国際司法裁判所への提訴には賛成だが、まずは仲裁委員会じゃね?

産経のソースがはっきりしないどうにも飛ばしっぽい記事なので、信憑性は低いように思いますが・・・。
徴用工、日本単独で国際司法裁提訴へ 韓国の不当性周知 駐韓大使は召還せず(11/6(火) 7:55配信 産経新聞)

駐韓大使を召還しないってのは、少女像の時に戻すタイミングを失ったグダグダから少しは学んだということかもしれませんね。

で、この韓国ヘイト塗れの産経記事には色々と威勢のいいことが書いてありますが、ソースが「政府高官」くらいの記載で具体性に欠け、どうにも信憑性が低いように思います。例えば「政府は5日、韓国の元徴用工をめぐる訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる確定判決を出した問題で、韓国政府が賠償金の肩代わりを行う立法措置などを取らない限り、国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針を固めた。」と冒頭にありますが、別に官房長官や首相答弁で明言されたわけでもなく、自民・産経癒着ラインを通じたリークであろうと思われるんですよね。

もちろん匿名のリークってだけなら、それほど信憑税が損なわれるわけでもありませんが、問題は内容です。

「政府は(略)国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針を固めた」とある部分。

いや、今回の韓国大法院判決に対して行うならまず1965年日韓請求権協定第3条に基づく仲裁委員会への付託でしょう、と。

第三条
1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。
2 1の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。
3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。
4 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。

http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/JPKR/19650622.T9J.html

この仲裁委員会が機能しなかった場合に初めて、国際司法裁判所に提訴する意味が出てくるわけで、そこをすっ飛ばして“ICJに提訴するぞ!”と喚いているのは、どうにも“するする詐欺”にしか思えないんですよねぇ。

実際、安倍政権と産経新聞は独島(竹島)問題に関する国際司法裁判所への単独提訴をうやむやにして見送った前科がありますし。

と思ってたら、こういう報道が出てきました。やはりブラフですね。
産経新聞は安倍政権のために情報工作くらいはいくらでもやるでしょうし。

徴用工問題「手の内明かさず」=ICJ提訴報道で菅官房長官

11/6(火) 11:37配信 時事通信
 菅義偉官房長官は6日の記者会見で、韓国最高裁が日本企業に韓国人元徴用工への賠償を命じた判決をめぐり、日本政府が国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針を固めたとの一部報道について「(政府対応の)具体的内容は手の内を明かすことになるため差し控えたい」と述べるにとどめた。
 ただ、「韓国政府が早急に適切な措置を講じない場合、国際裁判も含めあらゆる選択肢を視野に毅然(きぜん)とした対応を講じる」との立場を改めて示した。
 菅氏はまた、「韓国政府の対応をまずは見極めたい」と述べた。 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181106-00000053-jij-pol

個人的な意見

タイトルに書いた通り、個人的には本件を国際司法裁判所に委ねることには賛成なんですよね。
さらにいえば、和解を妨害して韓国大法院判決を確定させた安倍の愚行も、個人的興味という意味では歓迎しています。和解では条件などが伏されたりして責任などが曖昧になってしまいがちなのに対して、判決ならそこが明確にされる可能性が高く、今回の判決はまさに明確にしてくれたわけですから。

韓国大法院多数判決による日韓請求権協定の解釈に対して、日本側が異議を唱え「この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争」が惹起するならば、まずは仲裁委員会、そして国際司法裁判所へと訴えることは個人的にですが、上記と同様の理屈で歓迎です。
仲裁委員会で和解協議が成立する可能性も無いとはいえませんが、これはまあ低いであろうと思います。

産経新聞などの嫌韓バカは日本が国際司法裁判所に提訴しても韓国側が応訴しないと決め付けていますが、文政権なら受ける可能性が高いと思いますよ。仮に韓国側が完全敗訴したとしても、国際司法裁判所判決ということなら韓国政府は国内的に対応を説明しやすいですしね。

ただまあ、韓国側が完全敗訴というのは可能性はかなり低いと見ています。国際司法裁判所としては、まず和解を勧めるでしょうしね*1。その時点で日本の安倍政権が崩壊して、安倍に懲りた日本の有権者がもう少しマシな人物・政党に政権を委ねることが出来ていれば、和解に応じる可能性も低くはないのですが、日本社会の中二病の深刻度を考慮するとそれは甘いかもしれません。

和解を拒否する場合、国際司法裁判所の判決が出るまでには平均4年程度かかりますから、日本社会の目論見どおりに原告の寿命が尽きる可能性がかなり高いでしょうね。ただ、訴訟自体は終わるわけではありませんので、一応判決が出るはずで、その場合の可能性としては日本寄りの判決が60%、韓国寄りの判決が40%くらいかなと見ています。
いずれにしても結果が出るまで短くとも5年はかかるでしょうから、もし提訴したら安倍政権は巨大な地雷を日本社会に残すことになるわけですが。


一応言っときますが、原告に対する人道的配慮を考慮した上での個人的意見としては、“日本政府・企業はくだらない遅延措置で妨害することなく、とっとと賠償しろや”ですよ。
あくまで知的好奇心という個人的興味としては、判決を見てみたいという思いもあるという話です。




徴用工、日本単独で国際司法裁提訴へ 韓国の不当性周知 駐韓大使は召還せず

11/6(火) 7:55配信 産経新聞
 政府は5日、韓国の元徴用工をめぐる訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる確定判決を出した問題で、韓国政府が賠償金の肩代わりを行う立法措置などを取らない限り、国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針を固めた。また、裁判手続きに関する韓国側との交渉、折衝などが必要なため、長嶺安政駐韓大使の召還は行わない。
                  ◇
 ICJで裁判を開くには原則として紛争当事国の同意が必要で、手続きには(1)相手国の同意を経て共同付託する(2)単独で提訴した上で相手国の同意を得る-という2つの方法がある。政府は韓国から事前に同意を得るのは難しいことから単独提訴に踏み切る。
 その場合も韓国の同意は得られないとみられ、裁判自体は成立しない可能性が高い。だが、韓国に同意しない理由を説明する義務が発生するため、政府は「韓国の異常性を世界に知らしめることができる」と判断した。
 河野太郎外相は既に、徴用工問題が1965(昭和40)年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」としていることや、判決が国際法に照らしていかに不当かを英文にまとめ、在外公館を通じて各国政府やマスコミに周知させるよう指示している。
 政府は今回の判決だけでなく、2015(平成27)年の慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意に対する韓国側の不履行など、度重なる韓国の不誠実な対応についてもアピールする機会とする考えだ。
 政府は今回の判決は日韓基本条約の基盤を崩壊させかねない問題だと重視しており、政府高官は「今回は徹底的にやる」と語る。韓国側が現在、「韓国政府内でいろいろと判決への対応を検討している」と釈明しているため当面は対応を見守るが、外務省幹部は「おそらく韓国は有効な措置は取れないだろう」とみている。
 この問題をめぐり、安倍晋三首相は1日の衆院予算委員会で、「国際裁判も含めあらゆる選択肢を視野に入れて毅然(きぜん)として対応していく」と述べていた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181106-00000042-san-pol