古谷氏の「自民党で「安倍降ろし」が起きない理由」に関する件

内閣支持率が3割を切っても、自民党で「安倍降ろし」が起きない理由 強さの構造を解き明かす (古谷 経衡)」の件。
なかなか面白い記事ではあるんですが、何点か気になるところがありましたので、一応書いておきます。

個人的には「自民党で「安倍降ろし」が起きない理由」の最も大きな理由は自民党内統制、すなわち資金を握り候補者に分配する権限が集中されたことにより、下っ端議員では逆らえない、という構造の問題だと思ってますが、その辺については一切指摘無いのは気になりました。
総裁を降ろすべきだと思っても、解散総選挙になった際に選挙資金を回してもらえなくなったり、自民党公認がもらえなくなったり、自民党公認対立候補を立てられたりすれば、よほど強い地盤を持つ自民党議員以外は声を上げられませんからね。

本来なら「安倍政権は過去5回の国政選挙の全てで圧勝しているから」という理由の前に、現在の自民党の構造では資金分配の権限を握る執行部に逆らえないという理由が挙げられるべきでしょう。

公明党無党派・職能という3つの要素」

しかもその「勝利」の中身も、過去のどの政権とも違う。自民党議席占有率(下図参照)をみれば、安倍政権下の「5戦5勝」がいかに凄まじいものか分かろう。
(略)
過去どの政権もなし得なかった、公明党無党派・職能という3つの要素からなるトライアングルが、「三本の矢」のごとく第二次安倍政権を盤石なものにしている。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55313

もちろん、これらも重要な要素ではあると思うんですが、ただ安倍政権が「公明党無党派・職能という3つの要素からなるトライアングル」を確立したと主張するのであれば、議席占有率ではなく得票率で示すべきでしょう。

で、得票率で見るとこんな感じになります。

小泉政権 議席占有率 勝敗 自民得票率(選) 自民得票率(比)
2001年参院選 52.9 勝利 41.0% 38.6%
2003年衆院選 57.7 勝利 43.8% 35.0%
2004年参院選 40.5 敗北 35.1% 29.5%
2005年衆院選 60.4 勝利 47.8% 38.2%
安倍政権時 議席占有率 勝敗 自民得票率(選) 自民得票率(比)
2012年衆院選 61.3 勝利 43.0% 27.6%
2013年参院選 53.7 勝利 42.7% 34.7%
2014年衆院選 60.6 勝利 48.1% 33.1%
2016年参院選 46.3 勝利 39.9% 35.9%
2017年衆院選 59.9 勝利 47.8% 33.3%

※いずれも議席占有率と勝敗は古谷氏算出結果。(選)は選挙区、(比)は比例区の得票率を示す。
※選挙区と比例区の得票率の違いは公明党との選挙協力の影響。
※古谷図では「2006年衆議院」とあるが、2005年の誤記とみなした。

得票率で見る限り、安倍政権が小泉政権と比べて特段に強くなった印象はほとんど見られず、比例区の得票率に関して言えばむしろ弱くなっています。
ではなぜ議席占有率で見ると強くなったように見えるのか、というとその大きな原因は野党の分裂です。

小泉政権時の4回の選挙においては概ね、自民党民主党という二大政党+公明党社民党共産党という構図でした。この時期の自民党民主党をあわせると得票率は7~8割程度になります。
ところが、安倍政権時の5回の選挙では、みんなの党や維新などが現れ15~20%程度の得票率を占めるようになります。この時期の自民党民主党の得票率はあわせても4~6割程度にまで落ち込み二大政党制は崩壊し、自民一強体制となりました。

2012年衆院選時は橋下維新と渡辺みんなで小選挙区で16.4%、比例区で29.1%もの得票率を奪っています。
2013年参院選時も橋下維新と渡辺みんなで選挙区で15.0%、比例区で20.9%の得票率で、2014年衆院選時も維新が小選挙区で8.2%、比例区で15.7%の得票率、2016年参院選時でも維新が選挙区で5.8%、比例区で9.2%の得票率をとっています。
実質的には自民批判票が、自民政権をろくに批判できない維新などの“ゆ”党勢力に流れ、結果として野党が弱体化したとしか言いようの無い状況です。

維新による与党サポートは2016年参院選時には明らかに効果を薄れさせていましたが、そこでまたも出てきたのが小池旋風でした。その結果、2017年衆院選も野党側は、希望の党立憲民主党・維新と分裂した状態で戦うことになり、比例区の得票率では自公を過半数割れさせながらも議席占有率では自公の圧勝を許したわけです。

ある意味では“安倍政権が選挙に強い”というのは幻想ともいえる

少なくとも有権者の票を集めるという正攻法に限定するなら、得票率の伸び悩みを考慮すると“安倍政権が選挙に強い”というのは幻想と言えるかもしれません。選挙時に毎回、野党側が分裂状態にあるという“敵失”に負うところが大きいと言えるでしょう。

しかし渡辺みんなも橋下維新も、小池希望でさえもいずれも思想的には安倍政権寄りであることを踏まえれば、実態としてはこれらは野党の仮面をかぶった与党に過ぎず、むしろ安倍政権側が野党を分裂状態にしておくために意図的に煽っているという方が適切かもしれません。
そういう裏ワザ、陰謀的なものを含めるのならば、確かに“安倍政権が選挙に強い”という評価は適切でしょうね。



ブコメの件2・日本も参加している六者協議の合意文や、韓国・北朝鮮の共同宣言を示したら、「北朝鮮の報道官」呼ばわりされる

こちらのブコメ
北朝鮮の報道官」呼ばわりしてる連中は公開文書もろくに読めないらしい。

anschluss 以上、北朝鮮の報道官からのメッセージでした。
2018/04/04

Outfielder スポークスマン
2018/04/04

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/03/233000

バカ。

junglejungle 公開した宣言だけで判断するなら旧日本軍も大正義になってしまうわけだが
2018/04/04

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/03/233000

東京裁判などを受諾しているサンフランシスコ平和条約のどの辺を読んで「旧日本軍も大正義」だと理解しているんだろうか?
それとも前記事で提示した宣言が「共同宣言」であることも理解できないのかな?

sbedit1234 備えるべきは、相手の意図ではなく能力。
2018/04/04

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/03/233000

そこまで北朝鮮の核開発を肯定する必要はないと思う。

usutaru そのままの意味で南北宣言をとらえていいものかどうか。もちろん党派的なアレはあるだろうけど、単に躊躇もあるわけで、どっちが後先かは言ってる本人たちも分かんない状態かも。
2018/04/04

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/03/233000

うーん、「そのままの意味で南北宣言をとらえ」るかどうかという話ではなくてですね、韓国も北朝鮮も公式発言の中でこれらの宣言や合意に言及してるんですよ。韓国政府の記者会見などでもしょっちゅう出てきます。「段階的措置」っていう言葉も北朝鮮が勝手に言い出しているわけではなく、過去の合意に同様の表現があるわけで。
新たな合意の形成を目指す以上、過去の合意内容を踏まえるのは当然の話で、その中でいかに自国に有利な解釈を適用させていくのかというのが交渉です。もう、そういう段階に入っているわけで、日本がその交渉の中に入って中距離弾道ミサイル拉致問題の条件を追加したいなら、そういった状況を踏まえないとどうしようもありません。
まあ、単に緊張緩和の協議を引っ掻き回してご破算にさせたいだけなら別ですが*1



*1:今の日本政府がそれを狙ってそうなのが何ともねぇ・・・。

ブコメの件1

2件の殺人で懲役4年なら十分な温情判決だと思うが 」についたブコメの件。
元記事は情状を酌量すべき事件だとは思うが執行猶予が当然だとは思わない、という趣旨です。懲役4年というのが既に酌量された結果ですし。

hawaruna 二人以上殺して執行猶予ついた事件は平成になってからでも何件かある。 何故彼女はつかなかったのか https://www.senshu-u.ac.jp/School/horitu/publication/hogakuronshu/102/iwai.pdf
2018/04/04

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/02/080000

そのURLの「識別表(1) 実刑と執行猶予との区分(平成以降)」によれば、2人以上「殺害」したケースは16件で執行猶予がついているのはそのうち2件ですね。そして、そのURL先で検討されているのは「地方裁判所における「女性による殺人罪の確定判決」360ケースの内から無罪判決および量刑因子の客観化に困難が見られた事例を省いた354ケース」ですが、そのうち79件は「未遂」事件と書かれていますね。
2人以上「殺害」したケースで執行猶予がついている2件が、既遂事件なのか未遂事件なのかは明示されていないのでわかりませんが、2件とも未遂事件である可能性が極めて高いと思いますがいかがでしょうか?
なお、殺人事件の判例を列挙しているサイトで2005年以降の判例を見ても、2人以上殺害して執行猶予がついている事件は見当たりません。
また、2017年の事件ですが、女性が2人の子どもと無理心中を図ったものの思いとどまった事件では懲役3年執行猶予5年の判決が出ていますが、これは未遂事件で子どもは2人とも助かっています。
和歌山)2児と無理心中図った29歳の母 猶予付き判決(金子和史2017年12月28日03時00分)
「二人以上殺して執行猶予ついた事件は平成になってからでも何件かある」という内容自体の真偽を確認する必要があるかと思います。

seven_cz この被告のように自分の人生を奪われ、そのせいで引き起こされた殺人の罪でさらに人生を取り戻せないならば、従来の判例の範疇に収まらない新たな判例で、それが不可能ならば新たな立法で、対処すべきではないのか。
2018/04/04

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/02/080000

まあ、心神喪失者等医療観察法の対象を拡大して被虐待者である加害者の更生と治療を図るような対策は必要かと思いますね。ただ懲役4年で「人生を取り戻せない」とまでは思いませんし、出所しても33歳くらいです*1ので、贖罪の上で新たな人生を始めるというに遅くはないかと。
気になるのは、服役期間が彼女にとって有意義な贖罪になるかという刑務所の環境と更生方針に関する点と、性的虐待を受けてきたことと罪を犯したことに罪悪感によって受けている心理的な傷害に対して適切な治療を受けられるかという点で、その辺については繰り返しになりますが、対策は必要でしょうね。

nenesan0102 同じ目に遭ったら、このようなブログは書けるのかなと思った
2018/04/04

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/02/080000

出生直後に殺害された子どもたちにはブログを書く機会もありませんが、そういう視点は無いんですか。
そして自分が子どもを殺害したとしたら、それが他者から支配された結果であったとしても自責の念に苛まれるでしょうし、罪を償いたいと自首しても裁判で執行猶予で釈放されたら、そこからどうしていいかわからなくなると思いますけどね。
それとも自分で自分の子どもを殺してもそれが支配や虐待のせいだと裁判所に認定してもらえば罪の意識も消えてなくなるんですか?

EoH-GS 因みにコイツは学校に行きたくないという子どもの言うことをきくのは憲法違反と言ってるから子どもや左翼的立場に立ってるわけでもない。左翼っぽい論理を使うと馬鹿を騙せるとどっかで学習したんだろう。
2018/04/04

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/02/080000

こういう罵倒と曲解と中傷ばかりで中身のないコメントをつける人を私はネトウヨと呼んでいます。こういう人が左翼だというなら、私は左翼でなくて結構です。
ところで、子どもの立場に立ってるつもりならば、殺害された二人の子どもたちの立場に立ってみたらどうかと。

iiiloveuuu07 弁護側の求刑によれば執行猶予判決もできただろうに、納得できない。女性が殺害に至ったのは義父に中絶費用だしてもらえなかったからだぞ。収入全部握られてたんだぞ
2018/04/04

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/02/080000

記事で書かれている以上の状況を知りませんので断言できませんが、中絶できなかったとしても出産後に産院の前に子どもを置いてくるとかは出来たかもしれませんよね。あるいは妊娠期間中に役所に電話で相談したりも出来たかもしれません。殺害して当然の状況だったとは言い切れないんじゃないかと。
子どもの命ってそんなに軽いものじゃないでしょ?

zaikabou ハーグ条約とか、そういう話題の時のscopedogさんの論調は、以前から興味深いものがある

http://b.hatena.ne.jp/entry/scopedog.hatenablog.com/entry/2018/04/02/080000

自分の中では一貫しているつもりですのでよくわかりません。
本件に関しては、(1)情状酌量されていないという誤解、(2)義父は殺人罪に問われていないという誤解、(3)虐待されてた女性の視点にばかり偏り、殺害された子どもの視点が軽視される傾向、(4)女性が「裁判でも「罪をつぐないたい」と話していた」ことを無視している点、などについて違和感があったので書いた感じで、いつもと違う問題意識ではないと思ってますよ。
違うとすれば、右派的な論調に対する批判ではなく、左派的な論調に対する批判だという点ですかね。
あと、この件ハーグ条約とは関係ないと思います。

付記

個人的な感想ですが、殺人を犯した自責の念から自首して「罪をつぐないたい」と言ってきた人に「貴方は悪くない」といって釈放することがその人にとって救いになるのでしょうかね。虐待による心の傷を治療する必要性はあるでしょうが、執行猶予がないのはおかしいと決め付ける行為が傍観者の自己満足になってないか自問することも必要だと思いますよ。その上で、“本人が「罪をつぐないたい」と言っていてもやはり執行猶予をつけるべきだ”というなら、なぜそう思うか理由と共に主張すべきだと思いますね。
もちろん、本人が「罪をつぐないたい」と言っていても、境遇を考慮すれば、刑罰ではなくて心的治療こそ行うべきという主張であれば理解はしますし、それを否定するものではありません。



*1:裁判期間を考慮すればこれから服役しなければならない期間は実質2~3年程度だと思います。

フィンランドでの米朝の非公式会合が日本大使館で行われるという情報は何だったんだろう?

3月18日から19日にかけて、こんなニュースが流れました。

ヘルシンキ日本大使館か、米朝が非公式接触へ

2018年03月19日
 【ソウル=岡部雄二郎】韓国の聯合ニュースは18日、北朝鮮外務省で米国を担当するチェ・ガンイル北米局副局長が同日、米国の元政府高官との非公式接触のためフィンランドに向かったと報じた。
 北京の空港での取材にチェ氏は「今は話すことはない」と語った。
 同ニュースは複数のフィンランドメディアを引用する形で、相手が米国のスティーブンス元駐韓大使で、ヘルシンキ日本大使館で接触するとしている。
2018年03月19日 Copyright © The Yomiuri Shimbun

http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000301/20180319-OYT1T50011.html

北朝鮮外相、スウェーデン外相と会談 副局長はフィンランド

朝鮮半島
2018/3/18 17:00
 【ソウル=鈴木壮太郎】北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は15日から17日までスウェーデンを訪問し、バルストロム外相と会談した。朝鮮中央通信の18日の報道を朝鮮通信(東京)が伝えた。「両国関係と相互の関心事について討議した」と伝えたが、具体的な内容には触れていない。李氏はロベーン首相を表敬訪問した。
 韓国の聯合ニュースは18日、北朝鮮外務省で米国を担当するチェ・ガンイル副局長が18日、北京からフィンランドに向かったと報じた。スティーブンス元駐韓米国大使と会談するとの現地メディアの報道を紹介。場所はヘルシンキにある日本大使館との見方を伝えている。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28287000Y8A310C1FF8000/

韓国の聯合ニュースフィンランドメディアを引用する形で報じたとのことですが、さすがにフィンランドメディアは調べてません。
聯合ニュースのサイトには3月19日付の「北朝鮮高官と韓米の元当局者ら フィンランドで20日会合(2018/03/19 09:29)」という記事はありましたが、18日付のニュースはもう削除されたのか見つけられませんでした。

上記読売・日経報道では、18日時点の聯合ニュース報道を基に、北朝鮮のチェ・ガンイル北米局副局長と米国のスティーブンス元駐韓大使の会談予定を報じていますが、19日付の聯合ニュースは、「韓国と米国の元当局者や研究者、北朝鮮の当局者が出席する会合」となっていて、韓国側のメンバーも参加する旨を報じています。

 会合には北朝鮮からチェ・ガンイル外務省北米局副局長が出席する。米国からはスティーブンス元駐韓大使や北朝鮮専門家のカーリン氏らが参加する。カーリン氏が北朝鮮側と接触し、実務作業を行ってきたという。
 韓国からは申ガク秀(シン・ガクス)元駐日韓国大使や辛正承(シン・ジョンスン)元駐中韓国大使、白鍾天(ペク・ジョンチョン)世宗研究所理事長、チョ東昊(チョ・ドンホ)国家安保戦略研究院長らが出席する。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2018/03/19/0300000000AJP20180319000400882.HTML

この19日付報道の中には、以下のように場所に関する情報が記載されています。

 フィンランド政府は会合の趣旨などの説明を受け、場所の提供などの支援を行っている。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2018/03/19/0300000000AJP20180319000400882.HTML

場所が日本大使館であれば、フィンランド政府が支援したというのはおかしな感じです。

実際、会談終了後のNHKが報じた内容では、「首都ヘルシンキ近郊にあるフィンランド政府の施設」で行われたとなっています。

「建設的に意見交わされた」北の幹部参加の会合

(2018年3月22日)

フィンランドで行われていた北朝鮮外務省の幹部とアメリカや韓国の元政府当局者による安全保障に関する会合は、21日に終わり、会場を提供したフィンランドの政府は建設的に意見が交わされたとして今後の朝鮮半島情勢の改善につながることへの期待感を示しました。

この会合は、北朝鮮外務省でアメリカを担当する北米局のチェ・ガンイル副局長やアメリカや韓国の元政府当局者らが出席して、首都ヘルシンキ近郊にあるフィンランド政府の施設で21日までの2日間、行われました。
フィンランド外務省は、会合について信頼を醸成し、朝鮮半島の緊張緩和に向けて、前向きな雰囲気のなかで建設的な意見交換が行われたと発表しましたが、具体的な内容については明らかにしませんでした。また、フィンランドのソイニ外相は「朝鮮半島情勢の改善につながることを期待したい」と述べて、会合を評価する考えを示しました。
一方、チェ副局長らは報道陣の問いには一切答えず帰国の途に就きました。
各国の関係者からは具体的な発言は無かったものの、会合に参加した韓国の大学教授は「朝鮮半島の緊張が緩和し、首脳会談がうまくいくことを望むことで、みなが考えを共にした」と述べていて、南北首脳会談のほか、初めてとなる米朝首脳会談も含めた幅広いテーマについて議論が行われたものと見られています。
国連の法律・条約専門家も参加
国連のデュジャリック報道官は21日の定例記者会見で、この日までフィンランドで行われていた北朝鮮外務省とアメリカや韓国の元政府当局者による会合に国連の法律や条約部門の専門家を派遣していたことを明らかにし、北朝鮮と関係国との対話を支援していく考えを示しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/northkorea_provocation/?utm_int=detail_contents_special_003

ヘルシンキ日本大使館で接触する」という情報はいったいどうして出てきたのか、単なる間違いなのか、「フィンランド政府の施設」で行われた会合以外に、日本大使館で行われた非公開の会談があったのか、まあ、後者は無いかな。



北朝鮮関連問題に関する大雑把な予測

平昌五輪以降の北朝鮮問題の進展がとにかく早いという印象。
五輪から南北首脳会談につなげるのはある程度想像できましたが、4月とは思いませんでしたし、その後5月頃米朝首脳会談が約束されるというのも予想外でした。
そして拙速という感じではなく、十分な根回しがされている印象もあり、文政権が政権発足1年もせずにここまで準備したことに感嘆せざるを得ません。

五輪前までの予測としては、五輪で南北融和が図られたとしても、その後米韓合同演習などで再び緊張状態となって南北首脳会談にこぎつけるまでに何ヶ月もかかり、米朝首脳会談も期待だけで実現は難しいかな、というものだったんですけどね。

もちろんまだ予断は許さない状況なのは確かですが、色々と出されてるシグナルがまず好意的な感じですので、良い方向に動くと言う期待をある程度持って良いかなと思っています。
良い方向というのは具体的には、朝鮮半島における軍事的な緊張状態の緩和のための朝鮮戦争終戦協定の締結、在韓米軍の段階的撤退と同時に北朝鮮核兵器の段階的放棄の開始の合意、合意履行期間における核実験・弾道ミサイル実験の停止、米韓演習への北朝鮮軍のオブザーバー参加あたりと考えています。
中距離弾道ミサイルについては、朝鮮戦争が正式に終結すれば完全廃棄の必要性はなく、それによって日本の安全保障が脅かされることもないと考えますので、この件で日本が余計な主張をすべきとは思いません。
拉致問題に関しても、軍事的緊張が緩和され、南北・米朝関係が正常化した後の交渉で特に問題は生じないと考えます。正常化までに何年も待つ必要があるならともかく、南北・米朝首脳会談を待ってからでも遅くはないでしょう。今の今まで圧力一辺倒を主張しろくな交渉もしていなかったんですから。

米朝首脳会談に関する北朝鮮の公式発表がない点

もともと言論の自由がなく、事前に米朝会談の開催についてあれやこれやの意見を交わす環境が北朝鮮国内にありませんから、公式発表がないこと自体をいぶかしむ必要はあまり無いと思います。
というより、北朝鮮の政治状況・言論状況を踏まえれば、北朝鮮政府が米朝首脳会談について発表するのは、会談での成果が十分に期待できる程度に下準備(水面下での事前交渉)が固まってからと考えるべきだと思いますよ。北朝鮮政府としては、“我らの指導者が米国と交渉して偉大な成果を持ち帰った”と報じたいわけでしょうから。そして当然、下準備の段階で不首尾ならば、そもそも首脳会談の予定があったことも報じられない、と。
北朝鮮国内にどう報じるべきか悩んでいるとか政府内に反対派がいるからだとか、はあまり実態を表していないんじゃないかなと思います。

目標は朝鮮戦争終戦協定

南北首脳会談で終戦後の南北関係の大枠について合意し、米朝首脳会談で終戦協定の方針を確認し、その後、米朝韓で正式に終戦協定を交わすという流れになるかなと予測しています。まあ、半分は願望だと思ってください。
今回、中朝首脳会談が行われたのは、朝鮮戦争での同盟国として終戦協定の方針で合意しておく意味合いがあったんじゃないかなと見ています。だからこそ、“敵国”である韓国や米国よりも先に会談しておく必要があったんじゃないかと。

朝鮮戦争終戦協定であれば関係国は、韓国、北朝鮮、米国、中国の4カ国です。但し、中国は国家として参戦したわけではないので、3カ国という見方もできます。*1
それを考慮したと見られるのが、2007年10月の金正日盧武鉉の首脳会談での「南北関係の発展と平和繁栄のための宣言」(2007年10月4日)です。

 4、南と北は、現休戦体制を終わらせ、恒久的な平和体制を構築すべきだとの認識をともにし、直接関連した3者または4者の首脳が韓半島地域で会い、終戦を宣言する問題を推進するため協力していくことにした。
 南と北は、韓半島の核問題を解決するため、6者会談の9・19共同声明と2・13の合意が順調に履行されるよう共同で努力することにした。

http://www.mindan.org/front/newsDetail.php?category=4&newsid=8840

「直接関連した3者または4者」というのは、韓国、北朝鮮、米国またはその3カ国に中国を加えた4カ国を指します。
韓国政府が主導している現状の動きは、2007年10月4日の南北宣言の4項を目指していると見ると説明しやすいように思えます。そう考えると今回の中朝首脳会談も、韓国政府にとっては想定内かあるいは予定の行動であって、現在も尚一連の情勢の主導権を韓国が握っているということになります*2

その意味で重要だなと思ったのが以下のニュース。

[速報]北朝鮮「金委員長が習主席に訪朝要請…受諾」

3/28(水) 8:55配信 聯合ニュース
[速報]北朝鮮「金委員長が習主席に訪朝要請…受諾」

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180328-00000007-yonh-kr

米朝首脳会談がどこで開かれるのか未定ですが、まず南北境界線か中国あたりが有力でしょうから、そのいずれであっても米朝首脳会談の場に中国首脳が参加することが可能になります。そして、会談の場が板門店であれば、米朝首脳会談にあわせて中国首脳が訪朝することで韓国首脳を含めた四者会談が可能です。2007年10月4日の南北宣言の4項の実現にはおあつらえ向きの舞台でしょう。
と思っていたら、四者会談に言及するような状況にまでなってました*3。やはり早いなぁ。

核問題の解決

日本政府やメディアなどでは北朝鮮が実際に核放棄するまでは圧力を、という論調が出ていますが、核放棄するための具体的な処理やその確認などの作業を考慮すれば、それらが対北強硬派が満足するレベルまで確認されない限り、軍事的圧力をかけ続けるというのは現実的ではありません。
強硬派は北朝鮮に無条件降伏させて武装放棄させるつもりかもしれませんが、北朝鮮はそんなつもりではないでしょうし、客観的にもそうではありませんからねぇ。
あくまで対等の立場での終戦である、というスタンスで会談に臨むはずですから、国内に向けてリップサービスするくらいならともかく協議の場で城下の誓いを迫るが如き態度では合意は成立しません。

その意味では現状況下で、拉致問題や中距離弾道ミサイルで騒ぐ日本は緊張緩和の妨害要因でしかないでしょう。
ただ、安倍日本政府にとって朝鮮半島の軍事的緊張は解決してほしくはないでしょうから、外交的手段での妨害はある意味当然の対応ですし、場合によってはトンキン湾事件のようなものをでっち上げる可能性すら否定できないでしょうね。



*1:休戦協定に署名した軍人の所属国ということであれば、韓国を除いた3カ国とも言えますが、現状で韓国を除外した選択肢はまあ無いので無視していいでしょう。

*2:突然の中朝首脳会談、先を越された韓国は・・・」とかいった韓国が焦ってるかのような報道がありますが、本文記載の理由により多分そんなことはなかろうと思っています。

*3:http://japan.hani.co.kr/arti/politics/30191.html

直近の朝鮮半島情勢に関して、韓国・北朝鮮の思惑を推量するのに踏まえておくべき内容

朝鮮半島情勢に関する論評が色々出ていますが、素人の私から見てもあまりにも薄い内容が多いので、日本の論壇のレベルは大丈夫かと思っています。まあ、大丈夫ではないんですが。

韓国や北朝鮮がどういった解決を目指しているのか、それを全く把握せずに論評しても意味はありません。で、その目指すところについては別に秘密にされているわけでもなく、公表されているものが結構あります。

南北関係の発展と平和繁栄のための宣言(全文)

これは2007年の10月の南北首脳会談で出された南北共同宣言です。韓国側は盧武鉉大統領、北朝鮮側は金正日国防委員長の名義です。
これの第4項にはこうあります。

 4、南と北は、現休戦体制を終わらせ、恒久的な平和体制を構築すべきだとの認識をともにし、直接関連した3者または4者の首脳が韓半島地域で会い、終戦を宣言する問題を推進するため協力していくことにした。
 南と北は、韓半島の核問題を解決するため、6者会談の9・19共同声明と2・13の合意が順調に履行されるよう共同で努力することにした。

http://www.mindan.org/front/newsDetail.php?category=4&newsid=8840

予定されている南北首脳会談、米朝首脳会談、直近の中朝首脳会談、そして中国が3月9日にアメリカに対して米中南北4カ国による平和協定の締結を提唱したこと*1などは、2007年南北共同宣言第4項前半に沿った内容だとわかります。

また、この2007年南北共同宣言では「6・15共同宣言の精神」が重視されています。これは、2000年の南北首脳会談における全訳6.15南北共同宣言(2000年6月15日)のことです。韓国側は金大中大統領、北朝鮮側は金正日国防委員長の名義です。
この2000年南北共同宣言の第2項にはこう書かれています。

2.南と北は国の統一のために、南側の連合体案と、北側の低い段階の連邦制案が互いに共通性があると認め、今後はこの方向から統一を指向していくことにした。

https://thekoreanpolitics.com/archives/206

南北統一の方向性ですね。現状、日本の論壇に現れる朝鮮半島統一は、どれも北朝鮮主体で韓国を吸収するかのようなデタラメがまかり通っており、北朝鮮の高麗連邦案と共通性があるとされた「南側の連合体案」については触れられることがほとんどありません*2
韓国政府が構想する朝鮮半島統一の方策について記事に書きましたが、韓国側による統一構想である「民族共同体統一方案(민족공동체통일방안)」について日本側で全く言及されないこと自体がかなり異常だと思いますね。しかも、現在のような緊張緩和の情勢下においてなお、それを無視し続ける神経は理解しがたいものがあります。

2007年南北共同宣言第4項の後半には核問題の解決方針が記載されています。
六者協議の9.19共同声明と2.13合意に言及されています。
9.19共同声明とは2005年の「第4回六者会合に関する共同声明(2005年9月19日)」を指し、非核化を進める上での重要な内容になっています。
2.13合意は2007年の「共同声明の実施のための初期段階の措置(平成19年2月13日)にある合意で、2005年の9.19共同声明を実施するための初期の措置について規程したものです。

9.19共同声明の第1項にはこうあります。

1.六者は、六者会合の目標は、平和的な方法による、朝鮮半島の検証可能な非核化であることを一致して再確認した。
 朝鮮民主主義人民共和国は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、並びに、核兵器不拡散条約及びIAEA保障措置に早期に復帰することを約束した。
 アメリカ合衆国は、朝鮮半島において核兵器を有しないこと、及び、朝鮮民主主義人民共和国に対して核兵器又は通常兵器による攻撃又は侵略を行う意図を有しないことを確認した。
 大韓民国は、その領域内において核兵器が存在しないことを確認するとともに、1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言に従って核兵器を受領せず、かつ、配備しないとの約束を再確認した。
 1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言は、遵守され、かつ、実施されるべきである。
 朝鮮民主主義人民共和国は、原子力の平和的利用の権利を有する旨発言した。他の参加者は、この発言を尊重する旨述べるとともに、適当な時期に、朝鮮民主主義人民共和国への軽水炉提供問題について議論を行うことに合意した。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/ks_050919.html

北朝鮮が「朝鮮半島の非核化」について言及する根拠になっており、同時にアメリカは朝鮮半島に核を持ち込まないこと、韓国は領域内に核兵器が存在しないことを約束する内容になっています。

「行動対行動」の原則、段階的措置

2005年の9.19共同声明ではこう書かれています。

5.六者は、「約束対約束、行動対行動」の原則に従い、前記の意見が一致した事項についてこれらを段階的に実施していくために、調整された措置をとることに合意した。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/ks_050919.html

2007年の2.13合意ではこう書かれています。

I. 六者は、2005年9月19日の共同声明を実施するために各者が初期の段階においてとる措置について、真剣かつ生産的な協議を行った。六者は、平和的な方法によって朝鮮半島の早期の非核化を実現するという共通の目標及び意思を再確認するとともに、共同声明における約束を真剣に実施する旨改めて述べた。六者は、「行動対行動」の原則に従い、共同声明を段階的に実施していくために、調整された措置をとることで一致した。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/6kaigo5_3ks.html

これに則るとするなら、北朝鮮側が一方的に核兵器を放棄し検証が完了するまで、国際社会が経済制裁を続けるというのは了承し得ないでしょうね。

ともあれ、少なくとも、2000年南北共同宣言、2005年9.19共同声明、2007年2.13合意、2007年南北共同宣言、そして北朝鮮の高麗連邦構想と韓国の民族共同体統一方案を踏まえれば、現状、韓国や北朝鮮が何を目指しているのかわかりやすくなりますし、個々の発言や行動についても理解しやすくなります。

中朝首脳会談に関して北朝鮮や中国の意図をあれこれ邪推した日本側の論壇の意見よりも、2007年南北共同宣言第4項に沿った行動として解釈する方がよほどしっくり来ますよね。「段階的措置」や「朝鮮半島の非核化」についても、これまでに何度か言及されてきたものであって、その流れで理解すべきでしょう。
少なくとも、それらを一切踏まえていない論考にはあまり価値はないと思いますね。



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北朝鮮が次の核実験を用意と煽る日本外務省、動向注視しつつ非核化の進展と平和定着の努力をすると答える韓国外交部

この件。

北朝鮮が次の核実験を用意と河野外相

2018/3/31 18:42©一般社団法人共同通信社
 河野太郎外相は31日午後、高知市で講演し、北朝鮮が新たな核実験への準備と受け取れる動きを見せているとの見方を示した。「核実験をした実験場でトンネルから土を運び出し、次の核実験の用意を一生懸命やっている」と指摘した。

https://this.kiji.is/352749994639459425

河野外相「北朝鮮が核実験用意」 日朝会談に慎重

毎日新聞2018年3月31日 19時38分(最終更新 3月31日 20時46分)
 河野太郎外相は31日、高知市で講演し、北朝鮮が新たな核実験に向けた準備と受け取れる動きを見せていると明らかにした。「(過去に)核実験をした実験場で、トンネルから土を運び出し、次の核実験の用意を一生懸命やっているのも見える」と述べた。米国提供の衛星画像を踏まえた発言とみられる。
 実現の見通しが立っていない日朝首脳会談について、河野氏は「日本は何もしなくていいのかという評論家がいるが、別に何もしなくても構わない」と強調。「北朝鮮から『さあ、平壌へ来てください』と言われ、みんながこぞっていくようなことになったら足元をみられる。焦る必要は全く無い」と説明した。(共同)

https://mainichi.jp/articles/20180401/k00/00m/010/045000c

共同記事では「米国提供の衛星画像を踏まえた発言」とありますが、ソースはちょっとよくわかりませんでした。英語記事をいくつか検索してみましたけど、“日本の外務大臣が警告している”みたいな記事*1以外にそれらしい報道を見つけられませんでした。

河野発言のソースと同じかどうかわかりませんが、寧辺の核施設に再稼働の動きがあること自体は「北朝鮮・寧辺の核施設:5000キロワットの原子炉に稼働の兆候あり 新しい軍営地の設置も」といった感じで報じられてはいます。ただ「(過去に)核実験をした実験場で、トンネルから土を運び出し、次の核実験の用意を一生懸命やっているのも見える」という報道は、38NORTHでも見かけません。

で、寧辺の核施設に関する件については、韓国外交部も記者との質疑で言及しています。

2018年3月29日 外交部報道官定例会見<질문> 외신에서 영변에 북한 핵단지 안에 있는 경수로의 가동조짐이 있다는 보도들이 나오고 있는데요. 거기에 대해서 우리 정부의 입장은 어떻습니까? (연합뉴스 조준형 기자)

機械翻訳、以下同)<質問>外信で、寧辺北朝鮮の核だけにある軽水炉の稼働兆しがあるという報道が出てきていますよ。そこに対して、韓国政府の立場はいかがでしょうか?(聯合ニュースジョジュンヒョン記者)

<답변> 관련 동향을 예의주시하고 있습니다. 정부는 남북, 북미 정상회담의 성공적 개최를 통해 실질적 비핵화 진전과 한반도 평화 정착의 이정표를 마련할 수 있도록 적극적으로 노력해 나갈 것입니다.

<回答>関連動向を注視しています。政府は南北、北米サミットの成功開催を通じて実質的非核化の進展と朝鮮半島の平和定着のマイルストーンを用意することができるよう、積極的に努力していきます。

http://www.mofa.go.kr/www/brd/m_4078/view.do?seq=368000&srchFr=&srchTo=&srchWord=&srchTp=&multi_itm_seq=0&itm_seq_1=0&itm_seq_2=0&company_cd=&company_nm=&page=1