離婚後単独親権者が死亡した場合、子どもの監護を誰に委ねるのか定めた法律の日韓の違い

この件に関連して。
「面会交流」立法不作為訴訟 原告の請求棄却 東京地裁(毎日新聞2019年11月22日 19時42分(最終更新 11月22日 19時42分))

基本的事項

日本は離婚後単独親権制度を採っており、父母が離婚したら子どもの親権者はどちらか一方に定めなければなりません。
韓国は離婚後共同親権を認めていますが、実際に離婚後共同親権となるケースは少なく、多くは一方のみが親権者となっています。

日本の場合

離婚後単独親権者となった者が死亡したとき、離婚で親権を喪失したもう一方の親が生存していたとしても、自動的にその生存している方の親が親権者になるわけではありません。
法律上は、親権者が存在しなくなったものと扱われ、民法第838条に基づき、未成年者後見人による後見が開始されます。
未成年者後見人の指定は親権者のみができる(民839)ので、親権を失った方の親には関与できません。単独親権者が未成年者後見人を定めないまま死亡した場合は、家庭裁判所が選任します(民840)。
生存しているもう一方の親が親権者となりたい場合は、親権者の変更を申し立てる必要があります。しかし(未成年後見人と競合した場合は特に)家裁がどういう判断を下すかによるため、離婚後に子どもとの交流を妨害されていたような場合ではかなり難しいと思われます。

韓国の場合

韓国の場合、かつては離婚後単独親権者となった者が死亡すると、当然に生存するもう一方の親が親権者になると解釈されていました。離婚による親権喪失は「親権そのものを失うわけではなく、その行使が停止されていたからという解釈に基づく」*1ものとされています。
しかし、その場合、生存するもう一方の親が親権者として適格かが確認できないという批判があり、2011年の民法改正により、第909条の2が新設されました。韓国民法909条の2は、単独親権者が死亡した場合、他方の親がその事実を知ってから1ヵ月以内、死亡の日から6ヶ月以内に、他方の親を親権者とすることを家庭法院に請求できるという規定です。
その請求に受けて家庭法院は親権者として適格かをチェックするわけです。請求期限を過ぎて未成年後見人が選任された後であっても、他方の親は親権者指定を請求することができますが、その際には未成年者の福利のために必要であればという条件がつくようです。
(参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000487640.pdf

日韓の違い

日本の場合、離婚で親権を喪失した方は子どもの関わりから排除されて当たり前のような運用となっており、単独親権者の善意によってのみ子どもの関わりを維持できるにすぎない印象が強いですね。単独親権者の善意が期待できない場合は、非親権親は子どもとの関わりから排除されてしまい、単独親権者が死亡したとしてもその事実を知る保障もありません。実際問題として、単独親権者が再婚して再婚相手を養親とする養子縁組をする場合でも、実親である非親権親の同意は不要でそれどころか知らせる必要もないくらいです。
ちなみに、単独親権者の再婚相手が子どもを養子とした場合、離婚で親権を失った実親が親権者変更をすることは非常に困難とされます*2
面会交流が親の権利として認められていない日本では、いかに子煩悩な親であったとして親権喪失後も実子とかかわり続けられる保障がなく、それは単独親権者が死亡してもそれを知る保障がないことにつながります。死亡の事実を知らなければ、実子が未成年後見人の手に委ねられようが再婚相手の養親が単独親権者となっていようがどうすることも出来ません。

韓国の場合、現在は請求を必要とするものの、生存しているもう一方の親には親権者としての適格性のチェックのみで親権者となることができるようになっています。未成年後見人を選任するにあたっては、生存しているもう一方の親に意見陳述の機会を与えなければならないとも規定されており、所在不明とかでない限り、生存しているもう一方の親は単独親権者の死亡の事実を知ることが保障されています。
また、韓国では面会交流を親の権利であり、子の権利であると民法で明確に規定しており、非親権親であっても単独親権者により容易に排除されることはありません。


日本は離婚後共同親権を認めず、面会交流の権利性も認めず、非親権親は単独親権者に排除されたが最後、単独親権者が死亡した後も排除されっぱなしを容認する法体系になっており、それでありながら、養育費支払いの義務だけは課され続けるという人道的とは到底いえない極めて歪な構造になっているといえますね。