タイトルの繰り返しですが、(1)日本が武力攻撃されたわけでもないのに、(2)武力行使目的の自衛隊海外派兵 を出来る法案が、今回の安倍政権が提出した戦争法案です。
「戦争法案」という文言にケチをつけている連中は、法案をちゃんと読んだのでしょうか。
とか思っていたら、例の永江氏がこんな記事を書き、自称保守の反中活動家*1がブコメをつけているという・・・。
「このエントリーで安保法案読んだと胸張っていえるから目だけ通そう」
ここで「読んだと胸張っていえる」と書いているのが自衛隊法改正部分だけ、しかもリンクは時事通信。法案そのものは正式なものがあるのに・・・。
発動できる前提が「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」となっているので、「侵略戦争に行く」なんてことは認められるわけはないと常識的には思いますが、このへんはいくらでもこじつけが可能だというのが反対している方の理由でしょうかね?
http://www.landerblue.co.jp/blog/?p=21679
この辺、散々審議で野党から突っ込まれて、安倍政権側はまともな回答が全くできてないんですけどねぇ。
法案の個別の文言だけを見て、関連する内容との整合性とか全体を永江氏もそれに賛同するような連中も見ていないとしか思えません。
極単純に「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)ってのは「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態*2)とどちらが日本にとって重大な事態か、考えてみればいいんですけどね。
中谷防衛相答弁では、存立危機事態というのは重要影響事態に含まれるわけですから、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」というのは「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」以上に重大な事態であるはずですよね。
ということは、現在既にある武力攻撃事態法で定義されている「武力攻撃予測事態」か「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」といえるんじゃないんですかね。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO079.html
一 武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。
二 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいう。
三 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。
だとすれば、既に現行法で対処できるわけで、「存立危機事態」などという概念を新規に作り出す必要なんかないはずです。
それでも安倍政権は「存立危機事態」にこだわっているわけですが、それは「武力攻撃予測事態」か「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」と言った日本に明白な危険が切迫していなくとも、日本側から武力行使できるように法改正したいという目論みがあるからとしか言いようがありません。
つまり、日本から離れた海外において、日本の自衛隊側から武力行使を仕掛けることができるようにすると言うことです。
様態はいくつか考えられますが、例えば中東で米軍が攻撃された場合に日本が参戦するということが法案上可能になりますし、どこかの友好国で内戦や隣国との戦争でも起こった場合は、その「国に対する武力攻撃が発生し」たとみなして、自衛隊が真っ先に介入することも法案上はできますね。
そしてそれは一般的に「戦争」と言われる行為であり、「侵略戦争」と言われることもあるわけです。
この戦争法案は改正・新設される主要な法律だけで11本あり、それぞれが相互に関連していますから、法案全体をちゃんと読み込まないと見えてこない問題とかが結構隠されています。法案の読み込みをもっともしっかり行なっているのは、先ず第一に野党議員であって、審議を見てると、野党議員らは相当ちゃんと読み込んでいることがわかります。その次に法案を読み込んでいるのはマスコミ記者、政府はその次くらいの理解のお粗末さで、ネット上の論者と下手すりゃ同レベルです。
ネット上の論者中では、当然批判派の方がよく法案を読んでいるように感じますね。少なくとも安倍信者らはほとんど読んでません。読んでたとしても永江氏のように時事通信の要綱くらいでしょうね。
永江氏のように「「侵略戦争に行く」なんてことは認められるわけはないと常識的には思います」とか言っている時点で、ろくに法案を読んでないことがもろ分かりですけど。
永江氏がろくに法案を読んでいないことがわかる根拠
これは一発でわかります。
永江記事には以下の記載があります。
全文はここにあります。コレ書いたらすぐにやる人いると思うけど、Kindleで出したらめちゃダウンロードされるよ〜www
http://www.landerblue.co.jp/blog/?p=21679
ここで「全文」と書かれた部分から張ってあるリンク先が時事通信の「平和安全法制整備法案要綱と国際平和支援法案全文」という記事なんですが、これ新設される「国際平和支援法案」については全文が載っているんですが、主要な10本の法律を改正する法律である「平和安全法制整備法案」に関しては「要綱」しか載ってないんですよね。
法案全文なら以下のような冒頭になります。
我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律
http://www.cas.go.jp/jp/houan/150515/siryou3.pdf
(自衛隊法の一部改正)
第一条 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
第二条第五項中「第九十四条の六第三号」を「第九十四条の七第三号」に改める。
第三条第一項中「直接侵略及び間接侵略に対し」を削り、同条第二項第一号中「我が国周辺の地域における」を削る。
(略)
例えば、この自衛隊法第3条1項から「直接侵略及び間接侵略に対し」を削るという変更については、時事通信記事の「要綱」には載ってません。だから、永江氏はそれに気づいてもいません(この件についても審議で野党議員が言及し、突っ込んでます。)。
ちなみに現行の自衛隊法第3条1項は以下の通りです。
第三条 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO165.html
これがこう変わるわけですね。
自衛隊法改正案
第三条 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
要するに、日本が侵略された場合でなくとも「我が国を防衛する」という名目が立てば自衛隊を動かせるようにする意図があるわけで、76条の改正案、つまり「武力行使目的での自衛隊海外派兵」と関連する箇所でもあるわけです。
「武力攻撃予測事態」でもなければ「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」でもなく、「重要影響事態」でもない。全く定義できない「存立危機事態」なる不可思議な事態において、自衛隊による海外での武力行使が可能になる法案ですから、法案として欠陥品であることは明白なんですけどね。
法案をろくに読まない安倍信者には理解できないでしょうが。