“悪の元凶たる財務省があの手この手で消費増税を画策しているのを、安倍首相や麻生財務相が必死に食い止めている”的な三流小説にもならない荒唐無稽なおとぎ話をよく見かけますね。
当たり前ですけど、財務省は財政規律を重んじ、財政健全化を求めています。
だって「健全な財政の確保」を任務として設置したのが財務省なんだから当然ですよね。
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=411AC0000000095_20171001_429AC0000000038&openerCode=1
それが気に入らないなら、財務省設置法第3条から「健全な財政の確保」を削ればいいだけです。衆参両院で過半数を押さえている自民党なら容易にできる話です。
“国の借金は資産があるのだから問題ない”と言ってる人もいます。
でも財政法にはこう書かれています。
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000034財政法
第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
第十一条 国の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終るものとする。
単年度会計とすることを定め、建設国債以外の赤字国債で予算を組むことを禁止しています。現在、赤字国債が発行されているのは毎年特例法を作っているからに過ぎません。毎年特例法で赤字国債を発行しなければならない状態は「健全な財政」とは言えないでしょう。実際、民主党菅政権の時、野党自民党は倒閣目的で赤字国債の特例法成立を妨害し、執拗に震災対応している菅首相の首を狙いつづけ、2011年8月に退陣に追い込んでいます。
「健全な財政の確保」を任務としている財務省としては、赤字国債特例法が成立しなかったとしても困らないように財源を確保し、歳出を抑えようとするのもこれまた当たり前のはなしです。公務員というのは基本的に法律の通りに動こうとしますから、財務省官僚が法律に忠実であろうとすれば、当然そうなるんですね。
つまり、検事が被告人を追及し、弁護士が被告人を弁護するように、課せられた役割を果たそうとしているに過ぎないわけです。
それが気に入らないなら、やはり法律を変えればいいだけです。
財政法第4条を改正して赤字国債を認めたり、単年度会計を改めて臨時軍事費特別会計のごとく一会計年度を複数年にまたがるようにしたりすれば、財務省が増税やら緊縮やらはあまり言わなくなるでしょう。もちろん、そんな野放図なことをやれば財政規律が崩壊して破綻するでしょうが、公務員というのは目先の法律に従ってさえいれば、だいたい満足する性質を持っていますから、自分が破綻の責任者にならない限り、その辺は許容するでしょう。
ですが、政治側もそんなことをやったりしませんね。
政府自民党も財務省も、財政法第4条を完全に満たしている状態が「健全」であることはわかっていて、その上で政治側は自分の代で破綻しなければいいという認識で赤字国債を許容し問題を先送りし、財務省は野放図に赤字国債が膨らむことを阻止しようとして生じた程度の対立に過ぎません。政治側があくまでごり押ししてきたら、財務省側はよほど法律に抵触するような要求でもない限り、逆らえません。だから、赤字国債だって特例法を作られて認めるしかなかったわけですし、その赤字国債の累積額もじりじりを増加されるのを受け入れる以外になかったわけです。
“モリカケ問題で財務省が安倍政権に貸しを作った(から消費増税せざるを得ない)”なんてこともあり得ないですね。
そのような「貸し」があったとして、それでも安倍政権が消費増税を延期した場合、財務省が不正の証拠をリークするなんてのは夢物語ですしね。だいたいモリカケ問題の最初の時期から、財務省は安倍首相を守るために自ら公文書改竄に手を染めてましたからねぇ。具体的な事実を見れば、どう見たって財務省は相当初期から安倍政権の言いなりでしたから、“安倍政権と財務省が対立している”なんて構図が出てこようはずがないでしょうに。