「河野談話」を読んでみよう

2013年8月4日は、河野談話が出されてから20年目にあたります。
河野談話(「慰安婦」関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話)
慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話
ネット上では未だに否認論者や二次強姦魔が跳梁跋扈し、彼ら心の歪んだモノたちはリアルにもあふれ出しています。倫理の欠落した彼らがリアルでも生存できるのはリアル世界での倫理が損なわれているからに他ならず、こうした倫理の崩壊をもたらしたのは、産経新聞に代表される極右メディアと安倍首相に代表される極右議員、桜井よしこ氏に代表される極右言論人です。彼らがネトウヨというネット上にしか生息できなかった醜いモノたちを現実世界に召還したのです。
彼らの多くは二言目には「河野談話を破棄せよ」と訴えますが、その多くは河野談話を読んだことすらない人たちのようです。

1993年8月4日
 いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。

この1991年頃まで日本政府は、従軍慰安婦に関して日本軍・政府は一切関与していないという態度をとり責任を否定していました。しかし、日本軍関与を明確に示す証拠が出たため日本政府は否定できなくなりました。その結果、

  • 長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したこと
  • 慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたこと
  • 慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与したこと
  • 慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったこと
  • 募集に際して、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあったこと
  • 官憲等が直接これに加担したこともあったこと
  • 慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであったこと

を認めたわけです。いずれも否定できない事実であり、数多くの証拠がありますね。

 なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。

慰安婦の出身地に関しては出身地別の統計資料が存在しませんので、各地域の断片的な資料に残されている民族構成から推測するしかありませんが、「日本を別とすれば」朝鮮人が圧倒的多数だったのはほぼ間違いありません。日本人と朝鮮人のどちらが多かったかについてはわかりません。朝鮮人慰安婦の「募集、移送、管理等」が、「甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」ことも、各資料から明らかです。

 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。

「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である」ことも確かです。「出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」というのが戦後48年経ってからの日本政府の謝罪です*1
「そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える」ということについては、結局は安倍晋三氏などの右翼議員や産経新聞などの二次強姦メディアによって絶えず妨害されてきたわけで、いまやその二次強姦魔が政権についているわけです。全くもって恥としか言いようがありません。

 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
 なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。

現在の安倍政権による歴史の真実回避、歴史の教訓黙殺、歴史研究・歴史教育の圧殺による記憶の封印への動きがあまりにも集大成的ですが、これまでの20年間のいずれの政権も安倍政権ほど露骨ではなかったものの方向性としては似たり寄ったりでした。
それゆえに、これほど諸外国から非難されているわけですが、この国の知識人を名乗る迎合者たちは“日本は誤解されている”と解釈し思い込むことで、“日本には非難されるべきことは何もない”と、これまでの無策と背信行為をなかったことにしようとしています。

日本社会は80年前、満州を侵略した際も“連盟は実態を知らない”と相手の誤解のせいにして、侵略を正当化しました。今またそれを繰り返そうとしています。

*1:もっとも、官房長官が閣議を経ず勝手にやったことだという右翼の主張もあるため、せっかくの謝罪も日本人の手によって台無しにされているわけですが。