憲法学者の井上武史氏が離婚後共同親権に好意的なツイートをしています。
離婚後共同親権に関しては、同制度が憲法違反であることを訴える訴訟が提起されています。
訴えの趣旨は、離婚によっていずれか一方の親が親権を放棄させられる現行制度は両性の平等に反するというもののようですが、個人的にはこれで違憲判決が出るのは難しいだろうと見ています。
最高裁の判断として考えられるのは、“民法は離婚によって一方の親に親権を放棄させることを定めているものの、いずれの性別であっても放棄させられる可能性があることから平等に反しているとは言えない”という理屈です。
個人的には詭弁としか言いようがないんですが、最高裁はこういう理屈をよく使います。
現状で離婚後単独親権制度に違憲判決が下す可能性は低く、また離婚後共同親権とする立法が成立する見込みも当面ありませんので、日本が共同親権に移行するにはまだ10年単位での時日を必要とすると考えています。
それはさておき。
確認した限りでは井上氏は明確に離婚後単独親権を違憲とみなしているわけは無さそうですが、それでもかなり好意的な態度をとってはいるようです。
難しいのは、例外なき強制的単独親権を定めた民法819条2項を違憲としたとき、その事後処理をどうするかということ。婚姻中の共同親権が存続するとしても、子の居所指定権や必要的合意事項など新ルールが必要となります。最高裁は婚外子相続分差別規定事件でも事後処理の問題で違憲判断を躊躇しました。
— 井上武史 Takeshi INOUE (@inotake77) December 4, 2018
この辺りの一連のツイートなどはかなり離婚後共同親権に好意的です。
ただ、井上氏の憲法に対するスタンスを考慮すると、現行単独親権制度が違憲とは考えていないはずだと思います。
なぜなら、井上氏は以前、集団的自衛権行使について違憲ではないとみなしており、その時の論理は憲法上に集団的自衛権行使の「明確な禁止規定は存在しない」から、でした。
http://scopedog.hatenablog.com/entry/20150618/1434560623憲法には、集団的自衛権の行使について明確な禁止規定は存在しない。それゆえ、集団的自衛権の行使を明らかに違憲と断定する根拠は見いだせない。
http://www.tv-asahi.co.jp/hst/info/enquete/25.html
もっとも同じ理屈により、離婚後共同親権制度も違憲ではないというスタンスとも解釈できます。
集団的自衛権行使についても政府が憲法解釈を変えるだけで良いとも言っていました。
集団的自衛権の行使禁止は政府が自らの憲法解釈によって設定したものであるから、その後に「事情の変更」が認められれば、かつての自らの解釈を変更して禁止を解除することは、法理論的に可能である(最高裁が「判例変更」を行うのと同じ)。
http://www.tv-asahi.co.jp/hst/info/enquete/25.html
以上を踏まえると離婚後共同親権問題に関する井上氏のスタンスは、現行制度が憲法違反だとは考えておらず民法等の改正で対応すべき問題と考えている、と言えそうですね。
ただ現実問題としては、違憲判決が出ない状況で民法等の改正に立法府が動くかというと可能性はかなり低いといわざる得ないのですけどね。