河野太郎議員による戦争法案説明の誤りについて

自衛隊が、湾岸戦争イラク戦争のような戦闘に参加することは、今後もありませんし、外国を守るために日本が戦争に巻き込まれることもありません。」

河野議員はこう書いています。

集団的自衛権の行使には地理的な制約はありませんが、前記の例(引用者:「我が国がエネルギー資源を依存する中東のホルムズ海峡に機雷が敷設され、国民の生活に死活的な影響を与え、我が国の存立を脅かすような事態になった場合」)を除き、新三要件に該当するような我が国の存立を脅かす事態が我が国から離れたところで起こることは極めて考えにくいと思います。
この新三要件を満たさなければ集団的自衛権の行使は認められないのですから、自衛隊が、湾岸戦争イラク戦争のような戦闘に参加することは、今後もありませんし、外国を守るために日本が戦争に巻き込まれることもありません。

http://www.taro.org/2015/07/post-1619.php

ホルムズ海峡の機雷掃海以外で自衛隊が日本近隣以外の地域で戦闘に参加することはない、という主張ですが、これは河野氏自身が「自衛のために限定された集団的自衛権を行使する必要が起きる可能性」として挙げている「三つのケース」のうちホルムズ海峡を除く2つのケースのうち1つでも誤っています。

一つは、半島有事など海外での紛争から逃れようとする邦人を輸送している米軍艦船に対する攻撃があった場合。

http://www.taro.org/2015/07/post-1619.php

これですね。「海外での紛争から逃れようとする邦人」は別に韓国にしか発生しないわけじゃありません。中東やアフリカにだって邦人はいますし、むしろ自衛隊艦艇を直ちに派遣できる朝鮮半島や台湾よりも中東やアフリカの方が邦人輸送を日本以外が担当する可能性が高いでしょう。実際、2015年4月には中東イエメンからの日本人輸送を中国海軍輸送艦「微山湖」が行っています*1

そもそも、紛争地から避難する邦人を輸送する外国艦船を自衛隊が「自衛のために限定された集団的自衛権を行使する」という想定はかなり変です。外国艦船を防護できる状況に自衛隊が配備されているなら、まず自衛隊が邦人輸送するんじゃないですかね。河野氏が例えで挙げている半島有事であれば、米軍輸送艦よりも海自輸送艦の方が動きやすいと思いますけどね。
逆に中東のように自衛隊が容易に邦人輸送できない地域であれば、そもそも外国艦船を護衛することだって容易じゃないはずです。
自衛隊輸送艦も輸送ヘリもないけど戦闘機だけは展開している地域があるならあり得るかも知れませんが、基本的に運用で対応できますよね。

つまり、河野氏の上記例えは「自衛隊が、湾岸戦争イラク戦争のような戦闘に参加することは、今後もありません」と断言できる根拠になりませんし、そもそも想定として非常識でもあります。

*1:「イエメン退去の中国人9人と日本人1人オマーン到着 中国海軍「微山湖」が輸送」http://jp.xinhuanet.com/2015-04/08/c_134131601.htm