詳細がわからなさ過ぎるのだけど、白須賀議員が発言を盛ってるような気がしてならない件

この件。

自民・白須賀氏 「雇ったら実は妊娠、産休 違うだろ」 厚労部会で発言

毎日新聞2018年3月30日 東京朝刊
 自民党白須賀貴樹衆院議員(千葉13区)は29日、働き方改革関連法案を議論する党の厚生労働部会などの合同会議で、自身が運営する保育園で病児保育のため採用した看護師について「雇って1カ月後には実は妊娠して産休に入ると(言ってきた)。人手不足で募集したのに、それは違うだろと言った瞬間に労基(労働基準監督署)に駆け込んだ」と発言した。
 妊娠や出産を理由とする職場での嫌がらせ「マタニティーハラスメント」と、批判されかねない発言だ。白須賀氏は会議後の報道陣の取材に「(詳細を)答える気はない。そういう事例がある、ということだけ」と話した。
 会議では、法案の柱の一つである時間外労働の上限規制について、中小企業は当分の間、人材確保の状況などを踏まえて指導するよう求める声が上がった。白須賀氏は会議で、労基署が保育園側に非があると指摘しているとし、「中小企業の実情と労基の指導の仕方がずれている。事情を踏まえるよう、労基に徹底的に指導してもらいたい」とも語った。【神足俊輔】

https://mainichi.jp/articles/20180330/ddm/041/010/112000c

白須賀貴樹衆院議員の発言内容がそもそもよくわかりません。
「雇って1カ月後には実は妊娠して産休に入ると(言ってきた)。人手不足で募集したのに、それは違うだろと言った瞬間に労基(労働基準監督署)に駆け込んだ」とのことですが、採用した時点で妊娠していたのかそうでないのかも不明です。

労働基準法では、出産予定日6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から本人の請求があれば使用者は産休を認めなければならないことになっています。

(産前産後)
第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
○3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049&openerCode=1

採用した時点で妊娠していたとすると、採用1ヶ月後に産休に入る状態なら妊娠5~7ヶ月くらいの状態ですから外見的にも妊娠していることがわかりそうな気がします。それなら産休に入ることを前提として判断*1していなければおかしい気がします。
採用後に妊娠したことに本人が気づいて、予定日6週間前からの産休を申し出たというなら、申し出たのは1ヵ月後でも産休に入るのは半年後*2くらいですよね。その場合なら、使用者にとっては産休中の穴埋めが必要になって大変になるのはわかります。ですが、それは本人に文句を言うような話ではありませんよね。

女性の側に問題があるとすれば、採用時点では妊娠の事実を知りながら伝えず、外見的にわかるような時期でもなく、採用後に事実を伝えた場合ですかね。これも採用時にどういう契約になっているかによると思いますが、採用後1年は働いてほしいという内容の契約であった場合は女性の側に非があるでしょうかね(使用者の要望に応えられないことを知っていて伝えなかったことになりますので)。

で、そういった女性側に非があると考えられる特別な事情でもない限り、「人手不足で募集したのに、それは違うだろ」と言えば労基署に駆け込まれても仕方がないでしょう。女性側にすれば他に頼るところがないんですから。

まあ、この件ではソースが白須賀議員の話だけですので、状況については話を盛ってるんじゃないかな、と思え、実際に女性側に非がある状況だったとは考えにくい気がしますが。

で、こういう場合、使用者側はどうすべきだったかと言えば、採用時に妊娠していないか出産の予定がないか確認し、ある場合は使用者側の人員計画上調整できるか検討した上で採否を判断すべきということになるでしょうし*3、採用後に妊娠がわかった場合は人員調整の必要があるので速やかに使用者側に報告するよう求めるくらいでしょうね。

あと、中小企業だとこういう産休は困るみたいな意見もいくつか見かけました。
例えば、こんな感じ。

雇用して1ヶ月で妊娠を告げられ、数ヶ月には産休、その後育休(ただし、取得要件を満たす場合ですが)、そして復帰することなく退職したら?

http://blogos.com/article/287197/

しかし、そもそも産休中は会社は給与を支払う必要も社会保険料を負担する必要もありません*4。コスト面での負担がありませんので、上記の場合は、産休に入った時点で退職されたのと何ら変わらないはずですね。

むろん、急にいなくなって替わりをどうするかという人員調整の問題は生じますが、それって産休でなく退職であっても同じですよね?
しかも退職の場合は最短2週間前の申し出が起りえるのに対し、産休の申し出はそれより早いのが一般的でしょう(周囲も普通は気づくでしょうし)。退職されるよりも産休の方が会社側に人員調整に関して時間的余裕があるわけです。
これらを踏まえると、「雇用して1ヶ月で妊娠を告げられ、数ヶ月には産休、その後育休(ただし、取得要件を満たす場合ですが)、そして復帰することなく退職した」として、雇用して1か月で退職されるよりもマシですし、退職が労働者の権利として確立しているにもかかわらず、産休に対しては当然とは考えられないのは、そちらの方がおかしいと思いますね。



*1:産休時期に臨時雇いの募集を検討するなど

*2:1ヵ月後時点で妊娠3ヶ月と想定すると妊娠8ヶ月ごろには採用から半年経っているという計算

*3:繁忙期に産休になることがわかっているなら採用しないというのは事業継続上はやむをえないでしょうし。

*4:http://sharescafe.net/49648940-20160928.html