台湾における少女像設置に過剰に台湾国内の政治的思惑を幻視する人たちについて

台湾に慰安婦問題を象徴する少女像が設置された件。
慰安婦 少女像 台湾で初設置 馬英九前総統「日本は謝罪を」(2018年8月14日 17時34分)

“台湾は親日”とか言ってる連中はこの情報を脳内で合理化するにあたって、“国民党だから”“選挙向けの政治活動だから”などのレッテルを貼っています。まあ、日本メディア自体がそういう認知に誘導していますね。

国民党はことし11月に控えた統一地方選挙をにらみ、東日本大震災以降から続く日本食品の輸入規制の継続を訴えるなど、与党 民進党の対日姿勢を批判することで党勢の回復を目指していて、今回の像の設置への協力にはこうした狙いもあるとみられます。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180814/k10011576461000.html

こんな感じで。

で、そうやって誘導された認知の歪みをこじらせるとこうなります。

孫向文@sun_koubun
台湾で初の慰安婦像設置に、台湾の政治に詳しくない日本人は「台湾に失望した」と嘆く声は全く誤解です。設置する人権団体は中共工作員で国民党はほぼ中共の傀儡です。つまり台湾政府とまったく関係ないです。
1:54 - 2018年8月14日

https://twitter.com/sun_koubun/status/1029290271853301761

それ以外にも“韓国から吹き込まれた説”を唱えだしたりする症状も。

謝罪「していない」と韓国筋に吹き込まれたんだろうな
fukkenのコメント2018/08/14 17:56

http://b.hatena.ne.jp/entry/369299819/comment/fukken

まあ“韓国から吹き込まれた説”も論外ですが、とりあえずそれは置いといて前者の「国民党はほぼ中共の傀儡」で「台湾政府とまったく関係ない」すなわち、台湾政府や台湾人は親日だが、中共工作員慰安婦像を作って煽動しているという、陰謀論について。

蔡英文発言(2016年1月)

民進党の野党時代それも次期選挙で政権交代が確実視されていた時期に蔡英文主席がこんな発言をしています。

台湾・自由時報など複数のメディアによると、国民党の選挙対策本部の主任委員を務める胡志強(フー・ジーチアン)氏は先日、慰安婦問題で日本との交渉が失敗している主因は台湾内部に共通認識がないためだと説明した。
これに対して蔡主席は、「民進党慰安婦問題での態度は一貫してはっきりしている。慰安婦は歴史の悲劇であり、民進党は積極的かつ強力に日本と交渉するよう主張してきた」とし、「これらは本来、政権がやるべきことで、現在まで進展がないことを野党のせいにするのは無責任。馬政権はすぐに対応に当たるべきで、選挙だからといって選挙操作に忙しく、何もしないのではいけない」と厳しく批判した。

https://www.recordchina.co.jp/b126502-s0-c10-d0035.html

慰安婦は歴史の悲劇であり、民進党は積極的かつ強力に日本と交渉するよう主張してきた」とのこと。そして「これらは本来、政権がやるべきこと」と言い、「馬政権はすぐに対応に当たるべき」と煽ってますね。
民進党にしても、慰安婦問題については日本に責任があること、交渉すべきであることを公式な立場にしていることは明白ですね。実際に本腰を入れているかというと疑問符が付くところはあるでしょうが、少なくとも台湾有権者の支持を踏まえると、慰安婦問題について日本を一切免責するような対応は取れないわけで、その辺の姿勢は韓国の保守政権と共通するところがあります。
まあ、民進党が公言しているほど慰安婦問題に関する対日交渉に積極的ではないにしても、馬国民党政権時代に決定した慰安婦記念館の設立*1を、政権交代後も「日本側に対して台湾の元慰安婦への正式な謝罪や賠償などを求める方針」も含めて引継いでいます。

慰安婦問題>日本に謝罪求める立場「変わらない」=台湾・外交部

【政治】 2016/08/24 19:01
台北 24日 中央社)日本政府は24日、韓国政府が元慰安婦の女性らを支援するために設立した「和解・癒やし財団」に10億円を拠出することを閣議決定した。これを受けて外交部は同日、日本側に対して台湾の元慰安婦への正式な謝罪や賠償などを求める方針を改めて強調した。
外交部は、慰安婦問題に対する政府の立場に変わりはないと強調。できるだけ早く台湾と協議を行うよう日本側に促すとした。

http://japan.cna.com.tw/news/apol/201608240008.aspx

そして、2016年12月には慰安婦記念館を開設し*2民進党政権の閣僚である鄭麗君文化部長も開館式に参加しています。
民進党政権が国民党政権に比べて対日交渉に積極的ではないとしても、少なくとも慰安婦記念館設立を引き継ぎ実現させる程度には積極的なんですよね。

そういった事情を踏まえずに「今回の像の設置への協力にはこうした狙いもあるとみられます」なんて報じるのは、台湾国内の政治的理由に矮小化したいんだなとしか言いようが無いんですよね。

民進党寄りメディアである自由時報の記事

民進党慰安婦問題で日本を糾弾したりしないという幻想に浸ってる連中の目が覚めるかどうかわかりませんが、まあこういう記事が自由時報で報じられています。

「答應您的事有在做」蔡英文悼蓮花阿嬤

2017-04-22 10:51
〔記者李欣芳/台北報導〕台灣僅存3名慰安婦之一、人稱「蓮花阿嬤」的許陳蓮花前晚因病辭世,享耆壽93歲,由於蓮花阿嬤一直心繫她的孫子。總統蔡英文昨天深夜在臉書發文悼念說:「蓮花阿嬤,您放心,我答應您的事情,我們都有在做」。
1924年出生於汐止的蓮花阿嬤,從小被送去當養女,19歲時一名日本人以「看護婦」的名義召募前往菲律賓宿霧,蓮花阿嬤在被半騙半強迫的情況下成為「慰安婦」2年,被迫成為軍事性奴隸。

http://news.ltn.com.tw/news/politics/breakingnews/2044189

19歳の時に看護婦名義でフィリピンに連行され慰安婦になることを強要され「軍事性奴隷」にされた、と書かれていますね。韓国メディアが日本軍慰安婦を「性奴隷」と書いたら発狂しそうな連中はこの記事についてどう思うのかはさておき、これが台湾においてもまず一般的な慰安婦問題の理解と言っていいでしょう。

こういう慰安婦問題認識の自由時報が今回の馬前総統も参加した少女像除幕式に対して批判しています。

〈南部〉設慰安婦銅像 國民黨挨批消費傷痛

〔記者王俊忠、邱灝唐/台南報導〕國民黨台南市黨部於昨日國際慰安婦紀念日時,協助南市慰安婦人權平等促進協會在市黨部前設立台灣首座慰安婦銅像,並強調此舉並非在於挑起仇恨,而是求真相與和解。不過,民進台南市黨部執行長蔡麗青批評,馬英九於總統任內沒有豎立雕像,可見其外交考量,現在突然大動作成立協會還豎立雕像,是為了選舉而消費傷痛。
南市慰安婦人權平等促進協會表示,台籍慰安婦至少有一千二百人,迄今僅倖存二人,仍得不到日本政府的正式道歉與賠償;協會理事長黃淑貞則斥資數十萬,委託雕塑家林坤銘雕塑這座銅像馬英九除了要求日本政府認錯外,也質疑民進黨政府通過促進轉型正義條例法案後,一直沒有進一步動作,對此感到遺憾。
(略)

http://news.ltn.com.tw/news/local/paper/1224622

“馬前総統は自身の任期中に少女像を設置しなかったくせに今になってやるのは政治利用だ”と民進党政治家が批判しているわけですが、馬前総統は任期中の2015年に慰安婦記念館の設置計画を発表するなど任期中から慰安婦問題に積極的に取り組んでいますので、民進党による批判の方が筋が悪い印象が否めません。

まとめ

要するに、国民党とか民進党とか関係なく台湾一般の認識としても慰安婦問題に関して日本に責任があり謝罪賠償するべきだというのがまあ共通理解といってよく、その上で、今回の少女像設置に国民党・民進党の政治的な思惑があるものの、政治的な思惑によって問題でないことが問題視されたわけでもなく、その文脈を踏まえずに「今回の像の設置への協力にはこうした狙いもあるとみられます」なんて報じれば、それは矮小化としか言いようがない、とそういうことです。

ああもちろん、慰安婦問題に関して日本に責任があり謝罪賠償するべきだというのが台湾一般の共通理解だとしてもその温度自体は様々であって、原爆被害に対する日本人一般の対米認識と同じようなものだと思えばわかりやすいんじゃないかなと。




続きを読む

差押禁止法案よりもカジノ法案を優先した自民に対しては沈黙しつつ、立憲民主党等による内閣不信任案提出をDisる人について

少し前ですが、こんなツイート。

iPhoneX‏ @poke428
借金のある被災者に渡るべき義援金が、銀行に差し押さえされ無いようにするための
義援金差し押さえ禁止法案」
を提出し、あと数十分ほど待てば成立するところを
枝野氏ら特定野党が不信任案を出したので後回しになった件については
左の世界では無かったコトになっているようだ
4:33 - 2018年7月21日

https://twitter.com/poke428/status/1020632941922267136

平成三十年特定災害関連義援金に係る差押禁止等に関する法律案は、2018年7月19日に衆議院本会議で可決*1されていて、立憲民主党などが内閣不信任案を出したのはその翌日です。
この法律案は、7月19日中に参議院にまわされ*2、翌7月20日10時15分から災害対策特別委員会の最初の議題とされることが7月19日のうちに決まっています*3
7月20日災害対策特別委員会で委員会可決され*4、同日20時21分の参議院本会議では、カジノ法案の次の議題とされ、可決されました*5

7月20日参議院審議の予定ですが、災害対策特別委員会が10時15分開会*6、本会議が11時30分開会*7の予定でした。
これが内閣不信任案が提出されたことで、内閣不信任案の審議が優先され、結果的に災害対策特別委員会が開会されたのが18時20分*8、本会議開会が20時21分になった*9、というのが、“野党ガー”の人たちの言い分です。

それ以前にiPhoneX‏(@poke428)氏のツイート本文はそもそも衆議院参議院の区別すらされておらず、本人がどの程度理解しているかすら怪しいのですけどね。

まず、差押禁止法案が「あと数十分ほど待てば成立するところ」だったかというと、内閣不信任案提出の9時51分を起点とした場合参院本会議の開会予定が11時30分で、まだ1時間以上ありましたので単純に間違いですね*10
では、野党は差押禁止法案成立まで内閣不信任案提出を待つべきだったのかというと、内閣不信任の主たる理由に挙げているカジノ法案の参議院本会議の議決予定が、まさに7月20日であったことを考慮すれば不可能でしょうね。
安倍自民党カジノ法案よりも差押禁止法案を先に審議することに応じていれば、野党は差押禁止法案成立後に内閣不信任案を出せたでしょうが、安倍自民党が差押禁止よりもカジノ法案成立を最優先と位置づけていた以上、野党としてはそれ以前に提出する以外にありません。

もちろん一般的な予想として与党が安定多数の状況下では内閣不信任案が可決されないことは自明ですから、差押禁止法案成立がせいぜい半日程度遅れるだけで実害が発生しないこともわかりきった話ですし、もし可決したとしても、その場合に衆議院を解散するか否かは安倍首相が決定するわけですから、解散によって法案成立が遅れたとしたら、その直接的な責任は、退陣して速やかに次内閣へ移行することよりも、自らの保身を優先する安倍首相に帰するとしか言いようがありません。


“野党ガー”の人たちのネタ元はこの公明党議員のようです。

@isashinichi
内閣不信任案。「被災地のことを考えると出すのを躊躇した」との枝野氏の弁、あまりにあきれた。
せめて災害対策に必要なこの法案は、参議院で10時15分に通過させてから不信任提出だろうと、誰もが思っていました。
ところが、災害の法案すら阻止するように、9時51分に提出。ほんと、あきれた。

https://twitter.com/isashinichi/status/1020232231774609408

「誰もが思っていました」とか、カジノ法案を強行した与党側の議員が言っても自己都合でしかありません。「災害対策に必要なこの法案」とか言ってるくせに、それよりもカジノ法案を優先してる(7月20日参議院本会議での議題は、1番目がカジノ法案、2番目が差押禁止法案)わけですからね。

あと、内閣不信任案提出の際に、衆参とも審議をとめるというのは慣例のようで、確かに内閣不信任の意思表示をしているのに内閣提出法案を審議するのはおかしいのでそれはそれで筋が通っているとも思いますが、差押禁止法案は議員立法ですから必ずしもこの慣例に沿う必要はないと思うんですよね。まあ、その辺をどうするか決めるのも議院運営委員会での多数を占める与党なわけで、そういった事情を一切無視して、野党批判だけやらかそうとする連中の偏向っぷりは救いようがないね、という話です。
しかもカジノ法案を推進した当の公明党議員によるポジショントークとしか言いようのない野党批判に易々と乗っかるとかねぇ。



河野談話から25年、日本は過去の罪過から目を背ける道を選んだ

1993年8月4日、日本政府は渋々ながら従軍慰安婦への政府関与を最低限のレベルで認めました。それを表明したのが河野談話です。
慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話
そこでは次のように表明されています。

 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html

言うまでもなく、現状を見ればこんな表明も所詮は嘘っぱちだったということですが。

それだけに韓国で政府主導でこういう動きが出てきたことはせめてもの救いです。
world.kbs.co.kr



死刑容認派が「「差別をなくす」ということは「差別者を排除する」ということではなくて、「差別する人を差別しない人に変える」ということ」などと主張しても説得力が無いと思う

こんなツイート。

モトケン‏ @motoken_tw
「差別をなくす」ということは「差別者を排除する」ということではなくて、「差別する人を差別しない人に変える」ということなんだけど、すぐ排除したがる人が多いね。それは差別者差別。差別者を排除しようとする人は、差別以外の理由でも自分の気に入らない人を排除しようとする。
16:54 - 2018年6月7日

https://twitter.com/motoken_tw/status/1004874297339412480

「「差別をなくす」ということは「差別者を排除する」ということではなくて、「差別する人を差別しない人に変える」ということ」という点については同感。同様に「犯罪をなくす」ということは「犯罪者を排除する」ということではなくて、「犯罪を犯す人を犯罪を犯さない人に変える」ということだと考えていて、それ故に、私は死刑に反対です。

ただ、モトケン‏(@motoken_tw)氏は、死刑容認派ですので、その氏がこのような発言をすることにはすごく違和感があります。

モトケン‏@motoken_tw
死刑制度というのは、他人の命を奪えば自分の命も奪われる、つまり他人の命は自分の命と同じく大事だ、という価値観の表明と見ることもできる。
16:50 - 2016年10月3日

https://twitter.com/motoken_tw/status/783091968196870144

このようなツイートをするモトケン氏ならば、“差別者を排除するというのは、他者を差別すれば自分も差別される、つまり他人の尊厳は自分の尊厳と同じく大事だ、という価値観の表明と見ることもできる”と擁護すべきでしょうにね。

私自身の考え

冒頭のツイートは杉田水脈氏の件を指してのものだと思いますので、その前提で。

繰り返しになりますが、私自身は「犯罪をなくす」ということは「犯罪者を排除する」ということではなくて、「犯罪を犯す人を犯罪を犯さない人に変える」ということだと考えています。
だからこそ「犯罪を犯す人を犯罪を犯さない人に変える」機会を奪う死刑制度には反対なわけですが、言うまでも無く「犯罪を犯す人」に対して罰を与えることまで否定しているわけではありません。懲役という形などで一定期間社会から隔離して「犯罪を犯す人を犯罪を犯さない人に変える」ように更生を促すことは必要だと考えています。
それはつまり、犯罪者のそれまでの社会的地位などが(少なくとも一定期間)失われることを意味しますが、それを排除だと言って問題視する人はモトケン氏を含めてもまずいないでしょう(自由刑そのものを否定するようなものですからね)。

差別発言を行った杉田水脈氏に対して議員辞職を迫るのも、犯した道義的罪過にふさわしい道義的責任を問うてるに過ぎず、これを「差別者を排除する」とか表現するのは的外れもいいところです。
ついでに言えば、表現の自由という擁護も的外れで、杉田氏による問題の差別煽動発言が国会議員としてふさわしいかどうかを有権者として考えるという話に過ぎず、私としては当然ふさわしくない発言で、撤回しないのならば議員辞職を迫るべきだと考えています*1
仮に、同様の発言を自民党以外の議員から出ても同じことで、これに党派性を見出す人は当人こそが党派性にとらわれていると自覚すべきでしょう。

大の大人にいちいち説明するような話でもありませんが、今の日本には大人がほとんどいないようですので、一応言っておきます。



*1:そもそも杉田氏は国会議員の身分に関係なく、差別メディアである産経新聞での連載など表現の場が一般人以上に与えられていましたしね。

組織的な問題に対する罰金が50万円なら、資本主義の原理によってまた同じことが繰り返されるのだろうな、と

この件。

まつりさん上司の電通元部長は「不起訴相当」 検察審

2018年7月27日16時38分
 広告大手・電通の違法残業事件で、東京第一検察審査会は27日、過労自殺した新入社員の高橋まつりさん(当時24)の上司だった元部長=退社=に対する東京地検の不起訴処分(起訴猶予)について、「不起訴相当」とする議決を公表した。議決は12日付。議決書は「会社という組織の中で、個人ができる対策は限られていた」などと指摘した。
 一方で、議決書は「入社1年目で自殺した無念さ、尊い命が奪われた親族の心情は察するに余りある」とも言及している。関係者によると、検審は担当検事から直接説明を受けるなどして、慎重に検討を重ねた。
 元部長は、高橋さんに違法残業をさせたとして労働基準法違反容疑で2016年12月に書類送検され、東京地検が17年7月に不起訴とした。一方、法人の電通に対しては、検察から略式起訴を受けた東京簡裁が異例の正式裁判を開くことを決め、17年10月に罰金50万円の有罪判決を言い渡し、刑が確定している。
 高橋さんの母、幸美さんは判決後の同12月に検察審査会に申し立てた。その後、今年1月の会見で、元上司が高橋さんに「君の残業時間は無駄だ」「女子力がない」などと述べたとされるのを批判。「悪質な上司の行為を罰することは労基法順守、職場改善、過労死防止のために重要だ」と主張していた。

https://www.asahi.com/articles/ASL7W52WCL7WUTIL02H.html

部長職にあって「会社という組織の中で、個人ができる対策は限られていた」とか言うのもどうかとは思います。まあ、それは電通社内における部長職の職権の範囲によりますから、一概には言えないでしょうけど。
また、「会社という組織の中で、個人ができる対策は限られていた」という内容を認めるにしても、「君の残業時間は無駄だ」「女子力がない」などといったパワハラ行為が正当化できるとも思えません。
それでもなお、電通という組織が部下にパワハラ行為を行わしめるような構造であったと言うなら、部長個人の責任を問えないという判断も無いことは無いかもしれません(この時点でさすがにおかしいだろとは思いますが)。

そこまで認めたとしても、それならそれで、部下にパワハラ行為を行わしめ、違法残業を強い、自殺に追い込むような組織に対して、「罰金50万円の有罪判決」というのは何の冗談なのかとしか思えませんね。

一応、労働基準法32条違反という訴因から見れば、司法の理屈としては妥当なのかも知れませんけど*1

電通経営層からすれば、一人あたり50万円の罰金さえ覚悟しとけば、これからも社員を自殺に追い込んでも構わないとしか思わないでしょうから、まともな再発防止が実行されることはちょっと期待できないように思います。「電通の社会的信用は低下し、業績も落ちるなど社会的制裁を受けており」という判断も果たして妥当なのかとも思います。

労働基準法の罰則上は罰金ではなく6か月以下の懲役だってありえたはずですが、過去の判例とのバランスなのか求刑の時点で罰金でしたからそれ自体どうなのかという思いはあります。

また、そもそも労働基準法32条違反は単に違法な残業をさせたという違反に過ぎず、パワハラなどの結果として残業せざるを得ない状況に追い込み、精神を病んで自殺に至らしめた行為に対する訴因ではありませんよね。
会社は違法残業放置の責任だけ、上司は起訴猶予・不起訴相当、ということは、検察も裁判所も、高橋氏が勝手に自分を追い込み勝手に自殺に至ったとみなしたに等しいように思えます。
2017年10月の裁判で「菊地努裁判官は判決で、高橋さんの過労自殺に言及。「尊い命が奪われる結果まで生じていることは看過できない」と述べた」そうですが、その「尊い命」を奪った責任を誰も取ってないんじゃないですかね。

パワハラの結果として精神を傷害に与え、結果として死に至らしめたという点を考慮するなら、上司に対しては過失致死の罪を問うべきだと思うんですけどね。検察審議会の「議決書は「会社という組織の中で、個人ができる対策は限られていた」などと指摘した」*2そうですが、過失致死ならそんな理由で免罪されたりはしないでしょう。残業を減らすという業務管理という面なら「個人ができる対策は限られていた」かも知れませんが、パワハラをしないという対応は上司個人でできたはずですしね。

あと検察審議会の「議決書は「入社1年目で自殺した無念さ、尊い命が奪われた親族の心情は察するに余りある」とも言及している」*3そうですが、察するだけなら誰でもできますから、何の価値もない駄文というか、責任逃れの言い訳というか、あなた方に求められてる役割は「察する」だけじゃないだろ、と思います。




「当時全会一致で成立した法律を、今になって違憲だったとはいえない」なんか理由にならない

優生保護法に関わる国家賠償訴訟で、政府に対して違憲性の見解を示すよう地裁から求められたものの政府が拒否した件。

優生保護法違憲性、国は見解示さぬ方針 強制不妊

2018年7月23日05時05分
 旧優生保護法により不妊手術を強制されたのは違憲だなどとして、仙台地裁で争われている国家賠償訴訟で、国は「憲法判断は司法が下すべきだ」として違憲かどうかの見解を示さない方針を固めた。地裁から違憲性の認否を示すよう、裁判初期では異例の要請を受けていた。複数の政府関係者が明らかにした。
(略)

https://digital.asahi.com/articles/ASL7Q533ML7QUCLV001.html

優生保護法は1948年に制定された法律です。
法律第百五十六号(昭二三・七・一三)◎優生保護法

議員立法ですが、衆参いずれも全会一致で成立しています。

当時の国会議席数の状況

1947年3月衆院選で与党・自由党が131議席民主党が124議席、野党・社会党が143議席共産党が4議席
1947年4月参院選で与党・自由党が38議席民主党が28議席、野党・社会党が47議席共産党が4議席

現在も存在する自民党の前身である自由党民主党社民党の前身である社会党、そして共産党を含めて全会一致で成立したわけです。中絶の条件など党によって賛否が分かれた部分もありましたが、賛成したことに違いはありません。

ところで優生保護法については、社会党が熱心に進めたこともあり、責任を社会党や場合によって共産党に押し付けようとする言説をちょいちょい見かけますが、提案した谷口弥三郎参院議員は民主党(現自民党)ですから、現存政党の責任を考える上で自民党は逃れられません。

社民党の謝罪

2018年2月22日

優生保護法にもとづく不妊手術の強制について

社会民主党全国連合常任幹事会
(略)
2.旧優生保護法に基づく手術の強制は、個人の尊重や自己決定権、幸福追求権、性と生殖の健康・権利、平等原則をはじめ基本的人権を侵害し憲法違反であるとともに、障がい者や患者への差別であることは明らかです。(略)
宮城県においては、不妊手術の強化を求め、1962年に日本社会党の県議の発言があったことがわかりました。社会党時代のこととはいえ、優生学的思想による誤り、人権意識の不十分さがあったことは極めて遺憾です。関係者の尊厳を傷つけ、多くの痛みと苦しみを与えてきた深刻な問題として受け止め、心からお詫びし謝罪いたします。
(略)

http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/02/22/%E6%97%A7%E5%84%AA%E7%94%9F%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%82%82%E3%81%A8%E3%81%A5%E3%81%8F%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E6%89%8B%E8%A1%93%E3%81%AE%E5%BC%B7%E5%88%B6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/

社民党は、優生保護法(による不妊手術の強制)が憲法違反であり、人権侵害であると認め、当時の不明に対して謝罪しています。

共産党の謝罪

共産党は衆参合わせて8議席しかない状態でしたが、それでも「不作為の責任」を認め謝罪しています。

2018年6月7日(木)

優生保護法 国謝罪・補償早く

国会の不作為を謝罪
穀田氏「共産党にも責任」
 日本共産党穀田恵二国対委員長は6日、国会内で記者会見し、旧優生保護法について、「国の法律と施策によって、本人の同意もなく不妊手術を強制されるという重大な人権侵害が引き起こされた極めて深刻で悲惨な問題だ」と述べ、問題解決のために「国の謝罪と補償を早急に行う必要がある」との見解を表明しました。
 その上で、「私たち日本共産党も、この問題での不作為の責任があり、心から謝罪します」と発言。「被害者が求める補償が速やかに行われるように努力していく責任がある」と表明しました。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-06-07/2018060702_01_1.html

人権侵害であることも認めており違憲かどうかについて直接表現してはいないものの、「国の法律と施策」による「重大な人権侵害」という表現は違憲であると強く示唆していると言えるでしょう。

自民党は?

自民党のウェブサイトを見ても、優生保護法についてはろくに言及されていません。記者会見で質問され二階幹事長が「政府側に会見でこういう質問があったということを伝えます」と答えてる程度です。*1

以上を踏まえた上で・・・

改めてこの記事を見てみましょう。

優生保護法違憲性、国は見解示さぬ方針 強制不妊

2018年7月23日05時05分
 旧優生保護法により不妊手術を強制されたのは違憲だなどとして、仙台地裁で争われている国家賠償訴訟で、国は「憲法判断は司法が下すべきだ」として違憲かどうかの見解を示さない方針を固めた。地裁から違憲性の認否を示すよう、裁判初期では異例の要請を受けていた。複数の政府関係者が明らかにした。
 原告は「旧優生保護法は子どもを産むことの自己決定権を奪い、違憲だ」と訴えた。国は違憲性に触れず、救済立法しなかったのは違法ではないと主張。地裁は「判決で憲法判断をする」とし、7月末までに見解を示すよう国に求めた。国は応じないことになる。
 政府内では「当時全会一致で成立した法律を、今になって違憲だったとはいえない」など、合憲と主張するべきだとの声が根強い。ただ、すでに自民・公明両党の与党ワーキングチーム(WT)と超党派議連が救済・支援法案の作成に向け協議している点を重視。最終的に「違憲かどうかを判断するのは司法であり、行政が憲法判断する理由はない」(政府高官)とした。
 原告側弁護団は地裁が要請した後の取材に、「認否を示さないことは絶対に許さない」と話しており、反発は必至だ。

https://digital.asahi.com/articles/ASL7Q533ML7QUCLV001.html

当日成立に賛成した政党で現存する社民党共産党は、優生保護法違憲ないし人権侵害と認めているにも関わらず、自民・公明政権は、「当時全会一致で成立した法律を、今になって違憲だったとはいえない」といって、違憲性への言及を拒否しているわけですから、卑怯というか、卑劣というか、まあ、自民党公明党の精神を形にしたような対応ではあります。



「射殺をそのままにしてお」かない事例を挙げて「変」とか指摘するのはどうなのかと

死刑廃止関連のSimon_Sin‏氏のツイート*1に、こんなブコメがありまして。

犯罪者であっても命を尊重するという考えで死刑廃止にしたのであれば、射殺をそのままにしておくのは変。たとえばフランスでは誰も殺してないし銃も撃っていない若者が射殺されてる。 http://www.afpbb.com/articles/-/3181442
ROYGBのコメント2018/07/07 20:05

http://b.hatena.ne.jp/entry/367095538/comment/ROYGB

で、示しているURL先の記事はこれ。

警官が若者射殺、仏ナントで抗議の暴動 3夜連続

2018年7月6日 17:12 発信地:パリ/フランス [ フランス, ヨーロッパ ]
【7月6日 AFP】フランス西部ナント(Nantes)で、若い男性が警官に射殺される事件が大規模な暴動に発展している。3夜目を迎えた6日未明も、建物や車両への放火が相次いだ。フランスでは移民の多い都市近郊の貧困地区で警察の暴力に対する住民の不満がたまっており、各地で緊張が高まる恐れがある。
 男性を射殺した警官は身柄を拘束され、事情聴取を受けている。エドゥアール・フィリップ(Edouard Philippe)首相はナントを訪れ、暴動を非難するとともに、男性の死について「最大限の透明性」を確保すると約束した。(c)AFP/Anne-Sophie LASSERRE
www.afpbb.com

http://www.afpbb.com/articles/-/3181442

どう見ても「誰も殺してないし銃も撃っていない若者が射殺されてる」ことに住民が抗議し、暴動を起こしている事例ですよね、これ。
そして、フランス首相も暴動を非難しつつも「男性の死について「最大限の透明性」を確保すると約束」しているわけで、「射殺をそのままにして」なんかいませんね。