橋下氏相手なら噛み付いて構わないと判断したのなら情けない

これまで散々人権軽視を続けてきた橋下大阪市長に対して遅まきながらでも批判の声が上がったこと自体は評価します。
慰安婦発言「誤報」の主張:橋下氏に反論する=大阪本社編集局長 若菜英晴
「誤報」の指摘あたらない 朝日新聞大阪本社社会部長

橋下市長は政治家として批判に値する言動を繰り返してきましたが、その度に批判者に対し巧みな話術で話を逸らし相手に対する攻撃にすり替え批判者を弾圧してきました*1。それを支えたのは、第一に学者やメディアを罵倒する姿勢を“率直”、“誠実”などと思い違いをして受け入れ支持してきた市民です。市民は、自分で考えることをやめ、胸のすく政治ショーの方を欲した結果、橋下氏が体現する大衆迎合主義に飲まれました。ある意味で、これは民主主義の自殺と言え、市民に大きな責任があります。
しかし、政治と独立した立場から市民に情報を提供し、批判すべきことに対して先導すべきメディアの責任もまた小さくありません。

そのメディアの態度はこのようなものです。
「国連が慰安婦ヘイトスピーチ改善要求? 外務省「教育徹底を求められただけ」」(J-CAST 2013/5/23 20:21)

ヘイトスピーチの改善など要求されていない。教育徹底を求められただけ”と朝日新聞を論難する内容ですが、慰安婦問題に対してまともにとりあげず、政治・外交のネタ程度に報道するばかりのメディアに「教育徹底」の責任の一端があることをまるで理解していない記事です。

委員会の審査では、日本政府としても主張し、慰安婦問題については教科書に書いてきちんと教育していると説明したとした。

http://www.j-cast.com/2013/05/23175771.html

などと批判もなしに外務省の見解を垂れ流す感覚はメディアとして異常です。自民党初め、産経新聞や読売新聞が慰安婦問題を否認・矮小化している現状と外務省の言い訳の間のギャップを何も感じないのなら、メディアとして最低限の能力すら持ってないといえるでしょう。

「教育徹底を求められただけ」・・・じゃあ、しろよ、ってな感じですね。メディアも慰安婦の経験や当時の軍・政府の背景をちゃんと取材し、報道すべきであって、橋下氏の暴言や言い訳を垂れ流すことが「教育」じゃないことを理解すべきです。

冒頭にとりあげた朝日や毎日の反論も、橋下氏の暴言が海外からも非難され始めて今なら大丈夫と判断したかのように舌鋒を強めていますけど、歴史修正主義の黒幕である安倍首相に斬りこむ兆しは見えません。

慰安婦否認論とヘイトスピーチ容認・黙認に加担している産経と読売は反論すらしていないようですが、両紙にはその資格もないでしょうからまあわからなくはありません。

*1:ある意味、石原慎太郎氏の単純なキレ芸の発展型といえるかもしれませんね。