2013年5月13日から始まった橋下市長による慰安婦発言に対して5つの全国紙は5月14日時点の社説では沈黙していたものの、さすがに火の手が著しく拡大したためか5月15日に至って読売以外は社説で取り上げています。
朝日
まず朝日新聞ですが、橋下発言に対して批判は当然として、慰安婦問題の問題点についてもまあ、ある程度は指摘していますが何となく腫れ物に触るような感触が否めません。
(2013/5/15閲覧)
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
だが、いま日本が慰安婦問題で批判されているのは、そこが原因なのではない。
慰安所の設置や管理に軍の関与を認め、「おわびと反省」を表明した河野談話を何とか見直したいという国会議員の言動がいつまでも続くからだ。
戦場での「性」には、きれいごとで割り切れない部分があるのも確かだ。だからこそ当時の状況は詳しくわからないし、文書の証拠も残されていない。
それでも、多くの女性が自由を奪われ、尊厳を踏みにじられたことは、元慰安婦たちの数々の証言から否定しようがない。
「河野談話を何とか見直したいという国会議員の言動がいつまでも続くから」という指摘ももっともですが、自民党、それも安倍政権の閣僚に多いことに触れないのは何とも腰の引けた対応です。社説中で名指しで批判されているのは維新の会のみで、こういった暴言の素地を作ってきた自民党については一切触れていません。
産経
産経新聞はいつも通り、「根拠もないまま強制連行を認める河野洋平官房長官談話が発表」、「公権力による強制があったとの偽り」、「旧日本軍や官憲が慰安婦を強制連行したことを裏付ける資料は一点もなかった」、「韓国人元慰安婦からの聞き取り調査だけで、強制連行があったと決めつけた」、「裏付けなく発表された談話が、韓国などの反日宣伝を許す要因となっている」など、出鱈目のオンパレードで、この認識を前提とするなら、産経新聞や安倍自民党の代弁に過ぎない橋下発言を問題視すること自体おかしいとさえ思えます。
橋下氏が米軍幹部に述べた「風俗業活用」発言など、もってのほかだ。人権を含む普遍的価値を拡大する「価値観外交」を進める日本で、およそ有力政治家が口にする言葉ではなかろう。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130515/stt13051503370002-n2.htm
どうも産経新聞が問題としているのは、「米軍幹部に述べた「風俗業活用」発言」で世論を騙し騙し歴史修正を進めたいのに、慰安婦問題の非人道性を暴露するような発言をされては迷惑だ、ということのようです。下村博文文部科学相の「あえて発言する意味があるのか」との指摘など最たるもので、わざわざ発言する必要はない、要するに隠しておけ、ということに他なりません。
産経の主張を一言で言えば、「橋下!余計なこと言うな、ばれるだろ!」ということでしょう。
読売
読売は社説で慰安婦問題を取り扱っていません。
ただ、5月14日に「従軍慰安婦問題、河野談話で曲解広まる」と題した記事を配信しており、その中で産経新聞同様の「従軍慰安婦問題は1992年1月に朝日新聞が「日本軍が慰安所の設置や、従軍慰安婦の募集を監督、統制していた」と報じたことが発端となり、日韓間の外交問題に発展した」「河野談話によりかえって「日本政府が旧日本軍による慰安婦の強制連行を認めた」という曲解が広まった」といったデマを発信していますので、スタンスは産経新聞と同じと考えていいでしょう。
日経
日経はコラムで取り上げていますが、「旧日本軍の従軍慰安婦をここまで容認する発言を黙過するほど世界は甘くなかろう」程度の橋下批判に過ぎず、「米国などの視線も厳しいこの問題はとにかく慎重に扱うにかぎるのだ」と公言の仕方の問題であるかのような書き方です。