「悪いのは人でなくウイルス」は100%正しい

中共に対する私怨だけで陰謀論に飛びつく遠藤誉氏がこんなことを書いていましたので。
志村さん訃報で広がる中国非難の中、厚労省の「悪いのは人でなくウイルス」は正しいのか(遠藤誉 | 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士 3/31(火) 20:22)

犠牲者を利用して反中感情を煽りたいだけの駄文ですね。まあこの人は、これまでもCOVID-19に関して同様の中国陰謀論をいくつも垂れ流していますが。

 アメリカが受けているダメージに対して、アメリカでは「中国政府の対応の遅れが感染を広げ、損害を被った」として、中国政府を相手取り、集団訴訟を起こす動きが出ている。カナダ発の「テドロス辞めろ」署名活動の輪も徐々に広がっている。
 これでも日本は「人が悪いわけでなくウイルスが悪い」として、中国を擁護し続けるのか。

https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20200331-00170794/

疫病に対する恐怖や混乱が排外感情を世界的に高めているがゆえに、バカみたいな訴訟や逆恨みのような署名活動が活発化しているに過ぎず、まさに集団ヒステリーそのものなのに、それに乗っかれと煽動するような言説は有害無益としか言いようがありませんね。

 コロナ災禍が過ぎ去った後、世界は習近平を犯罪者として追及するかもしれない。
 その勇気がなかった時、中国はアメリカを超えて、コロナ後の新しい世界秩序を形成していく危険性を孕んでいる。言論を弾圧する一党支配体制が世界に君臨する。そのような未来像は見たくないが、目の前に迫っているのだ。それでいいのか。
 日本人の本当の良心と見識はどこにあるのかを問いたい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20200331-00170794/

「世界は習近平を犯罪者として追及するかもしれない」というのは遠藤氏の願望に過ぎず、現実味はほぼゼロですね。その幻想が現実化しなければ、「その勇気がなかった」と否定的なレッテルを貼る、「言論を弾圧する一党支配体制が世界に君臨する」「目の前に迫っている」などとおよそ実現性の薄い恐怖を過剰に書きたてる陰謀論者が好むやり方ですね。

「日本人の本当の良心と見識はどこにあるのかを問いたい」とか遠藤氏は言ってますが、もし「本当の良心と見識」が日本人にあるのなら、遠藤氏の吹聴する陰謀論を一笑に付すでしょうね。

長春包囲戦の犠牲者であるからといって、どんなデタラメを言っても許されるというわけでは無いと思いますがね。



台湾が防疫に成功しているのに中国当局の隠蔽のせいで「新型肺炎の世界的なまん延を引き起こした」とか言っても説得力ないと思う

この件。
米法律事務所、コロナで中国への巨額損害賠償裁判提起の根拠(4/1(水) 7:00配信NEWS ポストセブン)

主権免除とかを置くとしても、下記のような主張はさすがに無理があるでしょう。

 彼らの代理人として事務所が提出した訴状は20ページに及んでいる。それによると、原告側は「中国政府、中国衛生当局、湖北省政府、武漢市政府は新型コロナウイルスの危険性と大流行になる恐れがあると知りながら、直ちに対策を講じなかった」と前置きしたうえで、「経済的利益のために、感染情報を隠ぺいし、多くの人々に身体的・心理的な傷を負わせ、多大な損失をもたらした」と指摘している。
 法律事務所の共同設立者であるラッセル・バーマン氏は米メディアに対して、「中国当局新型肺炎の世界的なまん延を引き起こした」と中国の対応を激しく批判している。原告団には新型コロナウイルスの感染者は含まれていないが、バーマン氏らによると「ウイルスの感染者が今後、原告団に加わる」ことを明らかにしている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200401-00000005-pseven-cn

少なくとも2019年12月31日には中国当局はWHOに原因不明肺炎について報告していて、台湾はそれを受けて検疫を強化し、今に至るも感染者数は300人程度に抑えていて、新規感染者も多くは海外からの渡航者で台湾内での感染は相当程度抑えています。まず、防疫に成功していると言っていい状況です。

台湾の新型コロナウイルス感染者、16人増えて累計322人に(発信日: 2020/04/01)


韓国も2020年1月3日には保健福祉部が武漢で原因不明の肺炎が集団発生していることを公表し検疫を強化しています。
알림 > 보도자료 내용보기 " 중국 후베이성 우한시 폐렴환자 집단발생 " | 힘이 되는 평생 친구, 보건복지부

新興宗教団体などで巨大なクラスターが発生するなど一時は感染者数が急拡大しましたが、現在は新規感染者が100人程度となり、日本より少ない状況になっています。
韓国の新型コロナ感染者 101人増え9887人に=首都圏で増加
予断を許さないものの、韓国も防疫に成功していると言えるでしょう。


つまり、2019年12月31日のWHOへの報告の直後に検疫を強化するなどの適切な対応を取っていれば、有効な防疫態勢をとることができたはずで、それが出来なかったのであれば、それはその国の防疫体制の問題というべきでしょうよ。
技術・リソース的に有効な対策の取れない発展途上国が言うならいざ知らず、最高の技術力とリソースを有するアメリカでそんな訴訟を起こすのはどうなのかと。



取引になっていない件

この件。
「北と協議再開を希望…制裁はそのまま」=米国務長官(3/31(火) 14:50配信WoW!Korea)

相手に何一つ渡さず、相手から最も大事なものを得ようという取引なんか成立するわけがないんですよね。
水面下でも何の対価も提示していないのであれば、絶対に失敗するでしょうね。

あと、こんなことも言ってます。

また「トランプ大統領は、我々がその地点(北朝鮮の非核化)に到達するまで、充分な進展を成す時まで、制裁が続かなければならないとこう点もはっきり語っている」とし「(対北制裁は)米国の制裁ではなく国連安保理決議によるものである」と語った。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200331-00254946-wow-kr

「米国の制裁ではなく国連安保理決議によるもの」というのは、米国だけでは制裁解除できないということを示したいのか、制裁は自分のせいではないと言いたいのか、あるいは国連決議だから正当なものだと主張したいのか。

まあ、そもそも38度線の南で北朝鮮に武器を向けているのは、他ならぬ国連軍なわけで。
北朝鮮が国連決議に権威を感じてひれ伏さねばならないような関係ではないんですよね。



医療負荷のピークを下げるのは感染速度の抑制であって検査モラトリアムではないよ

f:id:scopedog:20200228021153p:plain

なんかこの絵を示して、検査すべきでないと主張する論調をちょいちょい見かけるんですが。

検査するかどうかは、言ってみれば感染状況の観測でしかなく、基本的に検査そのものが医療崩壊を招くわけではありません。検査しなければ見かけ上の感染者数の増加は抑えられますが、それは感染者がいなくなったわけでも隔離されたわけでもないので、観察されないところで感染者数が増えるだけです。

“検査して大勢が病院に押しかけたらどうする”といって検査しない感染者数を増やし続ければ、検査されずにCOVID-19かどうかわからない患者が溢れて医療崩壊するだけです。病院の外でいくら人が死のうがCOVID-19で苦しもうが、病院の負担さえ抑えればそれでいいというならともかく、そんなことありませんからね。

ピークを抑えるためには、感染が拡大しないように、発見した感染者を隔離する、未発見の感染者が感染を拡大する機会を減らすために社会活動を制限する、といった手段しかありません(ワクチンがあればワクチンを投与するという方法もある)。検査を減らしても、意味はなく、むしろ悪影響しかないでしょうね。

とは言え、日本の検査能力は絶望的に低いため、それ故に検査件数が増やせないので仕方ないとは思いますが。
その場合、感染状況を正確に把握するのは不可能ですから、状況がよくわからない中で市民の移動制限をする以外に無いんですけどね。まあ、移動制限の効果すらろくに把握できませんから、効果も何も見えない中で市民生活の制限に社会がどこまで耐えられるのかという懸念もありますし、どうにも良い兆しがありませんねぇ。

ちなみに以下の記事はすごく良かったです。
note.com

離婚後共同親権であったら事件は回避されたのだろうか

この件。
2児殺害のタイ人母、信じ続けた家族の「良好」崩れ犯行か 東京・吉祥寺(3/24(火) 12:54配信 産経新聞)

親権をめぐるトラブルの末の犯行だったということで、日本が離婚後共同親権を認めていれば避けられたのではないか、という主張が見られますが、この事件についてはそう単純には言えないと思います。
結論から言うと、離婚後共同親権という制度だけではなく、離婚後の親子関係を当事者任せにせず国と社会が積極的に保護し、当事者もその制度と社会を信じられるレベルに達していなければ避けられなかった事件だと考えます。

実は離婚後共同親権を認めているオーストラリアでも今回の事件と似たような事件がありました。
Gabriela Garcia・Oliver Garcia 母子の無理心中事件です。

Government to be sued over West Gate suicide barriers (By Chris Vedelago December 20, 2014 — 5.36pm)
Deadly bridge leap to 'save son from a bad life' (Milanda Rout AUGUST 17, 2009 1:23AM)

生後22か月の息子の親権を失うことを恐れた母親Gabriela Garciaが2008年6月、メルボルンのウエストゲートブリッジから母子ともに飛び降りて無理心中した事件です。吉祥寺の事件とは心中である点が異なりますが、子どもの親権を失うことを恐れたための犯行である点では同じです。
ちなみに、この Oliver Garcia事件の半年後、同じウエストゲートブリッジで Darcey Freeman事件が起こります。Darcey Freeman事件は別居親である父親が5歳の娘を端から転落死させた事件ですが、日本では共同親権反対派の千田有紀氏らが利用*1したことでよく知られています。それに対して、監護親であった母親が息子を無理心中という形で殺害したOliver Garcia事件は知られていません*2
Oliver Garcia事件もDarcey Freeman事件も事件経緯を見ると殺害を実行した親は精神的に病んでいた様子がうかがわれます*3

子どもを失うということは親にとっては心を病むのに十分な恐怖だということであって、今回の吉祥寺事件もそれをうかがわせます。

 埼玉の支店で働く夫とは5年ほど前から別居状態に陥り、家族4人で顔を合わせて食事するのは月に1回程度。夫が吉祥寺の自宅に帰るのは年に1、2回ほどだったという。それでもフルカワ容疑者は、家族関係は「良好だ」と信じて疑わなかったという。
 ●「子供取られるくらいなら…」
 だが、その様子を見かねた義母からは、昨年くらいから「別れてタイに帰りなさい」と言われ始めていたとされる。それでも、家族にこだわっていたフルカワ容疑者だったが、今月21日に決定的なひと言を義母から投げかけられた。
 「ぐずぐずしないでさっさと帰りなさい」
 八方ふさがりになったフルカワ容疑者は、わが子にもすがったが、2人の希望も「日本に残りたい」だったという。「訴訟しても勝てない」。そう思いつめて週明けの月曜日に凶行に及んだという。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200324-00000528-san-soci

このような経緯を見ると仮に日本が離婚後共同親権を認めていたとしても、外国人親が離婚後も日本に滞在し自由に子どもと会える環境が整備されていない限り、子どもと会えなくなることを恐れた親によって同様の事件が起きたでしょうね。オーストラリアのOliver Garcia事件と同様に。

いずれにせよ、日本が離婚後単独親権に固執し続けるのであれば、離婚によって子どもを失うことを恐れた同居親や別居親によって同様の事件は起こるでしょうね。



*1:https://news.yahoo.co.jp/byline/sendayuki/20161212-00065383/

*2:オーストラリアでも、Darcey Freeman事件は政治利用されたが、Oliver Garcia事件は無視されたという声があります。

*3:以前も少し言及しています

産経新聞による教科書検閲

この件。
「従軍慰安婦」「南京事件」自虐記述は適切か 皇室表現に疑問も(3/24(火) 14:48配信 産経新聞)

毎年毎年、産経新聞は自らの歴史観に沿わない教科書記述に対して「自虐」とレッテルを貼って、国内ネトウヨらを煽動するプロパガンダ行為に余念がありませんねぇ。

「新学習指導要領で自国の歴史や文化への愛情を深めることが求められる中、自虐色が強く、天皇への敬意に欠けた記述は適切なのか」等という愛国教育を求める主張は、戦前日本か現代中国か、少なくとも民主主義国家にはそぐわない意見ですね。

 「銃剣を持った日本兵が家に侵入してきました。逃げようとした父は撃たれ、母と乳飲み児だった妹も殺されました。祖父と祖母はピストルで、15歳と13歳だった姉は暴行されて殺されました。私と4歳の妹は、こわくて泣き叫びました。銃剣で3カ所刺されて、私は気を失いました…」。合格した学び舎の歴史教科書に掲載された南京事件をめぐるコラムの描写だ。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200324-00000545-san-soci

これ、日本の裁判所も事実と認めた夏淑琴事件のことですよね?教科書に書いて何が問題なのやら。

参考:東中野裁判(夏淑琴氏の名誉毀損行為に対する損害賠償)東京地方裁判所民事第10部 2007年11月2日判決 平成18年(ワ)第9972号 損害賠償等反訴請求事件(東京高裁判決 2008年5月21日、最高裁判決 2009年2月5日*1

「日本の皇室は、神話の時代から現代まで続く」?

自由社の「日本の皇室は、神話の時代から現代まで続く」との記述には「神話を史実と誤解する」として、「仁徳天皇は世界一の古墳に祀られている」との記述には「表現が一般的ではない」などとして検定意見がつき、認められなかった。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200324-00000545-san-soci

むしろ安倍政権下でちゃんと検定意見がついたことに驚きですが、それはそれとして、「日本の皇室は、神話の時代から現代まで続く」とか歴史学として明らかにウソでしょうが。
仁徳天皇は世界一の古墳に祀られている」とかも何がどう世界一なのか考えれば「表現が一般的ではない」という意見も当然で、その程度の意見はむしろ優しいくらいですね。

近現代史に詳しい憲政史家の倉山満氏」?

トンデモ歴史本を量産している倉山氏を「近現代史に詳しい」とかギャグとしか言いようがありませんねぇ。

南京事件関連の記述

産経記事によればこう書かれているそうです。

教育出版 占領した首都の南京では、捕虜や住民を巻き込んで多数の死傷者を出しました
育鵬社 日本軍によって、中国の軍民に多数の死傷者が出た(南京事件)。この事件の犠牲者数などの実態については、さまざまな見解があり、今日でも論争が続いている
東京出版 首都の南京を占領し、その過程で、女性や子どもなど一般の人々や捕虜をふくむ多数の中国人を殺害しました(南京事件
帝国書院 南京では、兵士だけでなく多くの民間人が殺害されました(南京事件
山川出版 日本軍は女性や子どもなどの一般の人々や捕虜をふくむ多数の中国人を殺害した(南京事件
日本文教出版 占領した首都南京では、捕虜のほか、女性や子どもを含む多数の住民を殺害しました(南京事件
学び舎 国際法に反して大量の捕虜を殺害し、老人・女性・子どもをふくむ多数の市民を暴行・殺害しました(南京事件

南京事件否定論という歴史修正主義の難癖を論争だと述べる育鵬社や、まるで捕虜や住民の被害者が巻き込まれただけで意図的な殺害ではないかのような教育出版の記載は論外ですが、それ以外はまあ最低限レベルの言及はしていますね。学び舎の記載がまあ一番妥当かとは思いますが。

ちなみに日本政府がイヤイヤながらも認めている内容はこれ。

問6 「南京事件」に対して、日本政府はどのように考えていますか。

1 日本政府としては、日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。しかしながら、被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難であると考えています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/qa/

これも昔に比べると表現が結構後退しているんですけどね。



PCR検査をむやみにやるべきでない理由は単に現状の日本の検査能力が貧弱だからに過ぎないのでは?

この件。
なぜワイドショーは解説しないのか? 「PCR検査をどんどん増やせ」という主張が軽率すぎる理由(3/21(土) 9:24配信 文春オンライン)

色々とおかしいですね。

まあ、「PCR検査をどんどん増やせ」という主張に慎重になるべきなのは、現状の検査能力が貧弱で処理件数が限定されているため重症者の判定を優先すべきというだけの話に過ぎません。「PCR検査をどんどん増やせ」という主張は要するに、検査できる能力を増やせという主張であって、それに反対する理由など基本的には存在しません*1

“現場の医師もそう言っている”と鳥集氏は主張していますが、その現場の医師たちに、もしCOVID-19のPCR検査の処理能力が一日10万件以上あるとしても検査すべきでないと考えるのか聞いてみるべきですね。

また、鳥集氏は「私はメディアが「軽症でも早期から希望者全員がPCR検査を受けられるように拡充すべき」と煽るのは間違いだと指摘しました」と言っていますが、その後の部分で出てくるシミュレーションは、なぜか1000万人の都民全員を検査する想定になっています。

東京都民1000万人全員に何らかの症状がある場合を想定しているのかと思いきや、さにあらず。

「軽症な人は病院ではなく家から出ないようにしてもらえばいい」という意見もありますが、1000万人にPCR検査をすると何の症状もなく元気なのに2週間も家に閉じこもらねばならない人が、10万人近くも出てきてしまうかもしれないのです。人権上、このようなことが果たして許されるでしょうか。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200321-00036731-bunshun-soci&p=1

「何の症状もなく元気な」偽陽性患者を軟禁するのか!と主張し始めます。最初に鳥集氏が反対してみせた「軽症でも早期から希望者全員がPCR検査を受けられるように拡充すべき」という意見であれば、COVID-19について偽陽性であっても類似する症状を示す患者であることに変わりはないのですから、自宅安静を求めることに何の問題もないでしょう。

また、偽陰性についてもおかしなことを言っています。

 それだけではありません。実際には感染しているのに、陰性となる「偽陰性」の人が3000人も出ることになります。もしこれだけの人が「陰性だから安心」と誤解して普通に生活することになったら、感染の連鎖が止まらなくなってしまうでしょう。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200321-00036731-bunshun-soci&p=1

偽陰性ということは実際にはCOVID-19患者であるのに検査上は陰性と出ているということです。もし、東京都民1000万人全員に何らかの症状がある場合を想定しているのであれば、COVID-19の偽陰性であっても何らかの症状が出ているわけですから普通には生活しないと考えるべきで、むしろ何らかの症状があり免疫が落ちている時に外出してCOVID-19に感染することの方を懸念するんじゃないですかね。
逆に、症状の有無に関係なく東京都民1000万人全員を検査する想定であるなら、COVID-19に感染していながら特段の症状の出ていない患者は検査するか否かに関わりなく普通に生活しますから、偽陰性患者が普通に生活することを恐れて検査しないという選択肢は意味がありません。

というより、1000万人中COVID-19患者が1万人いるという鳥集氏のシミュレーションを踏まえるなら、検査することで3000人の偽陰性患者が陰性だと勘違いして普通に生活を続けるかもしれませんが、検査しなければ1万人の患者全員が普通に生活を続けるわけで、「感染の連鎖」を生み出すリスクは検査しない場合の方が高くなりますよね。

PCR検査は有病率が低い大きな集団に行っても無意味」と主張する人たちが見落としている点

感度・特異度は検査に固有の数値です。陽性的中率と陰性的中率は、感度・特異度と検査対象集団の有病率から導出できる関数です。

感度70%、特異度99%の検査を有病率0.1%の集団に対して実施すれば、陽性的中率は6.5%、陰性的中率は99.97%ですが、有病率1%の集団ならば陽性的中率は41.4%、陰性的中率は99.7%、有病率10%の集団ならば陽性的中率は88.6%、陰性的中率は96.7%となります。
検査対象の拡大に反対する人たちの根拠の一つがこの有病率が低い集団を対象とした場合の陽性的中率の低下(つまり偽陽性の増加)にあるわけです。
しかしながら、この主張には見落としがあります。
PCR検査をする場合、検温や問診もまず間違いなくやります。つまり、仮に都民1000万人全員を症状に関係なくPCR検査をするとしても、同時に体温や呼吸器症状も検査するわけです。
すると、都民1000万人(有病率0.1%)全体で見れば陽性的中率が6.5%であっても、そのうち体温37.5度以上であったり呼吸器症状のある対象者の検査結果を見れば、その部分集団での陽性的中率は上がります。例えば、体温37.5度以上または呼吸器症状のある検査対象者が100万人いたとして、その有病率が1%であったとすると、陽性的中率は41.4%です。
さらにその中から重症の呼吸器症状のある対象者(10万人、有病率10%と仮定)だけに絞って検査結果を見れば、その陽性的中率は88.6%になります。

つまり、都民1000万人全員を検査したとしても、検査結果を他の症状別に見ればちゃんと陽性的中率は確保できるわけです。

検査結果が陽性でも他に何の症状も無い検査対象者には、偽陽性の可能性がかなり高いことを伝えた上で自身で健康観察するよう求め症状が出たら来院という措置に留め、軽症の検査対象者も偽陽性の可能性が50%程度あることを伝え自宅待機で症状が悪化したら来院という措置とし、重症の検査対象者のみCOVID-19患者として入院治療すれば良いだけです。
これなら重症の呼吸器疾患の患者が爆発的に増えない限り、医療崩壊もしないでしょう。

日本でこのような対応が取れない理由は、単純に検査する能力が不足しているからに過ぎません。

それを“検査する能力はあるけど医療崩壊を避けるために検査しないのだ”みたいに主張するのは欺瞞という他ありませんね。



*1:予算や人員のリソース上、COVID-19のPCR検査を増やせば他の検査能力を圧迫するなどの理由はあり得ますが。