「教科書の歴史認識や歴史観が政府の考え方と一致するものと解されるべきものではない」by 福田官房長官

2001年4月3日に、小泉政権福田官房長官が以下の談話を発表しています。

福田官房長官コメント
平成14年度より使用される中学校の歴史教科書について
平成13年4月3日
1. 平成14年度より使用される中学校の歴史教科書について、今般、文部科学大臣は、申請のあった計8冊について検定決定を行った。
2. 我が国の教科書検定制度は、民間の著作・編集者の創意工夫を活かした多様な教科書が発行されるとの基本理念に立つものであり、国が特定の歴史認識歴史観を確定するという性格のものではなく、検定決定したことをもって、その教科書の歴史認識歴史観が政府の考え方と一致するものと解されるべきものではない教科書検定制度は、あくまでも当該図書が検定基準に照らして教科用図書として適切なものであるか否かとの観点から、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして、明らかな誤りやバランスの欠如などの欠陥を指摘し修正を求めることを基本としている。
3. 今般の教科書検定にあたっては、その過程で近隣諸国から種々の懸念が表明されたが、検定は、学習指導要領、並びにいわゆる「近隣諸国条項」を含む検定基準に基づき、厳正に行われてきた。
 因みに、我が国政府の歴史に関する基本認識については、戦後50周年の平成7年8月15日に発出された内閣総理大臣談話*1にあるとおり、我が国は、遠くない過去の一時期、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受け止め、そのことについて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するというものである。こうした認識は、その後の歴代内閣においても引き継がれてきており、現内閣においても、この点に何ら変わりはない。
 我が国としては、今後とも、近隣諸国との相互理解、相互信頼の促進に努め、アジアひいては世界の平和と発展のために貢献していく考えである。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/13/dfu_0403.html

当時は少なくとも「検定決定したことをもって、その教科書の歴史認識歴史観が政府の考え方と一致するものと解されるべきものではない」と言うくらいの言い訳は準備していたわけですし、そうでなければ激しく批判されるくらい社会の健全さがあったわけです。

しかし、10年経った現在はこの有様です。

教科書検定基準見直しへ 文科省、領土や歴史認識…政府見解を反映 
2013.11.14 00:12 (1/2ページ)[教科書]
 文部科学省は13日、領土や歴史問題で教科書に政府見解を反映させるよう、現行の検定基準を見直す方針を固めた。一部の学説だけを記述して偏向的な内容にならないよう基準を厳格化する。早ければ来年1月にも新基準をつくり、来年度に行われる中学社会科の教科書検定から適用する方針だ。
 教科書検定は、教科書会社が編集した原稿段階の教科書の記述を文科省が審査する制度。新たな検定基準では、尖閣諸島沖縄県石垣市)や竹島島根県隠岐の島町)など領土に関わる問題、慰安婦南京事件など歴史問題、自衛隊の位置づけなどについて、(1)政府見解や確定判決があれば、それを踏まえた記述をする(2)通説的な見解がない場合は特定の見解だけを強調せずバランスよく記述する−とした。
 歴史などの教科書をめぐっては、南京事件の犠牲者数で誇大な数字が挙げられるなど、検定のたびに偏った記述が指摘されていた。慰安婦問題の記述でも、戦後補償は解決済みであるとする政府見解が書かれていないケースがあった。
 このため、自民党教育再生実行本部が今年6月、検定基準の見直しを含む改革案の中間とりまとめを発表。文科省でも偏った記述には新基準を設けて厳格に対応することにした。
 関係者によると、近く下村博文文科相が「教科書アクションプラン」として公表するという。
 同プランではこのほか、沖縄県竹富町が教科書採択地区協議会の答申とは別の中学公民教科書を採択した問題を受け、教科書無償措置法を改正することも盛り込む。
 同法は、複数の市町村でつくる採択地区内で同一の教科書を選ぶよう定めているが、竹富町は同法に反し、別の教科書を採択、使用している。このため、同様の事態が起きないよう来年の通常国会に同法の改正案を提出する方針だ。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/131114/edc13111400130000-n1.htm
2001年 2013年
「我が国の教科書検定制度は、(略)国が特定の歴史認識歴史観を確定するという性格のものではなく」 「政府見解や確定判決があれば、それを踏まえた記述をする」
「教科書の歴史認識歴史観が政府の考え方と一致するものと解されるべきものではない」 文部科学省は13日、領土や歴史問題で教科書に政府見解を反映させるよう、現行の検定基準を見直す方針を固めた。」

もはや政府にとって言い訳すら不要なくらい日本社会は劣化したと言えるでしょう。