百地章氏も西修氏も徴兵制が違憲とは言ってなかったよなぁ。

この件。
なぜ「誤報」扱いで、毎日新聞が謝罪するのかよくわかりません。

安保法案「合憲」学者は「徴兵制も合憲」と誤解 毎日新聞がおわび

楊井人文 | 日本報道検証機構代表・弁護士
2015年8月10日 17時26分
【GoHooレポート8月10日】毎日新聞は8月2日付朝刊の社説「視点 安保転換を問う 徴兵制/解釈改憲が広げる不安」の中で、「集団的自衛権の行使容認は合憲と言う西修・駒沢大名誉教授や百地章・日本大教授は、徴兵制も合憲との考えを示す」と記したのは誤りだったとして、おわび記事を掲載した(詳細はGoHooサイトも参照)。
おわび記事では、両氏が、徴兵制について憲法18条が禁止する「意に反する苦役」に該当するとの政府解釈に疑問や反対の考えを示していることから、徴兵制の合憲論に立っていると誤解したと説明。「当方の思い込みと事実確認の基本動作を欠いたことにより、ご迷惑をおかけしました」と陳謝した。毎日新聞は時々、論説委員個人の署名入りの社説「視点」を掲載しており、今回の社説は佐藤千矢子論説委員の署名入りだった。記事は毎日新聞のニュースサイトにも掲載されていたが、こちらはおわびや訂正の記載はなく、上書き修正されていた。
西教授は6月22日の衆議院の委員会で参考人として陳述した際、徴兵制に関する自身の立場は「無用論、不要論、非現実論」であると説明。民主党内の旧民社党議員を中心とした「創憲会議」の憲法改正案(2005年10月公表)が明文で徴兵制の禁止規定を置いていることに言及し、「これが私の現在の徴兵制論であります」と明言していた。
他方、百地教授も6月19日の日本記者クラブの記者会見で、「現在の憲法下で徴兵制は憲法違反であり、将来も考えていない。解釈変更も当然、憲法の枠を超え、これはあり得ない」と述べていた(両氏の発言詳細はGoHooに掲載)。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/20150810-00048358/

「両氏が、徴兵制について憲法18条が禁止する「意に反する苦役」に該当するとの政府解釈に疑問や反対の考えを示している」のは間違いないわけですから、「現在の憲法下で徴兵制は憲法違反」(百地章)と主張するなら、憲法のどの条文に徴兵制は違反するのか明言しなければいけません。

そこで百地氏は言うに事欠いて、9条を持ってきています。

9条は戦力を持たないとしておるわけでありますし、その下で徴兵ということはあり得ないと。だから現在の憲法の下で、徴兵制は憲法違反であり、将来も考えておりません。また解釈変更というのは、当然、憲法の枠を超えますから、これはあり得ないということです。

http://gohoo.org/150801002/

それも憲法9条が徴兵を禁止しているという主張ではなく、憲法9条の下で「戦力を持たない」から「徴兵ということはあり得ない」と言っているだけです。このロジックは自衛隊は何なのか、という話になりますし、また「戦力を持たない」なら集団的自衛権の行使だってありえないはずで、「集団的自衛権の行使容認は合憲」だという百地氏の主張に矛盾します。

百地説A:憲法9条下では「戦力を持たない」→徴兵はありえない→徴兵制は憲法違反
百地説B:憲法9条下では「戦力を持たない」→集団的自衛権行使は(なぜか)ありえる→集団的自衛権行使は合憲

なんだこりゃ、って感じですね。
そもそも、百地氏は以前から憲法9条が徴兵を禁止しているという主張をしていたのかどうか疑問です。お仲間の安倍政権が追及されないように2015年6月になってから後付で言及したようにしか見えません。産経や読売など政権側メディアの誤報に甘い日本報道検証機構も、少なくとも集団的自衛権行使容認以前に百地氏が憲法9条が徴兵を禁止していたという根拠を見い出していないようです。

西修氏の場合

西修氏に至っては、徴兵制が違憲だとも言ってませんね。

私は、今の徴兵制というのは、無用論、不要論、非現実論。
(略)
私の考え方が一番出ているのは、創憲案というのがあります。旧民社党の人たちの創憲案。その創憲案の第三条にはっきり書いてあります。兵役はこれを認めない、徴兵制はこれを認めない、これが私の現在の徴兵制論であります。

http://gohoo.org/150801002/

「無用論、不要論、非現実論」というのは、憲法違反だという話ではありませんね。
それどころか「民主党内の旧民社党議員を中心とした「創憲会議」の憲法改正案(2005年10月公表)が明文で徴兵制の禁止規定を置いていることに言及し、「これが私の現在の徴兵制論であります」と明言」というのは、要するに現行憲法では徴兵制が禁止されていない、という認識があるわけですから、「徴兵制も合憲」だと報じた毎日新聞の報道は正しかったとしか言いようがありません。


まあ、実際のところ、安倍政権から毎日新聞の上層部を経た圧力があったんじゃないかな、と思える「お詫び」で、それをただ「誤報誤報だ」と囃し立ててるGohooの感覚もかなり異常というか、政権寄りですねぇ。