アジア太平洋戦争が日本による侵略戦争であったと明言しないことの「ある種の意図」

首相「日本が侵略しなかったと言ったことはない」
産経新聞 5月15日(水)17時38分配信

 安倍晋三首相は15日の参院予算委員会で、第2次世界大戦における「侵略」の定義に関し「私は日本が侵略しなかったと言ったことは一度もない」と述べた。
 その上で、「ここ(国会)で議論すれば外交、政治問題に発展していく。行政府の長、権力を持つ者として歴史に謙虚でなければならない。歴史認識に踏み込むことは抑制すべきだ。歴史家に任せるべき問題だ」とし、侵略の定義づけはしない考えを改めて強調した。
 首相は4月23日の参院予算委で「侵略の定義は定まっていない。国と国との関係で、どちらから見るかで違う」と答弁していた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130515-00000572-san-pol

安倍首相、侵略否定していない 対中国「痛惜の念」2013年5月15日
 安倍晋三首相は15日の参院予算委員会で、第2次世界大戦を含めた過去の中国との関係について「大きな被害、苦しみを与えたことに対して、われわれは痛惜の念を持っている。日本が侵略しなかったと言ったことは今まで一度もない」と明言した。
 首相の歴史認識をめぐる一連の発言に中国、韓国が反発している上に、米国内にも疑問の声が上がっており、収拾を図る発言とみられる。
 首相は「ここで議論すれば外交、政治問題に発展する。行政府の長として、歴史認識に踏み込むことは抑制すべきだと考える。歴史家に任せるべきだ」と強調した。
 民主党小川敏夫氏への答弁。
共同通信

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-206602-storytopic-3.html

2つの記事を見る限り、安倍首相は「日本が侵略しなかったと言ったことは今まで一度もない」とは言っていますが、アジア太平洋戦争が侵略戦争であったとは言っていません。
侵略でない、とは言っていないが、侵略であるとも言っていないわけです。

それを踏まえると、4月23日の「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う」(4月23日、参院予算委)*1という発言に、安倍首相の「ある種の意図を感じざるを得ない」でしょう。


潜水艦が接続水域を潜航して通過するのは国際法上は問題がないにも関わらず、安倍首相は勝手に「ある種の意図を感じざるを得ない」と言っています。

ある種の意図…首相、潜水艦の接続水域通過に
読売新聞 5月14日(火)21時50分配信

 安倍首相は14日、参院予算委員会の集中審議で、沖縄県久米島の接続水域を12〜13日に中国海軍所属の可能性が高い潜水艦が潜水したまま通過したことについて、「国籍は申し上げないが、こうした行為は二度と行わないように認識していただかなければならない」と強調した。
 首相は「2日にも(潜水艦が)接続水域に入っており、意図せずに航行したこともあり得た。だが、10日後にも入った。ある種の意図を感じざるを得ない」と述べ、故意に通過したとの見方を示した。首相は「潜水したまま領海に入れば、海上警備行動を通常、発動していくことに当然なる」と述べた。
.最終更新:5月14日(火)21時50分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130514-00001103-yom-pol

安倍首相の「日本が侵略しなかったと言ったことはない」のは事実かもしれませんが、「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない。」という発言に安倍氏の「ある種の意図を感じ」るのもまた当然でしょう。

アジア太平洋戦争は日本による侵略戦争であることは周知の事実です。にもかかわらず、「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と日本国首相が公言すれば、安倍首相はアジア太平洋戦争を日本による侵略戦争ではないと否定しようと意図している、と「感じざるを得」ません*2

*1:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-12/2013051203_01_1.html

*2:もちろん、このやりとりだけでなく、安倍晋三氏のこれまでの言動が充分に考慮すればこそ余計に安倍氏の「ある種の意図を感じ」るわけです。