南京事件時の日本軍に朝鮮人はいなかったと思うが、中国人はいたかもしれない、という話

satophone氏の「南京大虐殺の主役は朝鮮人兵士だったと言う噂を検証しろと言う山田正行氏」に関する話をどっかで書いた気がしてたんですが、以下の記事の注釈で言及してました。

例3)「李氏朝鮮の暴虐と悪政」→「朝鮮人が残虐な証拠、南京虐殺朝鮮人がやった!」*1

1:ここまでの馬鹿はそうはいないと思うが、いることはいるんだよね。ちなみに南京事件のあった当時、朝鮮人は徴兵もされてないし、志願兵も募集されていない。旧大韓帝国軍からの継続として極一部の朝鮮人将校がいたに過ぎず、兵士としては日本人と結婚・養子縁組などして日本人戸籍に入った朝鮮系日本人がいたくらいだろう。いずれにしても日本軍全体から見て例外的な事例に過ぎない。

http://scopedog.hatenablog.com/entry/20081102/1225647411

注釈なので大して情報量も無かったですが、それ以上調べる価値も無いですねぇ。
まあ、軍属くらいなら朝鮮人もいたと思いますが、「南京大虐殺の主役」(山田正行氏)とは言えないでしょうし。

というわけで、この件はやはり箸にも棒にも掛からないという結論以外にありません。

ちょっと気になった件

この部分。

上記の記事に続いて、山田先生は、慰安婦日本兵の愛と死-知の頽廃9の補充 「高麗」兵のみならず「満州国軍」も「友軍」として)という記事を書いている。南京攻略戦に、「満州国軍」も「友軍」として参加したと言う発言をした人物を擁護した記事を書いた。そういう人物を持ち上げるのは、別に結構だが、南京攻略戦に満州国軍が参加したと言う事実はない。

http://satophone.wpblog.jp/?p=7173

中国側の資料では、于芷山旅、李春山旅、靖安軍の一個旅が上海事変から警備として参加し、南京事件にも関与したという記録が散見されます。顧祝同と何応欽とのやり取りで、羅店方面に500~600名の敵がいて「東北人」であったという記載や、営口や鳳城の于芷山部隊1万2000人が上海に到着したなどの記載はあるようです。また、日本軍第6師団長(南京事件当時)の谷寿夫が南京軍事法廷で、南京大虐殺をやったのは満州国軍だという弁解はしているようです。

日本側の記録では南京戦に満州国軍が参加していたという記載は知る範囲では無かったと思いますが、偽軍関連の記録は日本側でもあまり見かけなかったりしますから単純に知らないだけかもしれません。
参考:https://ja-jp.facebook.com/permalink.php?story_fbid=879377988754296&id=853180758040686

もちろん、かといって満州国軍が南京事件の主体だった可能性はほぼ皆無でしょうけどね*1




*1:理由としては、その存在自体が日本側の記録にほとんど見られず、南京攻略の主体となりうるレベルで参戦していたなら入城式にも参加したはずでしょうし、他の軍司令官・師団長あたりが日記や記録などで言及してても良さそうなものですが、そういったものも知る範囲ではありませんから。まして南京事件を否定したがっていた偕行社が、そういった証拠が存在するのなら見逃すとも思えませんし。

麻生政権という暗黒時代

民主党政権時代をやたらと低評価する人が多いわけですが、そもそも民主党政権以前の自民党政権、小泉・安倍・福田・麻生政権時代があまりにもひどかったから支持を失い政権交代になったということを理解しているのか、そこから怪しい人ばかりなんですよね。
よくよく考えてみれば、2000年から2009年までの政治状況を肌感覚で理解している人は若くても当時18歳くらいが下限でしょうから、2017年現在は、26~35歳以上のはずです。それより若い世代が、“民主党政権時代がいかにひどかったか”と主張したところで、“でも君らはそれ以前のもっとひどい時代を知らないよね?”という思いがあったりします。

日経平均株価

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安倍政権末期くらいから下がり始め、福田政権では明らかな下降を起こし、麻生政権で大暴落しています。その後、多少回復したところで、民主党政権に移り民主党政権時代は大きな変動は起こりませんでした。
自民擁護派は“リーマンショックのせいだから仕方がない”という主張をしますが、民主党政権時代もリーマンショックの影響が続いていましたし、東日本大震災という大災害もありました。

完全失業率

f:id:scopedog:20171012232425p:plain

麻生政権時に完全失業率が急速に上昇し、民主党政権では減少傾向に移っています。

大卒求人倍率

f:id:scopedog:20171014011632p:plain
(引用:朝日新聞
大卒の求人倍率民主党政権時代に減少しています。ですが減少後の求人倍率小泉政権時代と同程度でした。
安倍・福田・麻生政権時代に求人倍率は増えていますが、リーマンショックで吹き飛んでいます。

支持率

f:id:scopedog:20171014013022p:plain

小泉政権の支持率は高いまま推移し、そのまま安倍政権に移行しました。大卒求人倍率は後の民主党政権と同程度です。
株価の下落は安倍・福田・麻生政権です。麻生政権で完全失業率が急上昇。政権支持率も20%程度にまで下がり、自民党民主党政党支持率が逆転し、ほどなく政権交代になるわけです。



民主党の政治家は街頭演説でヤジられても「こんな人たち」だとか「法律守れ」だとか「黙っておれ」だとか言わなかったと思うんだけど

この件。
首相、聴衆に「法律守って」 9条改正への抗議、「選挙妨害」の声に呼応(2017年10月13日05時00分)
ヤジに聴衆「選挙妨害するな!」そして拍手…「偏向報道」に抗議するプラカードも(10/14(土) 9:12配信)
二階氏、ヤジ続ける聴衆に「黙っておれ」 街頭演説中(明楽麻子2017年10月14日17時29分)
街頭演説での野次を選挙妨害だとか法律違反だとかいう指摘があるわけですが、民主党の政治家はもっとひどい野次をされても、権力で弾圧するかのような物言いはしてなかったと思うんですよね。
まあ、もちろん全部見たわけではありませんけども。

2012.11.16 民主党街頭演説 菅直人

街頭演説で"対案"について批判を浴びる民主小川敏夫

120919民主党代表選街頭演説(野田佳彦

関連:聴衆の「帰れ」コールに逆上した安倍晋三、最後まで丁寧に演説を続けた菅直人



民主党政権期(2012年)における就業者数の減少に関する総務省統計局の説明

失業率は重要な指標だとアベノミクス信者の誰かが言っていましたが、完全失業率民主党政権期から減少傾向だと指摘されると、民主党政権期の減少と安倍政権期の減少では質が違う、と言い出し、就業者数のグラフを出してくるというのは、見苦しいと思うんですよね。
だったら、最初から就業者数こそが重要な指標だと主張すれば良いわけですから。

就業者数の推移

松尾匡氏のサイトにこう書かれています。

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 これは民主党政権期と安倍政権期の対比が一層クリアです。リーマンショック後、民主党政権期は停滞しています。漸減し続けていると言ってもいい。それに対して、安倍政権期に入ると一転して増加しています。現在、さすがにまだ生産年齢人口(1995年がピーク)が今よりずっと多かった1997年の最高値には及んでいませんが、リーマンショック前の水準は超えており、この調子では遠からず史上最高値を記録しそうです。しつこいようですが、少子高齢化して生産年齢人口全体が減ったら、就業者数も減るのが自然です。なのに増えているということです。

http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__170403.html

松尾氏の上記記載は、アベノミクスを賞賛する文脈ではありますが、民主党政権期を悪し様に言ってるわけでもありません。ですが、このグラフを使って、アベノミクスを擁護し、民主党政権期を暗黒時代であったかのように語る論者は結構います。
例えば、片岡剛士氏はこういうことを言っています。

「2015年の日本経済と経済政策を振り返る」(片岡剛士 / 計量経済学

民主党政権時における完全失業率の改善(-1.1%pt)は、就業者数減少(+0.74%pt)、非労働力人口の増加(-1.62%)、15歳以上人口の減少(-0.22%pt)により生じたものである。いうなれば景気の悪化が進むことで就業者数が減り、非労働力人口が増えることで職を求める人々が労働市場から退出したことがこの時期の失業率改善の理由である。

https://synodos.jp/economy/15846

要するに民主党政権期の完全失業率低下は、「就業者数が減り、非労働力人口が増えること」が原因であり、景気の悪化を意味している、という説です。

しかし、この認識はそもそも正しいのでしょうか?
労働力調査を実施している総務省統計局は、2012年の就業者数についてこのような見解を示しています。

労働力調査の結果を見る際のポイント No.15

2012年の就業者数は、人口変動が減少に寄与

~人口変動と就業率~ 就業者数の対前年増減の要因分解
(略)

3.2012年の就業者数は、就業率上昇で35万人増加、人口変動で54万人減少

 以上のような人口変動と就業率の変化を踏まえ、就業者数の対前年増減を人口変動要因と就業率要因に分解すると、人口変動要因は、2000年までは増加に寄与していましたが、2001年以降は一貫して減少に寄与しています。就業率要因は、景気拡張期の2004~07年においては増加に寄与し、景気後退期に入った後の1998~99年、2001~02年及び2009年においては減少に寄与しています(ただし、その動きは景気変動にやや遅行して現れています。)。
 2012年平均の就業者数は前年に比べ19万人減少となりました。これは、就業率が上昇して就業者数の35万人増加に寄与した一方、高齢化や少子化などの人口変動が就業者数の54万人減少に寄与したことによるものといえます。
 2012年平均における要因をさらに分解すると、人口変動要因については、人口増減要因は15歳以上人口の減少が8万人減少に寄与しており、年齢構成変化要因は65歳以上人口の拡大が32万人減少(男性が17万人減少、女性が15万人減少)に寄与し、15~64歳人口もその縮小により男女とも減少に寄与しています。一方、就業率要因については、男女いずれの年齢層においても就業率は上昇して増加に寄与しており、特に15~64歳の女性が23万人増加に寄与しています。
(略)

http://www.stat.go.jp/data/roudou/pdf/point15.pdf

これはつまり、2012年の就業者数は確かに減少したけれども、その原因は人口変動による影響が大きく、人口変動を考慮した就業率については上昇している、ということです。
また、就業者数の対前年増減の要因分解の説明では、「就業率要因は、景気の拡張期は増加に、後退期は減少に寄与(ただし、やや遅行して)」と書かれています。

f:id:scopedog:20171014233525p:plain

http://www.stat.go.jp/data/roudou/pdf/point15.pdf

民主党政権期(2010年~2012年)において就業率要因はプラスであり、就業者数の漸減は人口変動という政策と無関係の要因によるということになりますし、もちろん民主党政権期における完全失業率の低下が景気の悪化によるものではない、ということになります。

ちなみに、2012年の就業率を押し上げた要因は15~64歳の女性の就業率上昇でした。これがものすごく寄与しているんですが、就業者で見るとマイナスになっています。それについて統計局は次のように説明しています。

f:id:scopedog:20171014234040p:plain
※5 2012年平均の15~64歳の女性の就業者数は、前年に比べ8万人減少していますが、それを大幅に上回る人口の減少(女性の15~64歳人口は前年に比べ52万人減少)があるために、就業率は上昇して、就業者数の対前年の増加に寄与する結果となっています(男性の方は15~64歳人口が前年に比べ50万人減少、就業者数も35万人減少と、女性よりも就業者数が大きく減少しています。)。

http://www.stat.go.jp/data/roudou/pdf/point15.pdf

ごく単純な話として、就業者数というのは人口変動の影響を当然に受けるわけですから、本来なら就業者数ではなく就業率をベースに話をするべきだと思うんですが、アベノミクスを特別視したい人にとっては、政権交代前後に変曲点が見いだせる就業者数のグラフというのはとても魅力的だったのでしょうね。




エスポワール小池が若狭を出し子にした第三極詐欺を始めた時点で、改憲勢力が衆院3分の2を確保することは確定だったので特に驚きはない

自身のボーダーラインを異常に低く設定するのは安倍氏の習性みたいなものですから、そこをクリアするかどうかは興味の範囲外です*1

希望の党は、みんなの党や維新の会の賞味期限が切れたのでカバーを付け替えただけの、非自民票を分散させるための自民党サポートの道具みたいなものです。
なので、細野議員らが蠢動している時点で野党共闘が崩され、非自民票が分散することは予想の範囲内です。
いい加減“第三極”詐欺に騙されるのはやめるべきでは? 」でも「次は“国民ファースト”という小池・維新+民進党分裂組の第三極ですかね。」と書いたとおりです。

ただ予想外だったのは、エスポワール小池氏が首相になることに色気を出して希望の党の代表になり、前原民進党を呑みこんだことです。それを構想した時点では、希望の党の支持率が最早第三極とは言えないレベルにまで盛り上がり、首相になれる芽が見えていたのでしょうね。エスポワール小池氏は、野党再編と称して安倍を追い落とす算段を立てていたと思います。
ただエスポワール小池氏にとって予想外だったのは、安倍自民支持層とリベラル層の双方からの反発の大きさだったと思います。それにより急速に希望の党の支持率がしぼみ、野党党首になる気のないエスポワール小池氏は早々に撤退、偽装野党の黒幕になることを選び、再び地下に潜ったわけですから。

ただ、このエスポワール小池の反乱は、民進党分断という大きな爪痕を残し、野党第一党が事実上消滅しました。民進党は結果的には希望の党立憲民主党、そして無所属という状態に分かれた訳で、単純に政党支持率から予測すれば野党第一党になるのは、希望の党です。そして希望の党は、それを率いるエスポワール小池氏の思想傾向から、安倍改憲に反対するわけがありません。
そうすると、自民党公明党希望の党衆院3分の2以上の議席数は確定的で覆しようがありません。

「与党300議席に迫る勢い」

与党300議席に迫る勢い 衆院選序盤情勢 自民、単独安定多数も 希望は選挙区で苦戦 (2017/10/11 23:00日本経済新聞 電子版)
自民堅調、希望伸びず立憲に勢い 朝日新聞情勢調査概況(2017年10月11日22時28分)

自民・公明で3分の2である310議席を超えるかどうかは微妙ですが希望の党を加えれば余裕です。自民単独で3分の2を超えた場合は、安倍政権にとって希望の党の協力は不要ですが、さすがにそこまで取れる見込みは少ないでしょう。公明党創価学会の手前、改憲に慎重な振りはしていますが、自民+希望で3分の2を確保できる状況であれば、安倍政権が公明党に遠慮する必要もありませんし、公明党も与党利権に塗れている以上、いざとなれば安倍に擦り寄るのは目に見えています。

立憲民主党共産党がいかに善戦したところで合わせて155議席以上取れる見込みはありませんので、改憲勢力による衆院3分の2阻止はとりあえず諦めるしかありません。ただ、改憲阻止の上で、重要な狙いどころはまだ2つあります。

狙いどころの1つ目・希望の党の遠心力に期待

希望の党衆院野党第一党にはなるでしょうが、代表が野党党首を嫌って逃げてしまっているので求心力に欠けます。衆院後の国会で代表質問に立つのが誰なのかわかりませんが、誰であってもエスポワール小池氏のパペットに過ぎませんので、まともな政権批判は期待できません。大連立が成立せず希望の党が野党のままであるなら早晩離脱する議員が出てくるでしょうから、それをリベラル側が取り込んで改憲勢力を削るというのが一つ。また、大連立となった場合でも、それを良しとしない議員が離脱する見込みがあります。
いずれにしても、小池独裁体制の希望の党がまともに結束し続ける可能性はかなり低いと思います。

狙いどころの2つ目・参院民進党の存在

実は改憲阻止については、これが結構大きい影響力を持ちます。

参院自民党125議席公明党24議席、維新の会11議席で三党合計で160議席*2、議長や無所属を含めて3分の2以上になるわけですが、ここにも創価学会の手前、改憲に慎重な振りをしなければならない公明党がいます。
一方、参院民進党は49議席を持っています。これが希望の党にそっくり丸呑みされてしまうと、安倍政権は衆院と同じく公明党に配慮する必要が無くなります。参院民進党は安倍改憲に反対する立場で組織を維持し続けることは、改憲阻止の上で重要な位置を占めるわけです。

その意味で小川敏夫参院議員の「<民進>参院で存続へ 小川会長「リベラル勢力を再結集」」という動きは極めて重要です。

公明党に“安倍改憲を阻止できる立場にありながら阻止しなかった”という悪名を甘受する度胸があるかどうか

すでに衆院参院ともに改憲勢力が3分の2を握っていますので、より悪質で過激な改憲派がこれ以上増えないようにするのが現状の目標になります。
公明党改憲勢力のうちでは穏健な方と言えるでしょうが、政権にしがみつくためなら憲法くらい簡単に売り払ってしまうのは、集団的自衛権行使容認の閣議決定(2014年)や戦争法強行採決(2015年)の時に証明済みですので大した期待はできません。
とは言え、公明党キャスティングボートを握っている場合に汚名を受ける覚悟があるかというと、それも無いでしょう。

ですので“公明党が反対すれば安倍改憲を阻止できる”と言う状況に留めておくことには意味があります。“公明党が反対しても安倍改憲を阻止できない”状況では公明党は簡単に改憲に賛同するでしょうから。


*1:自ら煽った国際関係の悪化を利用し、さらに野党が混乱している隙を狙った衆院解散で過半数割れするわけないしね。

*2:http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/194/giinsu.htm 2017/10/12閲覧

民主党政権と安倍政権で完全失業率の減少の質に差はない、というかむしろ安倍政権下ではアベノミクスと関係なく下駄履かされてたりする

前記事で、完全失業率の悪化は麻生政権時に生じ民主党政権期はほぼ一貫して失業率は低下していることを指摘しました。
実際、グラフ見れば一発でわかる話です。
f:id:scopedog:20171012232425p:plain

しかしそれに対して、こういう安倍擁護ブコメがつきました。

民主党政権の時代は、景気の悪化で就業者数が減り、非労働力人口が増えることで職を求める人々が労働市場から退出したことがこの時期の失業率改善の理由。素人談義に価値はない。 https://synodos.jp/economy/15846
benitomoro33のコメント2017/10/13 15:06

http://b.hatena.ne.jp/entry/346173028/comment/benitomoro33

↓のコメにもあるのだけど就業者数の推移をはっておくよ(https://goo.gl/S1Eyqw)。リーマンショックがまさにショックだったのは判ると思うけどその後の民主党政権時代には改善せず悪化した。安倍政権になってからと好対比。
the_sun_also_risesのコメント2017/10/13 16:32

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2017/10/13/080100

要するに民主党政権下での完全失業率の減少と安倍政権下での完全失業率の減少では、同じ減少幅でも質が違うという主張です。
彼らが根拠に挙げているのが、就業者数(と非労働力人口)です。
完全失業率は、労働力人口に占める完全失業者の割合で、労働力人口は就業者と完全失業者を足したものです。15歳以上人口から労働力人口を除いたものが非労働力人口になります。
つまり計算式上、非労働力人口だった人が就業者になった場合も完全失業者が就業を諦めて非労働力人口になった場合も完全失業率は低下するということになります。

安倍信者の主張は、民主党政権下での完全失業率の減少は後者であり、安倍政権下での完全失業率の減少は前者であるというもので、そのために就業者数の推移を示しているわけですね。

(引用元:世界経済のネタ帳)
f:id:scopedog:20171014001538p:plain

http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=LE&c1=JP&s=&e=

これを見ると確かに安倍政権下で就業者数が増えています。
ただこれは本来、15歳以上人口の推移を踏まえないと意味がありません。

で、それを考慮して、15歳以上人口に対する就業者数の割合を年齢階級別に見るとこうなります(就業者数は原数値を使用)。
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ほぼ全ての年齢階級において民主党政権期から一貫して就業者の割合が緩やかに増えていることがわかりますね。例外が55~64歳の年齢階級で、これは2013年から上昇傾向が強くなっています(理由は後述)。

もうひとつ、15歳以上人口に対する非労働力人口の割合を年齢階級別に見てみましょう(非労働力人口は原数値を使用)。
f:id:scopedog:20171014001549p:plainf:id:scopedog:20171014001545p:plain
これも同じく、55~64歳の年齢階級を除けば、民主党政権期から一貫して緩やかに減少していることが見てとれます。
つまり、15歳以上人口に対する就業者数や非労働力人口の割合は、55~64歳の年齢階級を除けば民主党政権期から安倍政権まで一貫して増加あるいは減少傾向をとっているわけです。

したがって、55~64歳の年齢階級以外では、就業者数や非労働力人口の観点で完全失業率の低下について民主党政権期と安倍政権期に質的な差は見受けられません。

55~64歳の年齢階級で就業者数が安倍政権になって増えた理由は、年金支給開始年齢の引き上げが2013年から開始されたから

55~64歳の年齢階級で2013年から15歳以上人口に対する就業者数や非労働力人口の割合の推移傾向が変わっていることについては、アベノミクスの影響というよりは、平成12年改正による年金支給開始年齢引き上げ(2013年度から12年かけて引き上げ実施)の影響と考えるべきだと思います。年金支給開始年齢が60歳から徐々に上がっていく以上、55~64歳の年齢階級で非労働力人口の割合が減り、就業者数の割合が増えるのは当たり前の話ですし*1

結果としては、15歳以上人口に対する就業者数や非労働力人口の割合の推移において、民主党政権期と安倍政権期に質的な差があるとは言いがたく、完全失業率の減少傾向についても当然、そこに差があるとは言えないという結論になります。

むしろ逆に2013年4月から年金支給年齢が60歳から61歳に引き伸ばされ以降3年ごとに1年ずつ引き伸ばされているため、就業者数は増加し非労働力人口が減少する効果がアベノミクスとは全く関係なく発生しています。この効果は、年金支給開始年齢の引き上げという2000年に決まった政策で定年後の再雇用も企業に義務付けているため、完全失業率を減少させる効果を持ちます。言ってみれば、アベノミクスはこの年金支給開始年齢の引き上げ政策に、完全失業率減少という点で下駄を履かされているに等しいわけです。
民主党政権はそのような下駄の無い状況で完全失業率を減少させ、安倍政権は年金支給開始年齢の引き上げという下駄を履いた状態で、さらにアベノミクスを行って民主党政権時代と同程度の完全失業率減少しか達成できていないわけですね。

「2015年の日本経済と経済政策を振り返る」(片岡剛士 / 計量経済学)記事に関する件

benitomoro33氏がドヤ顔で出してきた内容です。
片岡氏はこのように書いています。

民主党政権の時期の方が長いため、1カ月あたりでみた完全失業率の改善度合いは安倍政権の方が大きいが、完全失業率の改善ペースそのものには大差はない。
しかし、第二次安倍政権と民主党政権における完全失業率の改善要因はまったく異なる。図表4は完全失業率の差の要因分解を行い、第二次安倍政権と民主党政権とを比較したものだが、民主党政権時における完全失業率の改善(-1.1%pt)は、就業者数減少(+0.74%pt)、非労働力人口の増加(-1.62%)、15歳以上人口の減少(-0.22%pt)により生じたものである。いうなれば景気の悪化が進むことで就業者数が減り、非労働力人口が増えることで職を求める人々が労働市場から退出したことがこの時期の失業率改善の理由である。
一方で2012年12月以降の完全失業率の改善は、景気の改善が進むことで職を求める人々が新たに労働市場に参入することで非労働力人口が減り、就業者数が増えたことで生じているということだ。

https://synodos.jp/economy/15846

第二次安倍政権が始まった2013年から年金支給開始年齢が引き上げされ始め、おそらくはその結果として就業者数が増え非労働力人口が減ったわけで、これはアベノミクスとはほぼ無関係です。実際、2013年以降の就業者数割合の増加は55~64歳の年齢階級で顕著です。片岡氏はそこを見落としています。55~64歳の年齢階級を除外するなど、何らかの調整をしてから要因分析を行わないとその結果にはあまり意味がありません。

また、そもそも片岡氏の「景気の悪化が進むことで就業者数が減り、非労働力人口が増えることで職を求める人々が労働市場から退出したことがこの時期の失業率改善の理由」という解釈もおかしく、15歳以上人口に対する就業者数の割合で見れば2012年までも緩やかな増加傾向にあり、「景気の悪化が進むことで就業者数が減り」と言う部分が成立しません。
15歳以上人口に対する非労働力人口の割合も同じ、2012年までも特に増加したという傾向は見られません。
すなわち、「景気の悪化が進むことで」という前提に誤りがあると言う他ありません。

さらに「景気の悪化が進むことで就業者数が減り」や「景気の改善が進むことで職を求める人々が新たに労働市場に参入する」という推論も当然視していいか疑問です。景気と就業者数にどのような相関があり、因果をどのように示しているのか。少なくとも上で引用した就業者数の推移が景気に連動しているようには全く見えません。バブル崩壊後も就業者数は増えていますし、ITバブルの時期に就業者数が減ってもいます。
個人レベルで考えれば、景気が悪くなれば専業主婦が働きに出る動機になりますし、年金で暮らせない状態の高齢者も働かざるを得ません。
したがって就業者数や非労働力人口の推移だけで景気を判断することは出来ず、「民主党政権時における完全失業率の改善...は、...景気の悪化が進むことで就業者数が減り、非労働力人口が増えることで職を求める人々が労働市場から退出したことがこの時期の失業率改善の理由」だとか「2012年12月以降の完全失業率の改善は、景気の改善が進むことで職を求める人々が新たに労働市場に参入することで非労働力人口が減り、就業者数が増えたことで生じている」という片岡氏の判断は、少なくとも記事に示したデータからは言うことができず、言いすぎの感が強いと言わざるを得ません。

改めてブコメを見てみる

民主党政権の時代は、景気の悪化で就業者数が減り、非労働力人口が増えることで職を求める人々が労働市場から退出したことがこの時期の失業率改善の理由。素人談義に価値はない。 https://synodos.jp/economy/15846
benitomoro33のコメント2017/10/13 15:06

http://b.hatena.ne.jp/entry/346173028/comment/benitomoro33

民主政権下で就業者数の減少は15歳以上人口を年齢階級別に考慮すれば減少とは言えませんし、そもそも景気の悪化と就業者数は別に相関するものでもありません。非労働力人口も15歳以上人口を年齢階級別に考慮すれば民主党政権下で特に増えたわけでもありません。

↓のコメにもあるのだけど就業者数の推移をはっておくよ(https://goo.gl/S1Eyqw)。リーマンショックがまさにショックだったのは判ると思うけどその後の民主党政権時代には改善せず悪化した。安倍政権になってからと好対比。
the_sun_also_risesのコメント2017/10/13 16:32

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2017/10/13/080100

安倍政権で就業者数が増えたのは、年金支給開始年齢の引き上げが2013年から開始されたからです。年齢階級別の人口比を考慮すれば、民主党政権時代から就業者数は増加傾向にあり、非労働人口は減少傾向にあり、安倍政権になってからそれが大きく変わってわけでもありません。
民主党政権時代には改善せず悪化した。安倍政権になってからと好対比」等という感想は、年齢階級別の人口比と年金支給開始年齢の引き上げの効果を踏まえず、表面的な増減だけを見ているからに過ぎません。



完全失業率の悪化は麻生政権時に生じ、民主党政権期はほぼ一貫して失業率は低下している

ごく単純に言うなら、(1)麻生政権がリーマンショックに対応できず日本経済がボロボロになって完全失業率が急速に上昇し、その結果、自民党は政権を投げ出し、民主党政権が誕生、(2)麻生政権の負の遺産を引き継いだ民主党政権東日本大震災などの災害を受けながらも完全失業率を下げていったが、震災対応時も足を引っ張り続けた自民党の政局によって退陣、(3)安倍政権はアベノミクスと称する経済政策を行ったものの失業率の低下速度は民主党政権期と変わらず、と言う状態です。

はっきり言って、失業率に関しては、悪化したのは麻生政権期で民主党政権下ではほぼ一貫して低下しているんですよね。例外的なのが15~24歳の2012年4月頃の失業率の上昇ですが、これ明らかに東日本大震災の影響ですからねぇ。その後の第二次安倍政権でも劇的に減ったわけでもなく、民主党政権時代の低下傾向をほぼなぞっている状態です。
にもかかわらず、それ以前の自民党政権がいかに駄目だったかという話にはならず、民主党政権に対する恨みつらみばかりが膨らんでいるわけで端的に言って、認知の歪みというべきでしょう。

民主党政権時代は大変だったと聞いています」

地方の国立大3年の女子大生(21)も、今回自民党に投票するという。「政権交代以降、売り手市場になっていて、先輩たちの就活も安定している。失敗している人はあまり聞いたことがない」と語るなど、アベノミクスへの評価は高い。
実際、9月29日に発表された平成29年版厚生労働省労働経済の分析」によると、全ての年代で失業率は低下傾向にあるが、中でも15〜24歳の若年層の失業率は第2次安倍政権誕生以降、大きく低下している。
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総務省統計局「労働力調査」をもとにBusiness Insiderが作成

https://www.businessinsider.jp/post-105617

「15〜24歳の若年層の失業率は第2次安倍政権誕生以降、大きく低下している」という評価は示してくるグラフから読み取った結果としては違和感がありますね。15〜24歳の若年層の失業率は麻生政権期の最悪値から、民主党政権期に2%程度低下しており、第二次安倍政権期の低下分(2%)と比べて特に「大きく低下」したわけでもありません。

ではなぜ、若年層が民主党を忌避しているのでしょうか。
2017年現在「15〜24歳の若年層」にあたる層は、麻生政権(2009年)当時には、7~16歳でした。彼らにとって肌感覚で知っている政権は現在の安倍政権以外には民主党政権しかないと言っていい状況です。彼らのほとんどは麻生政権時代の経済の混乱を肌感覚として知らないわけです。
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(※月別データを参照しているため、細かい増減がありますが概ねの傾向はわかるでしょう。)
そして、第二次安倍政権が成立すると、安倍政権や御用メディアが“民主党政権時代はひどかった”というプロパガンダをはじめます*1。そして当の民主党自身は、内部の権力争いからそのプロパガンダに有効に対処するどころか、それを利用して執行部批判する有様でした。
こうした状況の中で、民主党政権時代は暗黒時代であったかのようなイメージが拡大されていきました。

民主党政権にも問題や課題があったことは確かですが、それが実態以上に脚色され、あるいはデマが付け加えられ、民主党政権に対する悪イメージが形成されていったわけです。

デマの事例としては、例えば「民主党政権時代に日経平均株価が7000円台に落ち込んだ」と言う都市伝説があります。
実際に日経平均株価が7000円台に落ち込んだのは麻生政権時代です。
民主党政権は、年間自殺者数を3000人以上も安倍政権より増やし」た、というデマもあります(高橋洋一氏によるデマです)。これも実際には民主党政権期を通じて一貫して自殺者数は減っています*2
民主党政権の対中外交・安保を批判する者もいます。ですが、スクランブル回数は第二次安倍政権以降で圧倒的に増えてます*3

ところが既に、デマや脚色の上にさらにデマが積み重なっている状況になっているため、“民主党政権時代は暗黒時代”だと信じ込んでいる人たちには個々の誤りを指摘しても無駄だったりします。麻生政権時代の経済の混乱を指摘されると、リーマンショックの影響だからと正当化しますが、民主党政権時代に生じた東日本大震災の経済への影響については考慮すらしない、そんな感じです。
震災対応について民主党を非難している人たちは、当時、参院過半数割れのねじれ国会になっており、野党自民党が何かにつけて反対していたことを知りません。震災対応の予算に対してすら自民党は妨害を繰り返し、民主党強行採決せざるを得なかったわけですが、そうすると今度は、民主党強行採決ばかりだと非難する有様です。
消費税増税については、2010年7月の参院選民主党自民党増税を訴えていた*4ことを考慮せず、消費増税の決定も2012年の民主党自民党公明党による三党合意で決まったことを無視しています。

民主党マニフェストに明示しなかった消費増税をやったことを批判する人もいますけど、2010年7月の参院選で消費増税を公約に掲げた自民党が勝っていることを何故か無視しています。2010年7月の参院選前後に消費増税に言及した菅首相に対して、自民党議員が自民党の公約を盗んだかのように主張までした*5こともありますが、それも都合よく無視されます。

40代~50代くらいになると、第一次安倍政権~福田政権~麻生政権時の混乱を覚えている人もいますし、小泉政権の“改革”に格差が開いたことを肌感覚で知っている人もいますから、若年層ほど安倍自民に夢を見たりはしないということでしょうね。

自民党内の擬似政権交代で良しとする有様

「本当は若者や弱者を重視したリベラルな政党に投票したい。けれど日本の野党は現実的な対案を示さず、無意味な揚げ足取りも多い。二大政党制ができるべきだと思うけど、現状では自民党内で"政権交代"した方が日本にとってはいい」(27歳男性会社員)

https://www.businessinsider.jp/post-105617

「日本の野党は現実的な対案を示さず」というのも野党が示している提案をどれほどを知ってるのか疑問です。例えば安倍政権が強行採決した違憲の戦争法に対して、民主党は海上警備法案という対案を出していました。ところがほとんど報道されないばかりか、当の民主党議員(細野氏)が“民主党は対案を示していない”と主張する始末でした。
単純に報道だけしか見ないと、政局絡みの話ばかりしかわからず、実際に野党がどんな提案をしているかは知ることが出来ません。

「無意味な揚げ足取り」とか言ってるのも、例えば山尾志桜里議員による「保育園落ちた、日本死ね」ブログの取り上げとかを指すのでしょうが、これメディアがその件ばかりを取り上げて報道していただけ*6で、実際にはデータを示して待機児童問題について具体的に何度も訴えているんですよね。報道しか見ていないと、まるで「保育園落ちた、日本死ね」ブログしか取り上げていないかのように思うかもしれませんが、国会議事録を読めば、それ以外に具体的な指摘・質疑が山ほどあることがわかるはずです。
でも、ほとんどの人は報道だけ見て、質疑内容はそれが全てだと思い込んでしまう。だから「日本の野党は現実的な対案を示さず、無意味な揚げ足取りも多い」とかいう知ったかぶりになってしまう。

その結果、「自民党内で"政権交代"した方が日本にとってはいい」なんて、民主主義の否定がまかり通ってしまう。有権者ではなく、自民党員という限られた、しかも思想傾向を共有する一部の人たちで決められる総裁を首相として良し、と考えること自体、民主主義の放棄に他なりませんが、それに疑問すら感じない。

党内の“政権交代”で民主主義を自認できるのなら、中国共産党に支配されている中華人民共和国だって民主主義になってしまいます。

自民党固執し続けて経済がボロボロになってから野党に政権を渡し、短期間で劇的に改善しなかったという理由で野党を否定し、自民党に回帰する、その繰り返し。

それを批判するのはたやすいが、「上の世代は一度政権交代して失敗したら戻せばいいと言うけど、私たち20代前半にとってはその数年が大きい」(21歳女子学生)の言葉は重い。

https://www.businessinsider.jp/post-105617

1980年代後半に自民党政権固執した結果、バブル崩壊による経済混乱を招き、2000年代後半にもやはり自民党政権固執した結果、リーマンショックによる経済混乱を招き、いずれの場合もその後に成立した非自民政権はその後始末からはじめざるを得ませんでした*7
しかし、自民党への盲従が何を生んだかを理解するには若すぎるかも知れませんねぇ。


*1:実質的には民主党政権時代からはじめていますけどね

*2:http://scopedog.hatenablog.com/entry/20150804/1438617739

*3:対中スクランブル件数は、2009年度38、2010年度96、2011年度156、2012年度306ですが、2013年度以降は、415、464、571、851 と増加の一途を辿っています。

*4:2010年の自民党公約は「消費税10%に引き上げ」でした。

*5:第174国会衆議院本会議 平成22年06月16日 赤澤亮正発言 http://scopedog.hatenablog.com/entry/20141120/1416499699

*6:まあ、それは安倍首相がアホな答弁した結果でもありますが

*7:麻生政権が強行採決した予算案では明らかに歳入が足りなくなるため、鳩山政権は補正予算赤字国債を発行せざるを得なかったのは象徴的。その時も産経新聞などは“民主党埋蔵金があると言ったくせに赤字国債を発行している”と散々叩いています。放漫な当初予算を強行採決した麻生政権に対しては一切批判していません。