改正児童ポルノ法の附帯決議に関する件

山田氏は以下のように自画自賛しています。

先ほどの児童ポルノ禁止法の改正案の参議院法務委員会で、私が原案を作成した附帯決議が全会一致で採択されましたのでその全文を掲載します。原案から多く削られてしまったとはいえ、衆議院ではなかった附帯がついたことは非常に大きいです

https://taroyamada.jp/?p=5701

その附帯決議というのはこういう内容です。

2014年6月17日 186国会 参議院法務委員会

行田邦子君 私は、ただいま可決されました児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党民主党・新緑風会公明党日本維新の会・結いの党、みんなの党及び生活の党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 児童を性的搾取及び性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用を行うこと。
 二 第七条第一項の罪の適用に当たっては、同項には捜査権の濫用を防止する趣旨も含まれていることを十分に踏まえて対応すること。
 三 第十六条の三に定める電気通信役務を提供する事業者に対する捜査機関からの協力依頼については、当該事業者が萎縮することのないよう、配慮すること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/186/0003/18606170003024a.html

自民・民主・公明・維新・結い・みんな・生活の共同提案ですね。
ちなみに附帯決議というのはこういうものです。

 法律案が可決された後、その法律案に対して附帯決議が付されることがあります。附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものですが、実際には条文を修正するには至らなかったものの、これを附帯決議に盛り込むことにより、その後の運用に国会として注文を付けるといった態様のものもみられます。附帯決議には、政治的効果があるのみで、法的効力はありません。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/katudo01.html

まあ、法的効力が無くとも、政治的効果はあるので意味があるという主張もあるでしょう。
審議された法案の条文の記載が不十分な場合に、執行にあたっての留意事項ということならそれもわかります。

ただ、衆議院で可決された改正案は、元の児童ポルノ法を以下のように変えることで可決されています。

(改正前)
第三条 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。

http://www.moj.go.jp/content/000124532.pdf

(改正後)
第三条  この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html

附帯決議の一項・二項は、この第3条改正内容とほぼ重複していますね。
附帯決議の三項についても、衆院での審議で既にこういうやり取りがあります。

2014年6月4日 186国会 衆議院法務委員会
○枝野委員 次に、十六条の三で新設されます雑則、インターネットの事業者に対する努力義務規定についてお尋ねをしたいと思います。
 これはもう皆さん御承知のとおり、インターネット事業者が、インターネットコンテンツセーフティ協会、ICSAを二〇一一年ですか設立して、警察やインターネット・ホットラインセンター、IHCと連携して、ブロッキングのためのいろいろな努力を既に進めているところでございます。
 ICSAによるブロッキング等の対応の対象になり得る事業者の持っているシェアは、インターネットで七七%、携帯電話では九五%のユーザーのところをシェアする事業者が、こうした団体をつくって努力を進めているところでございます。
 今回の努力義務規定は、こうした適切な事業者に、少なくとも努力をしている事業者に新たな規制を行うというものではなくて、むしろこうした努力をさらにしっかりと進めていくべきだという後押しをする趣旨だと私は理解をいたします。
 また、重要なのは、こうした努力を怠っている、まさに、違法なことをうまいことやって児童ポルノを拡散させたりとか、そのことで暴利をむさぼっている一部の事業者がまたこういった努力のところに加わってこないとか、こういうところに対して、しっかりとやらせよう、やってもらわないと困る、こういう趣旨だと理解いたしますが、階提案者の御認識をお答えください。
○階委員 今の第十六条の三のインターネットの利用に係る事業者に努力義務を課す規定ですが、委員御指摘のとおり、この条文は、適切な事業者に対して新たな規制を行う趣旨ではなくて、こうした努力を後押しするということと、措置の不十分な事業者に一層の努力を促そうという趣旨であります。
○枝野委員 今の点は、法務省、それから、これは実際には運用するときに警察がかなり関係してくると思いますが、それぞれ政府参考人、今の理解でよろしいですね。共有ですね。
○平口大臣政務官 お答えいたします。
 インターネットを利用した情報の発信等に必要な電気通信役務を提供する事業者の業務に関しましては、法務省は所管する立場でございませんので、私の方から申し上げるのが適切かどうか、これはちょっとわかりませんが、お尋ねなので、あえてお答えいたします。
 改正法の十六条の三は、これら事業者一般に対して、児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置等を講ずる努力義務の規定である、このように理解をいたしております。
 したがいまして、この規定は、これまでそうした措置を講じてこなかった事業者に対してその努力を促すというものであるとともに、これまでそうした措置を講じてきた事業者に対しては、引き続き従前どおり努力するように促す趣旨であると理解をいたしております。
 以上でございます。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0004/main.html

まあ、審議のやり取りを附帯決議に反映させたという意味はあるかもしれませんね。

漫画、アニメの規制を改正児童ポルノ法から除外した点

これも元々、自民・公明・維新案に含まれていた「政府は、漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するものと児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、インターネットを利用した児童ポルノに係る情報の閲覧等を制限するための措置に関する技術の開発の促進について十分な配慮をするものとする。」という規定が除外されたのは、民主党の尽力によると言えるんじゃないですかね。

2014年6月4日 186国会 衆議院法務委員会
○枝野委員 階さん、ちょっと順番を変えて、一番最後のものはちゃんと確認をとっておかないと危ないところなので、先にやらせてください。
 今回、漫画、アニメ、CGなどと児童の権利を侵害する行為の関連性についての検討規定は設けないものとするということで各党一致をしたということでございます。これは特に我が党が強く主張していることでございまして、そもそもこの法律は、改正の前後を問わず、児童の権利を擁護することを目的としている、第一条に明確に書かれています。つまり、児童虐待児童ポルノの被写体にされるということを通じて児童の権利が侵害される、そうしたことを防ぐことが目的になっている。まさに児童を保護する、虐待の対象になっている児童を保護するものであって、いわゆる風紀犯とかではありません。
 アニメ、漫画、CGなどについては、一般論としては権利が侵害される児童は存在しないということになっておりますので、本法でこうしたものを対象にすることは、本法の目的からするとおかしなことであって、逆に言うと、そうした、どちらかというと風紀犯、公の善良な風俗を保護法益とするような問題とごちゃごちゃにしてしまう、あるいは、低年齢のお子さんがこうしたものを見ることによる弊害みたいなことも、これまたいわゆる虐待の対象の子供を守るということとは保護法益が違います。
 そうした意味では、漫画、アニメ、CGなどに対する規制などについてこの法律の中に、附則とはいえいろいろ一緒にすることは、むしろ、この法律の本来の大事な目的である具体的児童の、虐待を受けた児童、あるいは児童が性的虐待を受けないようにするというこの目的からは、違う目的のものを一緒にすると、かえって本来の目的を十分達成することに対してマイナスになるというふうに考えていますが、これは、階提案者、民主党の考え方について御説明ください。

○階委員 今御指摘のあったように、当初の自民党さん、公明党さん、維新の党さんの案では、附則として、「政府は、漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するものと児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、インターネットを利用した児童ポルノに係る情報の閲覧等を制限するための措置に関する技術の開発の促進について十分な配慮をするものとする。」という規定が設けられておりました。
 しかし、今委員の御指摘のとおり、この法律のそもそもの目的は実在する児童の権利擁護という点ですから、この目的からは少し外れているのではないかということで、実務者協議の中で最終的に合意しまして、この附則は外して、アニメ、CG、漫画などについてはこの法律の中では規定を設けないということになりました。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0004/main.html

表現の自由を擁護したいオタクの人たちは、山田議員らによる附帯決議に感謝するより先に、「漫画、アニメ、CGなどと児童の権利を侵害する行為の関連性についての検討規定」を除外するように働きかけ、衆議院通過の時点で完全に取り除いた民主党に感謝すべきだと思うんですよね。

次の参院選民進党共産党勢力が後退した場合、自民党公明党が再び漫画、アニメを規制する改正案を出して来たら、山田議員一人で2014年の衆議院での民主党のように漫画、アニメの規制を阻止することができると思いますか?
私にはとてもそうは思えません。

なので、山田議員に投票する気にはなれず、それなら表現の自由を優先するという考え方を採っても民進党共産党社民党に投票した方がマシだと思ってます。