安倍政権の下僕である右翼憲法学者・百地章氏の件。
集団的自衛権を行使容認する安倍政権の戦争法案が憲法違反ではない、と主張する一方で、徴兵制は“憲法違反”だと主張する百地章氏ですが、その理路を確認してみましょう。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150818-00000001-voice-pol急がれる「安保関連法案」の成立〜憲法学者の変節と無責任を問う〔2〕/百地章(日本大学教授)
PHP Biz Online 衆知(Voice) 8月18日(火)9時27分配信
◆日本国憲法には禁止規定なし
このように、集団的自衛権は国連憲章によってすべての主権国家に認められた「固有の権利」であるが、憲法で集団的自衛権の行使を「禁止」したり「制約」することは可能である。また、国連加盟に当たって、集団的自衛権の行使について何らかの「留保」をなすこともできる。
しかしながら、日本国憲法の憲法9条1、2項をみても、集団的自衛権の行使を「禁止」したり直接「制約」したりする明文の規定は見当たらない。つまり、集団的自衛権の行使を「憲法違反」とする明示的規定は存在しない。また、わが国が国連加盟に当たって集団的自衛権の行使を「留保」したなどという事実もない。それゆえ、わが国が他の加盟国と同様、国連憲章に従って集団的自衛権を「行使」しうることは当然のことであって、憲法違反ではない。
要するに、日本は集団的自衛権行使を国連憲章によって「留保」されてもいないし、日本国憲法上「集団的自衛権の行使を「憲法違反」とする明示的規定は存在しない」のだから、「憲法違反ではない。」という主張です。
この理路を徴兵制に当てはめると、日本は徴兵制を国連憲章他の国際法で禁止されてもいませんし、日本国憲法上にも徴兵制を「「憲法違反」とする明示的規定は存在し」ません。百地理論によれば、徴兵制は当然に合憲だと判断されるはずですね。
「憲法および国際法の常識に従えば、わが国が従来の政府見解を変更して」徴兵制の実施「を認めても、憲法違反ということにはならない。」というのが、百地理論なわけですから。
実際、百地氏は徴兵制が違憲であることの通説的根拠とされる憲法18条について、参議院憲法審査会で次のように述べています。
百地 章
http://www.kenpoushinsa.sangiin.go.jp/kenpou/houkokusyo/hatugen/03_06_04.html
徴兵が意に反する苦役であれば自衛官のやっていることは苦役なのかということになり自衛官に対する冒涜である。意に反する苦役に該当するから徴兵制はできないという議論には反対
少なくとも百地説では、徴兵制は憲法18条に抵触しない、ということになり、文脈上普通に読めば、百地氏は徴兵制は憲法違反ではない、つまり合憲だと主張しているに等しいわけです。百地説に触れてきた多くの読者も、百地氏は徴兵制は合憲だと主張していると思ったはずです。
ところが、戦争法案は合憲だと主張した百地氏が徴兵制も合憲だと主張していることが報道で暴露されると、安倍政権の戦争法案への後ろ弾丸になると考えたのがいきなり素っ頓狂な主張を展開し始めます。
9条は戦力を持たないとしておるわけでありますし、その下で徴兵ということはあり得ないと。だから現在の憲法の下で、徴兵制は憲法違反であり、将来も考えておりません。また解釈変更というのは、当然、憲法の枠を超えますから、これはあり得ないということです。
http://gohoo.org/150801002/
徴兵制は憲法9条に違反するという新説を提唱し始めたわけです。
安倍政権の後ろ弾丸になることに百地氏は相当おびえたのか、id:kkamiyaさんによれば、直接毎日新聞に抗議し、辻元議員に対しても訴訟をちらつかせて恫喝しているようです*1
。
冒頭の繰り返しになりますが、日本国憲法上には徴兵制を「「憲法違反」とする明示的規定は存在し」ません。もちろん、憲法9条は「徴兵制」には一言も触れていません。憲法9条が戦力を否定しているから、当然に徴兵制も禁止されるというなら、同じ理屈で憲法9条が戦力を否定しているのだから海外での自衛隊による武力行使を認める集団的自衛権は憲法違反になるはずです。
百地説はここで論理破綻していますが、研究者としての良心*2より安倍政権への追従が優先されたということでしょうね。
ああ、ちなみに憲法9条が徴兵制を禁止しているとのたまった百地氏ですが、次のようにも述べています。
百地 不備だらけの現憲法を全面的に改正することこそ、私たちの悲願だと思っています。しかし、現実にそれが可能かと言えば、ほとんど不可能です。そこで、まず一点突破をするしかありません。その本丸は九条だと思います。
https://jinf.jp/news/archives/9484
おまけ・防衛庁所管の公益法人として設立された日本郷友連盟の主張
日本郷友連盟は、内外の情勢を明らかにし、国防思想の普及をはかり、英霊の慰霊・顕彰を行うとともに光栄ある歴史及び伝統を継承助長し、もってわが国の発展に寄与することを目的とする防衛庁所管の公益法人として、昭和31年10月以来活動を続けてきました。
http://www.goyuren.jp/
平成24年4月1日から、一般社団法人 日本郷友連盟として活動を継続しており、理念の具体化のために次の事業を行います。
という自民党に近い右翼団体があるのですが、これが2013年10月24日に主催した「安保フォーラム」関連で以下のような資料をアップしています。
http://www.ssrc.goyuren.jp/SSRC/higuchi/higuchi-18-20140102.pdf「国防の義務」と徴兵制について
国民の「国防の義務」を明示することと、政策上、徴兵制を採ることとは、まったく別問題である。
しかし、それが混同されることを恐れて、徴兵制を採らないことを憲法に盛り込もうとする動きや、義務より弱い訓示的規定として「責務」という概念を導入し、「国防の責務」とする考えがあるように報じられているが、国民の「国防の義務」の精神を根底から覆すものであり、本末転倒と言わざるを得ない。
「徴兵制」か「志願兵制」、あるいは両制度の併用などの選択は、当時の政策判断による。悠久の国の歴史を考えた場合、情勢の変化に応じていずれの選択も可能なよう、常に留保しておくのが賢明な態度であることを指摘しておかなければならない。
*1:http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20150810/1439227157#c
*2:そもそも百地氏にそんなものは無かったのかも知れませんが。