一個だけ、驚いたこと。一昨日かな、反ツイフェミ表現自由戦士の方と長めのやり取りをした最中のことなのですが。有害図書規制もフェミニズムが原因では、と仰るので、いやもっと古臭い、保守的で潔癖な子育て観から出たものでしょう(名目は青少年健全育成なわけだから)と返したんですね。(続)
— r_tkt (@r_tkt) October 29, 2019
上記ツイートに起因して考えたことです。
有害図書規制に関してはその経緯をちゃんと把握していないので、フェミニズムのかかわりについて論ずることはできませんが、別の件でフェミニズムと保守がまるで共闘しているかのように見える事案があったりします。
2018年4月の記事にこんなのがあります。
https://diamond.jp/articles/-/168347中学校の性教育で大論争、東京都議vs教育現場それぞれの言い分
末吉陽子:フリーライター
2018.4.24 5:00都議が疑問視したのはなぜ? 不適切とされた性教育授業とは
コトの発端は、3月16日に開かれた東京都議会文教委員会。自民党所属の古賀俊昭都議が、足立区の中学校で行われた人権教育および性に関する教育の授業について、「不適切な性教育の指導が行われているのではないか」と東京都教育委員会(以下、都教委)に答弁を求めたことにはじまる。
(略)
まず、古賀議員が「不適切ではないか」と指摘した性教育の授業について、触れておきたい。3年間で合計7時間実施される「性の学習」と名付けられた授業では、1年生で「生命誕生」「らしさについて考えよう」、2年生で「多様な性」、3年生で「自分の性行動を考えよう(避妊と中絶)」「恋愛とデートDV」など、段階を踏んでテーマが設定されている。
なお、「性の学習」とは別に、保健体育の授業でも、「月経」「射精」「性感染症」「エイズ」などについて学ぶ。これらの授業案作成に携わった、性教育研究の第一人者、埼玉大学教育学部の田代美江子教授に、授業内容のポイントについて聞いた。
(略)
上記のような中学生に対する性教育に対して「不適切」だと主張したのは、自民党の古賀俊昭都議です。赤旗によれば、古賀都議は日本会議のメンバーです。
同会議(引用者註:日本会議)地方議員連盟の設立代表発起人のひとり、古賀俊昭自民党都議はこれまで、侵略戦争を美化する「つくる会教科書」の採用や「日の丸・君が代」の強制を主張し、東京の民主的な教育を攻撃してきました。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-05-31/2017053101_03_1.html
私は中学生に対する上記引用のような性教育は必要だと思いますし、むしろもっと充実させるべきだとも思います。そしておそらく多くのリベラルも同じように考えていると思います。そして、多くのフェミニストも性教育の必要性については同意するかと思います。
しかしながら、フェミニストは性暴力関連の刑法改正を主張しており、その中にはこういうものもあります。
・性交同意年齢を引き上げ、抜本的に見直す
https://www.bengo4.com/c_1009/n_9801/
性交同意年齢の引き上げとは、「十三歳未満の者」に対するわいせつ・性交等を「暴行又は脅迫」が無くても処罰の対象としている刑法176条・177条の規定をより高い年齢に引き上げるという主張です。
(強制わいせつ)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=140AC0000000045
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
何歳に引き上げるかについては14歳から16歳まで緒論ありますが、もし性交同意年齢を16歳に引き上げる刑法改正が行われたら、性交同意年齢引き上げを主張しているフェミニストの他に中学生に対する性教育に対して「不適切」だと主張している日本会議が大喜びするでしょうね。
何故って、同意の有無に関係なく刑法が性交等を禁止している性交同意年齢未満の生徒を対象に「自分の性行動を考えよう(避妊と中絶)」なんて授業ができるわけがありませんから。
授業でやろうものなら“刑法に違反する行為を推奨するのか!”という苦情が保守派、特に日本会議系の連中から必ず来るでしょう。
性交同意年齢未満を対象にできる性教育は、性交同意年齢未満の性交は法律で禁止されている、というものに限定するしかありません。当然、刑法違反行為の実施を前提とした「避妊」「中絶」「性感染症」を授業でまともに取り上げられるわけがないでしょうね。授業では“法律で禁止されているからやるな”しか言えなくなります。
中学生に対する性教育を規制したい日本会議と性交同意年齢の引き上げを主張するフェミニストが裏で手を結んでいるとは思いませんが、長い時間をかけて中学生にも自らを守るための知識を与える性教育を充実させてきた努力が水泡に帰す可能性をちゃんとフェミニストが考慮しているのか疑問に思います。
日本会議に塩を送るようなことにならないことを祈りますが。
ちなみに2018年の古賀俊昭自民党都議による性教育反対の主張はほとんど共感を呼ばなかったようですが*1、15年前の2004年の中央教育審議会ではこんな発言すら出ていたんですよね。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/022/siryo/1263975.htm教育課程部会 健やかな体を育む教育の在り方に関する専門部会(第4回) 議事録
1.日時
平成16年12月21日(火曜日) 10時~13時
(抜粋)
委員
先日、田舎の小さな小学校の中学年を対象にした性教育の授業を参観した。男女一緒に、親も参観しながら授業が行われていた。私が学校に通っていた時には、性教育は全くなかったに等しく、女子に対して生理の指導があった程度だった。命という大切さという観点から、今後、中学生であろうが、高校生であろうが、性的行為をしてはいけないんだということについては、きちんと教えていく必要がある。ただ、学校間で差があるようであり、基盤づくりをする必要があるのではないかと感じている。
「今後、中学生であろうが、高校生であろうが、性的行為をしてはいけないんだということについては、きちんと教えていく必要がある」という発言がまかり通った時代があったわけです。性交同意年齢の引き上げというのは、こういう主張に刑法の罰則をもって後ろ盾を与えるようなものではないんですかね。
あと、性交同意年齢の引き上げを主張している人がよく用いる“海外の性交同意年齢はもっと高い”と言う主張ですが、アメリカのどこだったかの州法では一律に年齢で禁止しているのではなく“5歳以上年上の者が何歳未満の者と行為に及んだ場合”と言った感じで処罰の有無や程度を分けていたりしてます。
性交同意年齢の引き上げの本来の目的が、判断力の未熟な未成年者に対して年長者が性的行為を行うことを処罰することにある以上、このような検討だって必要なはずなんですが、日本でそのような議論があることを私は知りません。
私は「中学生であろうが、高校生であろうが、性的行為をしてはいけないんだということについては、きちんと教えていく必要がある」なんてのはナンセンスで、双方の同意があれば問題ないと思いますが、双方の同意とはどういうものなのかということについてはしっかり教える必要があるとは思います。
以前の記事でもそのような認識で「性交同意年齢の引き上げには賛同できませんね」と書いたんですが、EoH-GS氏から下らない揚げ足取りをされて、散々に罵倒されましたねぇ。ま、EoH-GS氏は自らが日本会議の手のひらの上で踊っていても気にならないのかもしれませんが。