森友・加計問題で安倍政権を擁護する論者ってどうしてこんなにバカなんだろう?

あまりバカとか言いたくはありませんが、「なぜ解散することが追及を避ける事になるのか全然わからない」とか平気で書かれると、そんなこともわからないのは、あなたがバカだからでしょ、と言いたくはなります。

森友問題は国有地の払い下げにあたって不自然な値引きがされていました。加計問題は選定にあたって不自然な条件追加がありました。いずれも行政が関わっている事案ですから、関係者・資料の調査が必要で、そのために野党は参考人招致や資料の公開を求めていたわけです。

不正の証拠を追及する側が示すべきと言って政権を擁護しようとする筋もいますが、追及する側は行政行為に不自然な点があったことを指摘するだけで、不正の確たる証拠を突きつける必要はありません。というか、そこまで明確な証拠があるのなら舞台は司法の場になりますよね。
行政行為において、不正が行われていないという立証責任は行政側にあり、追及側にはありません。行政行為は法に則って行われる以上、その行為は全て記録され、必要に応じて主権者に開示されなければなりません。
不正が疑われた場合、行政側には法に則った適正な行為であったことを立証する責任があります。森友・加計問題はいずれもその責任が果たされていないから問題になっているわけですし、所管する大臣に調査を求めたり、関係官僚に答弁させるには国会の開催が必要なわけです。
だから臨時国会の開催を求めたわけです。

ところが安倍政権は所信表明も代表質問もなしに衆院解散に踏み切りました。

行政行為に不正が無かったことを示すどころか追及の場を消滅させたわけですから「解散することが追及を避ける事になる」という単純な理屈です。よほどのバカで無い限り、これくらいは理解できるでしょう。

森友・加計問題は衆院選の争点にならないのか?

ならなくはありません。
安倍政権が、森友・加計問題の疑惑解明に協力することを一切拒絶し、行政府にある証拠になりそうなものを全て処分する、と自民党の公約に掲げれば、それは争点になりますね。丁寧に説明するとか言ってたのも全て国民を騙すための嘘でした、これからも嘘をついて国民を騙しますので、自民党に投票してください、と選挙演説で安倍首相が言えば完璧です。してくれますかね?

判断を下すのは審理を尽くした後だということが理解できない

野党が散々言ってきたように、森友・加計問題が国民の信頼を裏切る重大な問題であるのなら、それほどの問題が発生したのだから解散して国民の信を問い直すのは当然と言うことになるはずだし、むしろ野党から強く求めることのはずだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171004-00010006-agora-pol

刑事裁判の場合、検察側の立証や弁護側の反論を繰り返し、判決に関わる証拠を全て出して審議を尽くしてから判決を下しますよね。重大事件だからととっとと判決に移ったりはしません。
森友・加計問題について国民の信を問えばいい、という主張は判断に必要な証拠や審議の過程が全て国民に示されて、はじめて出来る話です。文書は処分した、存在しない、担当者にも話を聞くつもりは無い、そんなことを繰り返してきた状態では、国民の信を問える状態ではないでしょう。

その程度のことくらいは理解してほしいものです。


続きを読む

“日本のリベラルは国際的には極左であってリベラルではない”というネトウヨお気に入りの主張について

まあ、具体的にはレイシスト八幡和郎のことですが

立憲民主党は恥知らずな“偽リベラル”の巣窟 --- 八幡 和郎
10/4(水) 17:15配信 アゴ
(略)
彼らは、民進党リベラル派などといっているが、世界中で彼らの多くのような極左で、中国や北朝鮮に擦り寄るような人たちをリベラルと呼ぶ国はない。近ごろの日本では、共産党までふくめた左翼連合をリベラル結集とかいっているようですが、呆れる。
(略)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171004-00010012-agora-pol

「世界中で彼らの多くのような極左で、中国や北朝鮮に擦り寄るような人たちをリベラルと呼ぶ国はない」とか八幡は言っていますが、例えばNew York Times はこんな風に報じています(強調は引用者による)。

Run or Wait? Tokyo's Koike Faces Dilemma Ahead of October 22 Poll

By REUTERSOCT. 2, 2017, 9:03 A.M. E.D.T.

Further complicating the outlook, Yukio Edano, an executive of the failed opposition Democratic Party - which last week decided to run no candidates of its own and have members run on the Party of Hope ticket - announced on Monday the formation of a new Constitutional Democratic Party of Japan with fellow liberals.

https://www.nytimes.com/reuters/2017/10/02/world/asia/02reuters-japan-election-koike.html

枝野氏がリベラルの仲間(fellow liberals)とともに立憲民主党(Constitutional Democratic Party)を作ったという記事です。
民進党リベラル派」を「リベラルと呼ぶ国はない」と八幡は言っていますが、New York Times立憲民主党を作った「民進党リベラル派」を“liberals”と書いていますね。

極左とも言われていない

別のメディア(business-standard)では、立憲民主党中道左派政党(centre-left party)と呼んでいますね。

New centre-left party launched in Japan ahead of vote

AFP | Tokyo
Last Updated at October 2, 2017 17:42 IST

A splinter group from Japan's biggest opposition camp today announced plans to create a new centre- left party, the latest change in the nation's political landscape ahead of an election.
Yukio Edano, deputy head of the Democratic Party (DP), said he would form the new party with like-minded members after the former main opposition group imploded last week.
DP leader Seiji Maehara announced last week the party would not field candidates in the October 22 poll, joining forces with the new "Party of Hope" formed by popular Tokyo governor Yuriko Koike in a bid to topple Prime Minister Shinzo Abe.
While Koike is trying to unite opposition forces, she has reportedly rejected DP members that oppose a bigger role by the nation's Self-Defence Forces.
"Unfortunately, the policies and philosophy of the Party of Hope are different from the direction of the policies and philosophy which we are aiming at," Edano told reporters.
The party will be called the Constitutional Democratic Party.

http://www.business-standard.com/article/pti-stories/new-centre-left-party-launched-in-japan-ahead-of-vote-117100200630_1.html

まとめ

結論としては、八幡和郎は嘘つきである、という当然過ぎて退屈なものになりますね。
立憲民主党は、海外から極左などとは見られておらず、リベラルであり、中道左派である、という、これも当たり前の結論です。


むしろ、日本の民主主義が「沈み行く泥舟」かもと思った話

この件。

»「立憲民主党は沈み行く泥舟」高校教諭が授業で・・・

 さいたま市にある県立高校で、授業中に男性教師が「立憲民主党は沈み行く泥舟」などと発言していたことが分かりました。
 3日、埼玉県立浦和北高校の50代の男性教諭が現代文の授業中に、「枝野氏は希望の党に合流することをいさぎよしとしない」などと発言していたことが高校などへの取材で分かりました。さらに、教諭は「立憲民主党は沈み行く泥舟のようなものだ」とも発言したということです。
 高校の調査に対して、この教諭は「いさぎよしとしない」という言葉の使い方を説明する際、立憲民主党に言及したことを認め、謝罪しているということです。
 「不適切と、とられるような発言があったとしたらですね、非常に遺憾でありますし、その事実について重く受け止めております」(埼玉県立浦和北高校 伊藤治也 校長)
 県の教育委員会は「政治的中立を確保するよう指導を行っているが、不適切な発言があったことについて誠に遺憾に思います」とコメントしています。

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3175612.htm

選挙権を持つ高校生もいるし、まもなく衆院選という状況で、この発言はどうかとは思う。
逆に言えば、選挙権を持たない年齢の生徒に対して選挙間際でもない時期に言う分には、咎めるほどの内容とは思わない。
でもこういうご注進文化を作ったのって、産経や自民党ネトウヨらなんだよね。自民党が大々的に密告奨励してたのは割と最近のことだし。

あと「不適切と、とられるような発言があったとしたらですね、非常に遺憾でありますし、その事実について重く受け止めております」という言い回しは良くない。事実だとわかってるなら「あったとしたら」なんて言い方は不要。逆に事実かどうかわかっていないなら、調査する旨と事実だった場合の処置について言及するべきだと思う。


発狂ジャパン、歴史戦でまた敗北

本エントリータイトル前半は、ワシントンポスト記事の「San Francisco's 'comfort woman' statue: Why Japan is so mad」から。
このタイトルは今は修正されて「Why Japan is losing its battle against statues of colonial-era ‘comfort women’」となっています。それが本エントリータイトル後半部分に反映。
Why Japan is losing its battle against statues of colonial-era ‘comfort women’

産経新聞と維新・吉村大阪市長は発狂中です。サンフランシスコのリー市長は「WHY! Japanese People!」(CV:厚切りジェイソン)くらいの勢いで困惑してそうです。

「僕の中ではありえない」(吉村大阪市長)とか知るか、って感じだろうな。

慰安婦像設置 米サンフランシスコ市へ公開書簡 大阪市長

10/4(水) 22:39配信 産経新聞
 大阪市姉妹都市の米サンフランシスコ市で中国系の民間団体が慰安婦像と碑文を設置した私有地について、吉村洋文大阪市長は4日、サ市に寄贈を受けないよう求める公開書簡を9月29日付で送り、返信を受け取ったと発表した。サ市が寄贈を受ければ市有地に像と碑文が設置されることになるが、エドウィン・E・リー市長は10月2日付の返信書簡で「地域に応えるのが私の責務」と寄贈を受ける可能性に言及した。
 これを受け、吉村市長は4日、「サ市として像と碑文を受け入れるのなら姉妹都市を解消する」と改めて表明。「リー市長の思いは像と碑文を市有地に設置しても姉妹都市の関係を続けていこうという趣旨かもしれないが、僕の中ではありえない」と強調した。
 像と碑文は中国系民間団体が9月22日にサ市内の私有地に設置し、サ市議会もこの日を「慰安婦の日」とする決議をした。碑文は慰安婦を「性奴隷」と表記。「ほとんどが戦時中の捕らわれの身のまま亡くなった」などと日本政府の見解と異なる主張が一方的に書かれている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171004-00000566-san-pol

ところで従軍慰安婦に対する「日本政府の見解」とは一体何なんですかね?
人身売買され、日本軍相手の売春を強要された性暴力被害者は「性奴隷」とは違うんですか?まあ、日本人にとっては売春強要は性暴力でも何でもないのかも知れませんね。安倍を何度も首相にするような社会ですし。

碑の実際の記載はこんな感じ。

The San Francisco memorial depicts three women holding hands standing in a circle on top of a cylinder. The inscription is expected to be published in five languages — English, Korean, Chinese, Japanese and Tagalog — and is expected to read:


“This monument bears witness to the suffering of hundreds of thousands of women and girls, euphemistically called “Comfort Women”, who were sexually enslaved by the Japanese Imperial Armed Forces in thirteen Asia-Pacific countries from 1931 to 1945. Most of these women died during their wartime captivity. The dark history was hidden for decades until the 1990s when the survivors courageously broke their silence. They helped move the world to declare that sexual violence as a strategy of war is a crime against humanity for which governments must be held accountable.

This memorial is dedicated to the memory of these women, and to eradicating sexual violence and sex trafficking throughout the world.”

(日本語)
この記念碑は、一九三一年から一九四五年まで日本軍によって性奴隷にされ、「慰安婦」と呼ばれたアジア太平洋地域十三ヵ国にわたった何十万人の女性と少女の苦しみを表しています。その女性たちの大多数は、戦時中囚われの身のまま命を落としました。この暗い歴史は、生存者が勇敢に沈黙を破った一九九〇年代まで、何十年も隠されていました。生存者たちの証言が世界を動かした結果、戦争手段としての性暴力が人道に対する罪であり、加害国の政府が責任を負わなければならないと国際社会が宣言することとなりました。

この記念碑は、これらの女性たちの記憶のために捧げられており、世界中での性暴力や性的人身売買を根絶するために建てられたものです。

f:id:scopedog:20171006022718j:plain
A mock up of the plaque that is expected to be installed on a San Francisco memorial to World War II-era "comfort women."

https://www.nbcnews.com/news/asian-america/san-francisco-install-statue-honoring-world-war-ii-era-comfort-n803621

そりゃまあ大阪市は、性暴力や性的人身売買を根絶する気なんてさらさら無いんでしょうけどね。

で、大阪市はサンフランシスコ市に対して、三度目の脅迫状を送ったと。

 吉村市長は2月以降、サ市が寄贈を受けないよう検討を求める公開書簡を2度にわたり送付。9月25日に「姉妹都市の解消」に言及していた。3度目となる今回の書簡でも「思慮深い対応」を求め、サ市が寄贈を受けるなら「姉妹都市関係を根本から見直さざるを得ない」と記した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171004-00000566-san-pol

まあ、端的に言って姉妹都市関係を人質にした脅迫状ですよね。

リー市長の返信が正論過ぎる

 返信書簡で、リー市長は「大きな落胆」を表明。姉妹都市の目的は「政府の干渉を排除した上で多様な文化と市民をひとつにまとめることだ」と強調し、今年で60周年を迎えた姉妹都市関係の継続を訴えている。像と碑文の寄贈受け入れの可否については直接的な言及を避けたが、市長として「たとえ批判にさらされることがあろうとも、地域に応えていく」と記した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171004-00000566-san-pol

姉妹都市の目的は「政府の干渉を排除した上で多様な文化と市民をひとつにまとめることだ」と強調」できる大都市の首長がいる国は大したものだと感心します。まあ、それで何で、あんな大統領を選ぶんだか、とかも思いますけどね。

産経式歴史戦が逆効果になってることを報じるワシントンポスト

「歴史戦で敗北し続ける日本」と題した記事には、適切な指摘がいくつもあります。

Why Japan is losing its battle against statues of colonial-era ‘comfort women’

(略)

Modern-day problems

Ironically, Tokyo's anger about the statues might have aided their spread. “My sense is that the [Japanese government's] fixation on the statue increased its significance to activists,” said Celeste Arrington, a professor of international affairs at George Washington University.
(略)
“It may be 2017, but Japan is still fighting to deny and erase this egregious war crime and basically waiting for all the “Comfort Women” to die, so they don’t need to acknowledge the government’s responsibility,” Lillian Sing and Julie Tang, two retired judges who are chairs of the Comfort Women Justice Coalition (CWJC), which organized the installation of the statue, said in a statement.
(略)
In recent years, the Japanese government has promoted the idea of “cool Japan” in a bid for nonmilitary, soft power overseas. But the grass-roots movement to install comfort-women statues undermines that effort, reminding the world of some of the darkest moments in Japanese military history.
“They have a strong sensitivity to how Japan is seen in the world. They see this as tarnishing Japan,” said Jennifer Lind, author of “Sorry States: Apologies in International Politics.” "[But] the more they try and squelch this? That's actually what ends up tarnishing Japan.”

https://www.washingtonpost.com/news/worldviews/wp/2017/09/21/why-japan-is-losing-its-battle-against-statues-of-colonial-era-comfort-women/

日本政府が慰安婦像に発狂する度に像を設置することの重要性を高めていくこと、撤去を試みれば試みるほど、逆に日本のイメージが損なわれていくことを指摘しています。そして、日本の動きを、戦争犯罪を否定し記憶から抹消するための戦いであり、慰安婦問題については元慰安婦が死に絶えるまで時間を稼いでいるのだという運動側の声を載せています。

日本のメディアでこういう視点で報じるところは、今はもう無くなってしまいましたねぇ・・・。




雑感

希望の党の失速は、エスポワール小池による露骨なリベラル排除が一般有権者の反感を買った点とリベラル側からの反撃に自民党や自民支持勢力による小池攻撃が相乗した点が大きいように思える。極右的傾向が知られたことも影響あるにはあるだろうけど、それよりも前者の影響が大きいと思う。

立憲民主党の支持拡大は、理不尽な民進党解党とそれに伴うリベラル排除劇が一般有権者判官びいき感情を刺激した点が大きいと思う。むろん、リベラルの受け皿としての期待もあるだろうが、現在の追い風の要因を全て有権者の期待感によると考えると風向きの変化に対応できなくなるので危険。

自民党は、希望の党が政権を脅かすに至らないと認識し始めているので、ほどなく希望の党に対する攻撃は停止し立憲民主党に対する攻撃に切り替えると思う。当然、自民支持者も立憲民主党に対するネガキャンを主軸に据えるはず。“立憲主義憲法を制定すること”というデマの流布は、その第一撃と見るべき。

そんなこんなで立憲民主党、今は順調だけど油断せずに選挙に備えてほしい。支持者も敵を間違えないように気を付けてほしいところ*1
あと、参院民進党は安倍改憲を阻止する上で、重要な防衛線になってることも忘れるべきではない*2



*1:積極的に民進党から出て希望の党に行った連中はともかく、呑まれてしまった民進党議員は被害者的側面が強い。選挙後に希望から議員を引き抜くこともあり得ることを視野に入れておくべき

*2:現状の参議院改憲勢力は3分の2ギリギリで、自民だけで好き勝手やるのは難しい状況。参院民進党が瓦解し、改憲勢力を増やしてしまうと安倍にとっては改憲のハードルが大きく下がることになる。再来年の改選では自民党議席を減らす公算が高いので、それまで改憲を阻止できれば危機を脱する。

池田信夫にとって、1990年から2011年までの国会議事録を検索して山ほどひっかかる「立憲主義」という言葉は「聞き慣れない言葉」だったらしい

NHKにいて「立憲主義」という言葉が聞きなれなかったって、どんだけ不勉強なんだという話でしかありませんが。
まあ、平たく言えば、池田氏が嫌ってやまないリベラルを潰す行動に出たというだけの話でしょうから、真面目に取り合うだけバカバカしいのですけど、たかが池田信夫でも放置しておけば重大な人権侵害事案を引き起こす危険性があるということは、直近の事例による教訓でもありますからね。

「立憲主義」という欺瞞の終わり(2017年10月03日 06:10 池田 信夫)

その1

池田信夫の捏造は最初から全開です。

希望の党の公認を得られそうにない枝野幸男氏などの左派が「立憲民主党」を結成する。このネーミングは象徴的だ。彼らの最後のよりどころは「立憲主義」。左翼の衰退を象徴するスローガンである。戦後の「革新勢力」の最盛期には、憲法なんか争点になっていなかった。彼らのめざしたのは社会主義だった。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

再軍備が問題となった1950年代には既に護憲が争点になってたのは国会議事録を検索するだけでわかりますが?逆に「社会主義」なんか争点にすらなってません。

その2

それが冷戦の終了で使えなくなり、社会党土井たか子委員長のように「憲法を守れ」というだけの一国平和主義の党になったが、村山首相が自衛隊と安保条約を認め、そのコアもなくなって自滅した。それでも憲法改正に対する拒否感は国民に強かったので、2009年に民主党が政権を取ったときも憲法にはふれなかった。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

池田信夫は、社会党と言ったら土井たか子と村山元首相くらいしか知らないようです。それはともかく、上の2文の構成がめちゃくちゃです。池田説をそのまま解釈すると憲法が争点になったのは、冷戦が終結(1989年*1)してから村山首相が就任するまで*2のわずか5年足らず、ということになります。それがなぜか無くなったら「自滅」するほどの社会党「コア」だという認識もおかしいですよね。
「それでも憲法改正に対する拒否感は国民に強かったので、2009年に民主党が政権を取ったときも憲法にはふれなかった」というのも意味不明です。憲法改正を掲げていた自民党が結党以来50年以上も憲法に触れなかったことには何故か触れず、別に憲法改正を掲げてもいない民主党が政権に就いたときの話をするのは何なんでしょう?

そしてそもそも、民主党は政権を取った2009年のマニフェスト憲法に触れています。

国民の自由闊達な憲法論議
憲法とは公権力の行使を制限するために主権者が定める根本規範である」というのが近代立憲主義における憲法の定義です。決して一時の内閣が、その目指すべき社会像やみずからの重視する伝統・価値をうたったり、国民に道徳や義務を課すための規範ではありません。民主党は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という現行憲法の原理は国民の確信によりしっかりと支えられていると考えており、これらを大切にしながら、真に立憲主義を確立し「憲法は国民とともにある」という観点から、現行憲法に足らざる点があれば補い、改めるべき点があれば改めることを国民の皆さんに責任を持って提案していきます。民主党は2005年秋にまとめた「憲法提言」をもとに、今後も国民の皆さんとの自由闊達な憲法論議を各地で行ない、国民の多くの皆さんが改正を求め、かつ、国会内の広範かつ円満な合意形成ができる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討していきます。

http://archive.dpj.or.jp/special/manifesto2009/txt/manifesto2009.txt

「2009年に民主党が政権を取ったときも憲法にはふれなかった」というのは池田信夫のウソです。

その3

ところが2014年に安保法制が国会で審議されたころから、朝日新聞立憲主義という聞き慣れない言葉を使い始めた。これは具体的には1972年の集団的自衛権に関する内閣法制局見解を安倍首相が変えるのは「解釈改憲」で立憲主義に反するものだというのだが、法制局長官は首相の部下であり、内閣が行政を支配するのが立憲主義である。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

立憲主義」と言う言葉は、2011年以前から国会審議で何度も出てきますが、元NHK池田信夫には「聞き慣れない」んですか、そうですか。
「内閣が行政を支配するのが立憲主義である」というのも意味不明ですね。立憲主義の辞書的な意味は「憲法によって支配者の恣意的な権力を制限しようとする思想および制度」であって、内閣が勝手に憲法解釈して行政を支配することではありませんよ。*3
で、上でも引用した2009年の民主党マニフェストにも「真に立憲主義を確立し」と言ってますね。

その4

朝日も自衛隊を認めたので「憲法9条を守れ」とはいいにくくなり、今度は解釈改憲に反対して立憲か非立憲かという防衛線を張ったのだが、これはわかりにくい。野党も最初は歩み寄り、2014年の閣議決定はそれほど大きな騒ぎにはならなかった。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

わかりにくいのは池田信夫の頭の程度がお粗末なせいであって、安倍の解釈改憲立憲主義に反するなんて極めてわかりやすい話ですよ。
あと「2014年の閣議決定はそれほど大きな騒ぎにはならなかった」というのも嘘で、閣議決定当時にはかなり大規模なデモが起きています。
【集団的自衛権】官邸前で抗議デモ 閣議決定反対で深夜まで(動画・画像)( 2014年06月30日 23時26分 JST | 更新 2014年07月01日 00時10分 JST)
そもそも池田信夫本人が2014年当時に「国会で集団的自衛権がもめています」*4と言ってるんですよね。安倍晋三同様の二枚舌という他ありません。

その5

ところが2015年の憲法審査会で、自民党側の参考人として出席した長谷部恭男氏が「安保法制は憲法違反だ」と言ったため、安保関連法案が国会の争点になり、「強行採決」などの騒ぎになった。前年の閣議決定は認めたのに関連法案が憲法違反だというのは辻褄が合わないが、民主党はこれで内閣が倒せると思ったようだ。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

これもデタラメ。長谷部恭男氏が国会に出たのは2015年6月4日、安倍政権の戦争法案は前月に閣議決定され、その時点で既に違憲だという指摘があり国会の争点になっていました。だからこそ、6月4日に民主党参考人として小林節氏を推薦したわけです。2015年6月4日の憲法審査会が重要な転機になったのは、民主党推薦の小林氏、維新の党推薦の笹田栄司氏だけでなく、ほかならぬ自民党が推薦した長谷部氏でさえ自民党の戦争法案を違憲だと指摘したからです。
「前年の閣議決定は認めたのに」と言うのもウソで、民主党は2014年11月24日に、集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を要求する公約を発表しています*5

その6

ところが朝鮮半島で不穏な動きが出始め、野党も日米同盟を否定するわけには行かないので、立憲主義という手続き論しかいえない。今まで政治の表舞台には出なかった憲法学者が、にわかに反政府運動の主役になって「閣議決定はクーデターだ」といった倒錯した論理を展開した。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

憲法に違反する閣議決定を強行するのは行政府によるクーデターですから論理的に筋道が通っています。建前上であれ、日本は国民主権の国であり、政府権力は憲法によって制約を受けるわけですから。
立憲主義が「手続き論」と言うのも意味不明。池田信夫立憲主義を全く理解できていません。
政府法案を違憲だと指摘したら「反政府運動」だと決めつける池田信夫の思考回路も異常です。政府のやることを一切チェックするなと言わんばかりです。

その7

――こういう脱線の連続で、立憲主義という無内容な言葉が左翼の最後の抵抗線になったが、これは民進党にとっては党内を分断する線だった。彼らの支持基盤はマスコミしかないので、護憲派がマスコミの多数派である限り、国会では立憲主義で戦うしかないが、そんな憲法論争では政権はとれない。民進党がこのジレンマを脱却するには、今回のようなギャンブルしかなかったともいえる。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

脱線しているのは池田信夫の脳みそだけです。池田信夫の脳内では立憲主義を掲げているのは「左翼」だけのようですが、だとすれば日本は憲法すら守らない無法な権力によって支配されていることにしかなりませんよね。民進党の「支持基盤はマスコミしかない」とかも頭おかしいとしか思えません。前身の民主党政権がどれほどマスコミに叩かれたか、野党に転落した後も、産経や池田信夫のような連中にどれほど誹謗中傷されたか。

その8

平和憲法は戦後日本の「表の国体」だが、緊迫する国際情勢のもとで、日米同盟という「裏の国体」が表に出てきた。立憲主義はその矛盾をおおい隠す「イチジクの葉」だった。立憲民主党は玉砕してすきま政党になるだろうが、これで戦後ずっと続いてきた左翼の欺瞞が終わるのは悪いことではない。真の政策論争は、そこから始まる。

http://agora-web.jp/archives/2028676.html

平和憲法は戦後日本の「表の国体」」というのは池田信夫の本音でしょうね。日本が掲げる平和主義なんて見せかけだけのウソであって、本性は軍事同盟万歳で戦争したくてしょうがない、人を殺したくてしょうがない殺人鬼だと、そう池田信夫は思っているようです。

まとめ

しかし、この池田信夫の記事、全編にわたって嘘ばかり、一行ごとに事実に反することが書かれているような状態です。
嘘の上に嘘を何度も積み重ねて、それを理由に他者を侮辱・罵倒する、これほどの【自主規制】野郎は、自民党産経新聞以外にはそうはいないでしょう。あ、維新にもいたか。



Q:なぜ、小池希望とは連携できないか? A:安倍を倒しても安倍のやってた政治を小池が引き継ぐだけでは意味が無いから

そもそも何故「安倍ヤメロ」と主張しているのかと言えば、安倍政権が立憲主義を無視した暴政を行っているからです。

ですから、安倍を倒しても、その後釜に座る者が立憲主義を無視した暴政を続けるのであれば意味がありません。
逆に、安倍首相が自らの誤りと傲慢に気づき、反省して、立憲主義に則った善政を行うのであれば、「安倍ヤメロ」という主張を取り下げて安倍政権が続くことを容認しても構わないわけです。
ただ、現実的に後者はありえませんので、考慮の外において構いません。

問題は小池希望です。
仮に野党が連携して首尾よく安倍政権を過半数割れに追い込んだとしましょう。その後、小池は首相となって安倍政権のこれまでの誤りを正すでしょうか?改憲容認、戦争法賛成と現時点で表明しているのにするわけがありませんね。
これが小池希望とは連携できない大きな理由です。

それ以外にも、実際問題として希望・民進・維新・自由・社民・共産が全て協力しても、自民・公明を過半数割れに追い込めるかというと可能性はかなり低いと言う問題点があります。この割の悪い賭けに乗るには、それなりのリターンが期待できないと無理です。少なくとも、エスポワール小池氏個人による改憲反対と戦争法廃棄の確約とその希望の公約への反映くらいは無いと、賭けに乗る意味がありません。でもそれにはエスポワール小池氏が応じない。
だから連携できないわけです。