家裁は面会交流を“ゴリ押し”しているとは言えない。

と実質的な離婚後共同親権反対派の千田有紀氏は述べています。最近のツイートとあわせるとどうも民法766条改正を機に家裁が面会交流をゴリ推しするようになったと主張しているようです。
(というか、そもそも「会わせたくないなんてふんわりした御託なんてとても通らない」のは当たり前だと思いますけどね)
ですが、司法統計を見る限り、家裁が面会交流をゴリ推ししているとはちょっと言えません。
家裁の関わる調停離婚・審判離婚での面会交流の取り決めに関する統計は2013年からとられています(民法766条改正施行は2012年4月から)。

2013年から2018年までの統計を通じて、成立した離婚調停事件または審判事件で未成年の子の処置をすべき件数は年間約2万件で推移しています。このうち、何らかの面会交流の取りめが為されたのは約1.3~1.4万件程度(約65~70%)です。この取り決めの中には別途協議することも含まれていますので、定期的に面会交流するという取り決めがなされたものに絞ると、約8000件程度(約40%)にまで減ります。
さらに、月1回以上の頻度で面会交流すると取り決められた件数となると約7000件程度(約35%)にまで減ります。

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2013年から2018年までの成立した離婚調停事件および審判事件における面会交流の取決め状況

改正された民法766条では「父又は母と子との面会及びその他の交流」について「協議で定める」か家裁が定めることになっていますが、実態としては月1回以上の面会交流が定められること自体が事件の3分の1程度に過ぎないわけです。

第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#2777

ちなみに離婚事件とは別個に起こされる面会交流事件の統計でも傾向は変わりません。
面会交流事件の件数は2001年には2699件でしたが、増加の一途を辿り、2018年には11866件にまで増えています。調停・審判で面会交流の取り決めが成立したと見られる認容・調停成立率で見るとこれも徐々に増加傾向にはあるものの、2001年に約50%だったものが2018年に約70%になっている程度です。なお、2012年の民法改正の前後で特に傾向に変化は見られません。
これも、定期的に面会交流するという取り決めがなされたものに絞ると、2001年に約40%だったものが2018年に約50%に増加した程度になります。
さらに、月1回以上の頻度で面会交流すると取り決められた件数となると、2001年に30%弱だったものが2018年になっても約40%に増加したに留まります。

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2001年から2018年までの面会交流事件での取決め状況

面会交流の具体的な内容が決められる離婚事件は離婚事件全体の半分以下の約40%。面会交流事件でも半分程度(2018年は52.1%)。

これらの司法統計を見る限り、家裁は面会交流を“ゴリ押し”しているとは到底言えそうにありませんね。