”嘘つきフジテレビ”は相手にするな!

”嘘つき文在寅”は相手にするな!(8/21(月) 11:12配信 ホウドウキョク)」の件。
フジテレビ平井文夫解説委員が、歴史修正主義と民族差別に満ちた嘘を述べています。

韓国の文在寅大統領が日本統治時代の徴用工の問題について個人請求権は消滅していないと発言。
そもそも、国際法は戦後賠償における個人請求権は認めていない。まずこの時点で、文在寅大統領が言っていることは大嘘だ。日韓は65年の国交正常化で、日本側は3000億円を国家賠償し決着した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170821-00010004-houdouk-kr

個人請求権は国際法とか関係なしに被害を受けた個人が有する権利です。
これを国際法が認めていないとか訳のわからぬ主張している時点で、フジテレビ平井文夫解説委員が言っていることは大嘘ですね*1
「日韓は65年の国交正常化で、日本側は3000億円を国家賠償し」も嘘ですね。

1965年の日韓請求権協定で日本が韓国に対して無償供与したのは3億ドルであって「3000億円」ではありません。日韓請求権協定第1条の記載も「現在において千八十億円(一◯八、◯◯◯、◯◯◯、◯◯◯円)に換算される三億合衆国ドル(三◯◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)に等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務」となっています。
また、「国家賠償」なんて文言は協定のどこにも記載されていません。
この供与金の性質は、協定中に「前記の供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない。」と規定されており、個人に対する賠償の性質を持っていないことも明らかです。
そもそも、日本政府は1965年日韓請求権協定での供与金の性質を「独立祝賀金」と主張しており、賠償とは認めていません。その意味では、平井解説委員の主張は日本政府の公式見解から外れています。

また、そもそも個人請求権が消滅しないことは、日ソ共同宣言に関する日本政府見解や日韓請求権協定に関する日本政府見解で日本政府自身が認めています。

1991年3月26日 第120回国会 参議院内閣委員会

○翫正敏君 そうですね、よろしくお願いします。
 それはそれとしまして、条約上、国が放棄をしても個々人がソ連政府に対して請求する権利はある、こういうふうに考えられますが、これは外務省に答弁していただけますか。本人または遺族の人が個々に賃金を請求する権利はある、こういうことでいいですか。
○説明員(高島有終君) 私ども繰り返し申し上げております点は、日ソ共同宣言第六項におきます請求権の放棄という点は、国家自身の請求権及び国家が自動的に持っておると考えられております外交保護権の放棄ということでございます。したがいまして、御指摘のように我が国国民個人からソ連またはその国民に対する請求権までも放棄したものではないというふうに考えております。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/120/1020/main.html
1991年8月27日 第121回国会 参議院予算委員会

○政府委員(柳井俊二君) ただいまアジア局長から御答弁申し上げたことに尽きると思いますけれども、あえて私の方から若干補足させていただきますと、先生御承知のとおり、いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます。
 その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます。
清水澄子君 七月十日の韓国の国会で、野党が強制連行された朝鮮人の未払い賃金を請求することについて質問したことに対し、韓国の李外相がそれは日本から返してもらう権利があるという趣旨の答弁をしておりますが、このこととどういう関係になりますか。
○政府委員(谷野作太郎君) 韓国政府も、先ほど私が御答弁申し上げましたところ、あるいは条約局長が御答弁申し上げたところとこの問題については同じ立場をとっておるわけでございます。
 ただいまお話のありました李相玉韓国外務大臣の発言がこの問題についてございますので、そのくだりを読み上げてみたいと思います。「よくご存じのように、政府レベルにおいては、一九六五年の韓日国交正常化当時に締結された、請求権及び経済協力協定を通じこの問題が一段落しているため、政府が」と申しますのは韓国政府がという意味ですが、韓国政府が日本との間において「この問題を再び提起することは困難である」、これが韓国政府の立場でございます。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/121/1380/main.html

文大統領発言はこの日本政府見解と軌を一にするものであって、別段おかしな見解ではありません。

国際司法裁判所関連の平井文夫解説委員の記述

文在寅大統領は数日前に「これは国際的な常識だ」と言っている。実はドイツがギリシャから同じように「国際常識」と言われたことがあるが、ドイツは国際司法裁判所で勝っている。ドイツは個人請求権を否定した上で、あくまで、ドイツの企業が「和解」という形でギリシャの人々に補償をしている。賠償ではない。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170821-00010004-houdouk-kr

「ドイツは国際司法裁判所で勝っている」の部分ですが、これはギリシャで行われたドイツを被告とする裁判について、主権免除が認められた(被告が国家の場合、外国の裁判権から免除されるという国際慣習法の規定)と言う話です。ちなみにギリシャでの戦争犯罪行為そのものについては、ドイツ連邦最高裁判所も「疑いもなく国際法に違反する犯罪」であることを認めています。ドイツの裁判所が否定したのは、国家に対して賠償請求できるのは国家のみだという主張によります。したがって、ドイツの事例は個人請求権の存在を否定する根拠にはなりません。
「ドイツは個人請求権を否定した上で、あくまで、ドイツの企業が「和解」という形でギリシャの人々に補償をしている」というのはよくわかりませんね。アメリカの外国人不法行為請求権法に絡み「記憶・責任・未来」財団を設立した件について言っているとは思いますが、これって企業に対する個人請求権を否定できなかったからこそとも言えますので、平井解説委員の説明では間違いというほかありません。

条約・協定で放棄したのが政府による外交保護権であるという解釈をとる以上、個人請求権は存在します。これは日本政府の公式見解とも合致します。
問題は加害主体が国家である場合、国家を相手取った訴訟を相手国内で提起する以外に無く(自国政府を通じた相手国に対する請求ができない)、そのハードルが著しく高いのが問題です。自国内の裁判所で提訴しても自国以外の国家が相手どった裁判では主権免除が適用されるため、裁判が成立しません。
ところが、加害主体が国家ではなく企業の場合は、主権免除を気にする必要が無くなります。
強制連行・強制労働に関する訴訟が出来るのは、個人請求権が存在することと主権免除を考慮することなく相手国企業を自国内で提訴できるからという理由があり、さらに強制連行・強制労働を強いた企業が今も存続しており、かつ、その企業が自国内でも経済活動を行っているという条件がそろっていれば、その効果も増します。
今後も多数の訴訟が予想されるわけですが、それを避けるのであれば、ドイツのように日本企業が出資して財団を設立して、それを通じて各種補償を行うという手段もありますが、今の日本社会のヒステリー振りを見てると無理でしょうねぇ。

しかし韓国は国際司法裁判所の言うことは聞かないと宣言している。日本は国際司法裁判所に訴えて、勝って、その上で和解をしたいと思っているが、韓国側はそれに応じないので、日本はそれも出来ない。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170821-00010004-houdouk-kr

「韓国は国際司法裁判所の言うことは聞かないと宣言している」というのは意味不明ですね。ドイツとギリシャの件で国際司法裁判所が出てきたのは、ギリシャ最高裁がドイツに主権免除を認めない判決を下し、イタリア裁判所がギリシャ判決に基づいた執行を認めたためにドイツが国際司法裁判所に提訴したという話です*2
国連国家免除条約*3が作成されてはいますが現時点では発効していません*4ので、主権免除に関する件は国際慣習法に則ることになり、これに関して「韓国は国際司法裁判所の言うことは聞かないと宣言している」などという話を平井解説委員がどこから聞いてきたのか、さっぱりわかりません。

そもそも紛争事案を国際司法裁判所に付託するか否かについては、当事国間の特別の合意、条約の条項、義務的管轄権を認める一方的宣言 の3つの方法で明示することになっています*5
主権免除に関する条約は未発効ですので、「特別の合意」と「一方的宣言」以外に付託同意の方法は無いわけですが、本件に関して日本が付託を提起していて、韓国が付託を拒否しているなら「特別の合意」が存在しないと言うことであって「国際司法裁判所の言うことは聞かないと宣言している」ではありませんし、義務的管轄権を認める一方的宣言をしていないことをもって「国際司法裁判所の言うことは聞かないと宣言している」とも言えません。
どう考えても平井解説委員の説明は間違っています。

ここまで嘘ばかり並べ立てるフジテレビ平井文夫解説委員は、“おそらく本当に無知なための発言なので本当に馬鹿な奴だ。相手にしてはいけない。”
官民あげて嫌韓をネタにして、支持率を上げたりしようとしている安倍政権にゴマを摺る以外に能が無いのでしょう。


*1:個人の請求権が国際法で認められていないのは、国際法上における主体が原則として国家であり、個人が主体とはなり得ないために規定されていないに過ぎません。http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/120/1020/main.html

*2:http://www.unic.or.jp/activities/international_law/judicial_settlements/contentious_case/icj_recent_cases/http://justice.skr.jp/stateimmunity/majority.pdf

*3:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_23_gai.html

*4:http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/10-56/matsuiakihiro.pdf

*5:http://www.unic.or.jp/info/un/un_organization/icj/faq/ 「5.なぜ国家間の紛争のなかで、ICJで取り扱われないものがあるのですか?」