“中国ウォッチャー”のレベル

中国国家主席に対して「始皇帝」だの「毛沢東」だのといった安易なレッテルを貼る中国ウォッチャーの言は、話半分以下に聞いておくのが良さそうです。
事例「中国の"新皇帝"習近平がねらう「日本潰し」、そして「パックス・チャイナ」という野望(2016年06月24日(金) 近藤大介 )
この近藤氏については、以前指摘したことがあります。その時は「「屈辱の100年を乗り越え、世界の王となれ」習近平率いる中華帝国の野望を読み解く(現代ビジネス 5月26日(木)11時1分配信 )」という記事でした。近藤氏の「中国の"新皇帝"習近平がねらう「日本潰し」〜」の記事は前回より輪をかけて中身のないレッテル貼りに終始した記事で呆れました。

中身そのものについて批判しても良いんですが、その前に。

(例)
安倍首相の特徴は「山口県人」。山口県人の特徴とは、保守的、男尊女卑、お金におおまか、体裁を気にする、目立ちたがり、政治好き。そんな人が、まともな経済政策や女性の活躍する社会の実現などできるだろうか。

などと日本国内で発言すれば、差別だと言われるでしょうし、私もそう思います*1。批判するなら具体的な政策に対して批判するべきで、出身地なんかで判断するようなことじゃありません。

ですが、中国の国家主席に対しては、そういう出身地差別をやっても構わないらしいですよ。少なくとも近藤的には。

私は、習近平政治の特徴を、「北京人」「毛沢東」「古代回帰」という3つのキーワードで言い表せると考えている。
まず、「北京人」について説明しよう。(略)中国は日本の25倍もの国土があるので、出身地が違えば、言葉から食事、気質まで違うのである。
北京人の特徴とは、思いつくままに縷々書き連ねれば、プライドが高い、メンツ重視、頑固、短気、大胆、保守的、大雑把、お人好し、政治好き、経済オンチ……といったことだ。これは、過去2代の江蘇人指導者の最大の特徴だった「リスク回避の志向」とは、まるで異なる。
(略)
まず、1978年末に訒小平が主導して改革開放政策を始めて以降、怒濤のように成長してきた中国経済が、いまや青息吐息となりつつある。そんな時、中国の最高指導者は、毛沢東ばりの経済オンチである習近平主席なのだ。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48975

近藤氏が習近平主席をなぜ「毛沢東ばりの経済オンチ」だと決め付けているのか、この記事中にはその理由が「北京人」だから、としか書いてありません(そもそも毛沢東は湖南人なので、なぜここで「毛沢東ばりの」という修飾をつけているのかも不明です。まあ、レッテル貼りでしょうけど・・・)。
このレベルで、記事の末尾に「隣国の状況を深く識ることが大事である。」とか書いてあるので、苦笑いするしかありませんねぇ。

さりげない歴史修正

古代から19世紀前半まで、長年にわたってアジアには、「冊封体制」と呼ばれる「パックス・チャイナ」が機能していた。これは、宗主国である中国と、属国(朝貢国)である周辺国との「緩やかな主従関係」だ。
ただし、中国大陸と海を隔てている日本と、高い山を隔てているインドは、このシステムに組み込まれずに生存できた。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48975

卑弥呼とか日明貿易とかは無かったらしい。