「日本は絶対に徴兵制にはならない」と主張する論者が知らない数字

日本は絶対に徴兵制にはならないことを数字で証明してみましょう ww」とか言ってる人がいます。
この永江氏記事ですが、のっけから事実認識で誤っている上にデータの使い方がひどい。

旧厚生省援護局調べ。1945年8月15日時点の兵数によりますと・・・終戦当時

内地 370万人
引き上げてきた人たち
陸軍 296万3000人
海軍 38万1800人

の軍人がいました。あんなにたくさんの兵隊さんが亡くなったのに、まだ合計で700万人もいたんですよ。終戦の年の人口は7000万人強です。そりゃ徴兵でもしないと足りないよ。(略)自衛隊の人数ってどれくらいだと思いますか?

防衛省のデータです。日本の自衛隊員の数は
陸上自衛隊 13万7,850人
海上自衛隊 4万1,907人
航空自衛隊 4万2,751人
統合幕僚ほか 3,204人

合計22万5,712人

しかいないのよ・・・

http://blogos.com/article/124840/

要するに、昔の日本が徴兵制を布いていたのは、人口7000万人しかいないのに、敗戦時生存者だけで700万人の兵隊がいたからだ。現在の自衛隊は22.5万人しかいない。だから徴兵制は不要、というロジックです。多分、永江氏の脳内では、戦前日本は徴兵制を布いておらず、戦争末期になってから徴兵制に移行したことになっているのでしょう。どこの並行宇宙のことか知りませんけど。
言うまでもなく明治以降の戦前日本では徴兵制が布かれており1930年頃の兵力は約25万人(うち徴兵された兵卒は約20万人)で、現在の自衛隊の規模とほぼ同じです。
さらに言えば、総人口では戦前の方が現在よりも少ないのですが、徴兵適齢である18〜19歳男子人口で見ると戦前と現在はほぼ同数です。

年度     18歳男子 19歳男子
1935年国勢調査  645,384  653,743 1,299,127
2010年国勢調査  623,883  612,346 1,236,229

単純に人口と兵力規模だけを見るならば、130万人の18〜19歳人口から25万人の軍隊を維持するために戦前日本は徴兵制を布いていた訳ですから、18〜19歳人口が120万人の現在において22万人の自衛隊を維持するためには徴兵制を布いてもおかしくない、とも言えてしまいますね。
実際にそうならないのは、総兵力25万人の8割である20万人が徴兵であった戦前日本に対し、現在の日本は総兵力22万人の自衛隊のうち、兵卒にあたる士がたった4万人しかいないからです。

もし、自衛隊が社員100人の会社だったら・・・

23人は課長以上の管理職(士官)です。
59人が係長(下士官)です。
平社員(兵卒)は18人しかいません。

とかそんな感じが現在の自衛隊です。社員の6割が係長の会社ってどうなんですかね。
ところで、もし、士官・下士官・兵卒の比率を1:3:6 程度にするなら、自衛官(士)を新規に20万人採用する必要が生じますが、これ徴兵制でなければ無理でしょうね。1:3:3でも6万人以上増やす必要があり、やはり徴兵制でなければ難しい状況です。

なぜ海上保安庁

しかし海上保安大学校の応募者数は
増えてます!!
倍率はいつも10倍をキープ。2010年の中国船の体当たりの翌年の2011年は、海上保安庁への志願者数(海上保安大学校じゃなくて)は前年より3000人多い8000人以上に達したというのはニュースでみなさん知っての通り。なので

http://blogos.com/article/124840/

海上保安大学校に限らず、防衛大学校だって倍率は高いんですがこれって幹部候補ですから倍率高くて当たり前です。同じく幹部候補となる国家公務員総合職の倍率だって軒並み10倍を超えていますよね。
2011年に海上保安庁への志願者が増えた、とも永江氏は言ってますが、それ普通に「海猿」効果でしょう。「海猿」が映画公開された直後は毎回海保志願者が増えたと結構報道されてますよね。なぜそれを無視しますかね。