バカというのは言い過ぎかもしれませんので、女性差別主義者兼民族差別主義者としておきましょう。
従軍慰安婦問題に関して、秦氏は問題の矮小化にしか興味がないようで、その点、参照している「宋連玉編『軍隊と性暴力』(現代史料出版、2010年)」に執筆している林博史氏とは随分違います。
しかし、安倍・橋下らによる従軍慰安婦問題否認論が国際的に非難される状況になると途端に人権意識に目覚めたかのように韓国軍が利用した慰安婦が気になり始め、「強要」されたと主張しだします。
書類上は「第5種補給品」と呼ばれた4カ所、89人の慰安婦に対し、52年だけで延べ20万4560回(1日当たり6・5回、時には20〜30回)の性サービスが「強要」されたことを示す実績統計表も付されている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130523/stt13052303220000-n3.htm
ちなみに、宋連玉編『軍隊と性暴力』の金貴玉氏の記載に関して、私は以前以下のように述べました。
つまり、嫌韓ネトウヨが日本軍慰安婦問題を否定するときのように、証言を証拠とみなさないのなら、韓国軍慰安婦問題も否定しなければならないわけです。日本軍慰安婦問題は否定し、韓国軍慰安婦問題だけをあげつらうのは、レイシズムに基づく悪質なダブルスタンダードでしかありません。
ちなみに上記、唯一挙げられている韓国軍発刊の「後方戦史」ですが、
とあるように、いわゆる強制連行を示す「物的証拠」ではありません。ですが、金貴玉氏は証言の積み重ねで、
実際に軍「慰安婦」として働くことになった女性たちの例からは、「自発的動機」がほとんどなかったのではないかと思われる。
と推測しています。一般的な感覚から言っても妥当な推測でしょう。
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120617/1339946702
そして同様に、日本軍慰安婦が日本軍や政府によって売春を強要されたのが事実だと判断することも妥当だと言えます。
韓国軍慰安婦が強制されたことを示す、いわゆる「物的証拠」はありません。しかし、金貴玉氏は「「自発的動機」がほとんどなかった」と判断し、私も同感なのですが、何と秦郁彦氏までが「性サービスが「強要」された」とまで述べたのに驚きました。
何せ日本軍の従軍慰安婦の場合は、以下の屁理屈で強制性を否定する恥知らずぶりを示している秦氏ですから。
第1に、この20年以上にわたり数多く紹介され裁判所でも陳述された彼女たちの「身の上話」で、家族、隣人、友人など第三者の目撃証言が登場した例は皆無である。たとえ、こそ泥レベルの微罪でも「被害者」の申し立てだけで有罪と判定する例はないはずだ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130523/stt13052303220000-n3.htm
次に戦中のソウルの新聞に「慰安婦至急大募集。月収300円以上、本人来談」のような業者の募集広告が、いくつも発見されている事実を指摘したい。日本兵の月給が10円前後の当時、この高給なら応募者は少なくなかったろうから強制連行する必要はなかった。
つまり秦氏は、韓国軍が利用した慰安婦が強制だったと決め付け、日本軍が利用した慰安婦は強制じゃないと決め付けているわけです。韓国軍慰安婦の場合は当事者である元慰安婦の証言すらほとんどなく、証拠・研究の蓄積という点でも日本軍慰安婦の研究に劣るにも関わらず、です。
秦氏が民族差別主義者である所以です。
秦氏が女性差別主義者でもあることは、レベルの低い否認論を開陳している時点で説明不要でしょう。
さすがにここまで露骨なダブルスタンダードを使うほどレベルの低い人とは思いませんでした。