もちろん、それを最後まで貫けなかったところが朴政権の限界と言えますが。

日本側は日本軍が関与した戦時性暴力被害者に対して政府として訪問するつもりも、公式謝罪を閣議決定にて表明する気も全くないという態度で、「慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ち」が見せかけのものにすぎないことがわかります。
謝罪の出し惜しみで安倍政権が朴政権を押し切った感じで、日本側には戦時性暴力被害者への配慮が全く欠けていたことと言えます。まあわかっていたことですが。

朴政権は粘り強く交渉したとは言えないものの、韓国で巷間言われているほど背信的だったともいいにくいというのが、個人的な当面の評価です。

合意検証を進めた文政権として今後どうするつもりかは判断しにくいですが、裏合意については履行の義務がないという事実上の破棄という対応になりそうだと見ています。公開されている合意については、日本側の挑発・反発が激化しなければ特に破棄とかしないでしょう。ただ、日本側が裏合意も含めて履行せよという態度*2を強硬に示し続けた場合は、公開部分も含めて破棄する可能性はあるかも知れません。
形式としては日本側に再協議を求めるというのが可能性が高く、同時に日本側は再協議に応じないというのも、現状の日本の人権感覚からすれば確実な情勢です。日本国内では、“再協議を求める韓国は世界から相手にされるはずがない”という認識が一般的で、“国同士の合意を尊重しろ”とも言ってるわけですが、裏合意の存在が明らかになった現状で、裏合意の再協議を求められた場合、日本側がそれに応じなければ、第三国からは日本側の異常性の方が目につくでしょうね。


28日時点では「両首脳の追認を経た政府間の公式的な約束という重みはあるが、大統領として、この合意では慰安婦問題は解決されないと再び明らかにする」*3というのが、文政権の認識のようで、「合意を維持するかどうかは言及していない」*4ようです。