70年かけても女性候補者率が2割に満たない体たらくでは法律で努力を求められても仕方ないとしか言えない

「国と国民の命を預かる仕事に男女を持ち込まないでほしい」「候補者男女均等法」に対する自民党部会で反対してきた小野田紀美議員の意見
今さらこんな低レベルの「意見」が出ているのが何とも。

まず、個人的な意見を表明しておきます。
本来、候補者を男女均等にするための努力目標などは不要であるべきだろうというのが基本的な考えです。ただしそれには前提条件があり、選挙に立候補する上で男女間に制約の差がない、というのがそれです。

もちろん、現在日本において、立候補に際し法的制約に男女間差があるわけではありませんが、制約というのは別に法的なものに限りません。経済的あるいは社会的なものも制約の一つであり、それは現在日本においても尚男女間差を生み出す制約となっています。
これも基本的な認識としてですが、政治家としての根本的な資質の点において性別による差は存在しないと考えています。したがって、教育・社会参加の機会や経済的条件において男女間に差がないと仮定した場合、政治家を志す候補者の人数も男女同等になるはずだという認識を私は持っています。
ところが先の衆院選(2017年、第48回)での候補者1180人中、女性はわずか209人、17.7%に過ぎませんでした。そしてそのわずか17.7%という数字が戦後最高の数字というのが現在日本の状況です。

女性に参政権が認められてから70年以上経っているにもかかわらず、尚候補者中の女性の割合は2割に届かない状況なわけです。
つまり法的制約を取っ払いさえすれば後は放置しても自然に女性候補者が増えていく、なんてことにはならない、あるいはそのような自然増を待っていたら100年単位で時間が過ぎ去ってしまう、と言う問題があるわけです。

その状況を踏まえれば、人為的な施策として女性候補者を増やすことを推奨することには意義があると考えますし、そのために仮に“有能な男性が排除されかねないという懸念”を認めるにしても、許容されるべきだと考えます。

もちろん、候補者数を男女均等にすることが最終的な目標であってはならず、女性候補者が増えにくいという経済的・社会的制約を解消していくことにつなげる必要があるわけで、推進する側としてそれを見失ってはいけないのも確かですけどね。


それを踏まえて、小野田紀美氏のツイートについて。

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 22:36:27
①候補者の均等といいますが、私は候補者に女性が選ばれづらいと感じたことはありません。自民区議の公募を受けた時、いくつかの地域の公募に応募しましたが多数OK頂きましたし、北区の公募も面接20人くらいのうち私含み2人いた女性は、3人の公募枠に両方選ばれました。女性不利ではなかった。

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 22:42:22
②ただ、公募に応募してくる男女比を考えると圧倒的に女性が少ないように思います。「候補者に選ばれづらい」のではなく「そもそもやりたい人が少ない」のが現実かと。理由は様々あるでしょうが、ひとつは政治家の仕事って「家に奥様がいて家庭を全部任せて24時間仕事に費やせる」環境前提な所…?

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 22:49:57
③早朝から夜までまさに24時間戦えますか状態で土日も無し、年末年始も無し、という労働環境をプライベート捨てて望む女性は少ないのではないかと思います。環境をそのままに、女性の数を均等にと無理矢理増やそうとしても良いことにはならない気がします。特に自民系は仕事に地域にどっぷりですし。

2017年衆院選での主要政党別の女性候補者の割合です。

党名 男性候補 女性候補 候補者総数 女性候補者率
自民党   307 25 332 7.5%
公明党   48 5 53 9.4%
共産党   185 58 243 23.9%
維新の会  48 4 52 7.7%
社民党   17 4 21 19.0%
希望の党  188 47 235 20.0%
立憲民主党 59 19 78 24.4%
全体    971 209 1180 17.7%

新人候補に限定するとこう。

党名 男性候補 女性候補 候補者総数 女性候補者率
自民党   42 2 44 4.5%
公明党   18 2 20 10.0%
共産党   170 52 222 23.4%
維新の会  27 3 30 10.0%
社民党   14 4 18 22.2%
希望の党  83 41 124 33.1%
立憲民主党 29 13 42 31.0%
全体    473 157 630 24.9%

単純に「公募に応募してくる男女比を考えると圧倒的に女性が少ない」のが原因ならば、政党別でこんなに女性候補者率の差が出るというのは不可解ですね。


小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 22:52:44
④「女性の数が増えれば環境も変わる」という人もいますが、候補者の数は無理矢理均等にできても、最終的に選挙で選ぶのは有権者です。有権者はどういう人を選ぶのでしょう。以前、区議だった時こんなことがありました。夜の会合で例によって「結婚しろ子供産め」という事を有権者に言われ続け、

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 22:54:49
⑤2次専で興味ないと言っても聞かないので「じゃあ、仮に私が結婚して子供産んだとしましょう。この時間はとうに保育園のお迎えですね。夕飯も作らなきゃだし家のことするとこういう会合には出席できなくなるけどいいんですね?」と言ったら返ってきた言葉は「そんな奴に票入れねえよ」でした。

そんな有権者ばかりではありませんし、そういった意識を変えるという意味でも女性候補者数を増やすこと自体に意味があるという話にしかならないですけどね。あと「保育園のお迎え」とか夕飯を作るとか、それ別に女性がやらなきゃいけないわけじゃないですよね?

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 23:04:10
⑥そんな現実もあるなかで、有権者の意識が変わらないまま数の均等を目指して選挙に出て当選するのでしょうか…。本当に女性議員を増やしたいなら、女性の立候補希望者が少ない中で無理矢理候補者の男女均等を目指すのではなくて「立候補したい、政治がやりたい」と思える環境にしていく事ではないのか

候補者男女均等法の成立自体が、有権者の意識を変えるきっかけにもなるわけですが、そういう視点は無いようです。
「「立候補したい、政治がやりたい」と思える環境にしていく事」が大事なのは誰でもわかりますが、これだけでは具体性に欠けますね。まあ、具体的な話としては、議員の産休・育休、子連れ登院の是非とか色々あるわけですが、そういったことって女性議員がいないと話が進まないのも現実ですよねぇ。
それに先の「家のことする」のは女性の役目だという思い込みも、女性が立候補することを躊躇する心理的障壁になってるんじゃないですかね。

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 23:06:36
⑦まぁ、それ以前に私は政治家に男も女もないと、男女云々の前に「政治家」だと思っているので均等にする必要もないと思っているのですが。女性議員でないと女性の意見をだせないというような理論って、老若男女国民の声を背負って命がけで働いている議員に失礼じゃないですか?

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 23:09:24
⑧私は性別は女ですが、私に一票を託してくれた老若男女全ての方々のイタコとなって思いを背負って政治家をしているつもりですし、女性といったって十人十色、独身もいれば既婚者もいる、子供がいる人もいるしいない人も。立場や思いなんて人の数だけあって、性別でくくれるようなものではないのでは?

政治家は国民全体の代表であって男女関係ないというのは、それはそれで立派な意見だと思いますが、それを敷衍すると選挙区といった特定の地域の代表になるのもおかしな話で、比例代表大選挙区で構わないともなりますね。「女性議員でないと女性の意見をだせないというような理論」は納得できないけど、選挙区選出の議員でなければその選挙区の意見はだせないという理論には納得してるんですかね?

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 23:16:10
⑨あと、仮に候補者選定の時に政治家として100点の資質をもつ男性と、60点の女性が候補だったとして、男女比均等のために60点の女性候補に選ばざるをえなくなるのなら、それはあまりにも国益に反する行為です。大切なのは議員の男女比をそろえることではなく、日本の国益に資する議員を選ぶこと。

「政治家として100点の資質をもつ」自民党議員を屏風から出してください、というのは冗談にしても上で「仮に“有能な男性が排除されかねないという懸念”を認めるにしても」と書きましたが、当選した方々を見渡してみても、排除されても惜しくない有能から程遠い連中がごまんといるじゃないですか。
候補者選定で政治家としての資質を評価している自民党の人はそもそも、女性に「保育園のお迎え」とか夕飯を作るとかと求めてるから女性の点数を低くつけてそうですしね。
その方がよほど「国益」を毀損していると思いますよ。

それでも尚、“有能な男性が排除されかねないという懸念”があるのなら、努力義務しかない候補者男女均等法に縛られず候補者にすればいいわけですし、男女比を偏らせてでも推薦したい有能な候補者であることを訴えれば良いだけですね。自民党は今でさえ、女性候補者の比率が主要政党中最も低い政党なんですから、何を今さらという感じです。

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 23:19:40
⑩無理矢理の均等は能力をもつ男性への逆差別にもなりかねませんし、女性議員だって女性というだけで「どうせ下駄履かせてもらって議員になったんだろ?」というレッテルを貼られかねないので非常に迷惑です。男とか女とかそんな事はどうでもよくて、ただただ政治家として良きも悪きも評価をしてほしい

小野田紀美自民党 参議院議員】 @onoda_kimi 2018-05-16 23:24:31
⑪まだまだ思うところは沢山ありますが、前述のようなことを自民党の部会で発言して反対し続けましたがだめでした…すみません。文字数の関係もあり、誤解を招く所もあるかもしれませんが、前述が私のおおまかな考えです。国と国民の命を預かる仕事に男女を持ち込まないでほしいと強く思います。

「国と国民の命を預かる仕事に男女を持ち込まないでほしい」とか言ってますけど、女性に参政権が認められてから70年以上も経過しているにもかかわらず、女性が「「立候補したい、政治がやりたい」と思える環境」すらろくに整備できない時点で「女性議員でないと女性の意見をだせない」と言われても仕方がない状況を作ってきたわけで、そのほとんどの期間において政権にあった自民党の責任は軽くは無いんですよね。

「国と国民の命を預かる仕事」の中には、女性が「「立候補したい、政治がやりたい」と思える環境」を整備することは含まれてなかったんですかねぇ。



日本政府認定拉致被害者である田中実氏に関する報道に対する日本政府の対応

2014年の段階で北朝鮮が田中実氏について入国の事実を確認した旨を日本政府に通達していた、という報道がありました*1
参考「田中実氏が北朝鮮に入国していたという情報を安倍政権はなぜ4年間も隠蔽したのだろうか?

その後、特に追加情報が出ておらずどうなったのかわからなかったので、とりあえず国会での質疑を調べてみました。

今のところ、検索にひっかかるのは2件。2018年3月20日と4月2日のみです。

2018年3月20日

第196回国会 安全保障委員会 第2号
平成三十年三月二十日(火曜日)
    午前九時開議

○渡辺(周)委員 では、最後に、田中実さんの事案について伺いたいと思うんですが、二〇一四年に、北朝鮮に入国した、生存しているという情報、ただし、本人は帰りたくないと北朝鮮側が言っているということが実はあったということが報道されましたけれども、これはストックホルム合意の、一四年五月の前の話です。
 ですから、これは交渉を有利に引き出すための、本当の話、真偽というのはわからないんだけれども、またこの時点で出てきました。これは、ひょっとしたら、北朝鮮側が何らかの日朝会談を考えているのか、それとも、日朝会談を何とか実現の道のりとするために、実はこういう話があるということで出てきているのか定かではありませんが、この田中実さんが、この方は神戸のラーメン店の店員さん、成田から、たしかオーストリアかどこかに行くという中で行方不明になったんです。その先、行方不明になったんですが、この田中実さんのことにつきまして、この情報について、真偽というものは政府はいかに把握していますでしょうか。伺います。

○河野国務大臣 拉致被害者については、日ごろから情報収集に努めているところでございますが、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、その具体的な内容について一々お答えをすることは差し控えたいと思います。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/196/0015/main.html

2018年4月2日

第196回国会 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会 第3号
平成三十年四月二日(月曜日)
    午後一時開議

○江田(憲)委員 (略)
 そこで、先月、一部報道ではありますが、お二方の拉致被害者の方の情報が報道されたんですね。
 三月十六日の共同通信の報道では、拉致被害者に認定されている田中実さんが、実は、北朝鮮が二〇一四年、日本側との接触で、入国していた、我々の立場では入境していたと伝えていたことが十六日わかった、しかも日本政府関係者が明らかにした、こういう報道なんですね。
 それから、二十六日には同じく共同通信が、これは今まで全く言及のなかった、金田、これはリュウコウさんとお読みするんですかね、金田龍光さんについても、北朝鮮が二〇一四年の日本側との接触で、入国していた、入境していたと伝えていたことが二十五日わかった、これも日本政府関係者が明らかにしたと書いてあるんですね。
 この事実関係をはっきりさせていただきたいと思います。

○加藤国務大臣 一つ一つのマスコミの報道に対するコメントは差し控えたいと思いますが。
 ただ、今お話がありました田中実さんについては、拉致認定がされておられる。それから、第三回の協議、日朝国交正常化交渉、これは平成十四年十月、クアラルンプールで行われた、そのときの第三回の協議において、北朝鮮側から、北朝鮮に入境したことは確認できなかった旨の回答があったという方であります。
 それから、金田さんは、金田タツミツさんとお読みするというふうに思いますが……(江田(憲)委員「タツミツさん、失礼しました」と呼ぶ)これは拉致の疑いが排除されないと我々が考えている方でございます。
 ただ、そのお二人も含めて、拉致被害者の方については平素から情報収集に努めているところでありますけれども、今後の対応にも支障を来すというおそれがあることから、一つ一つについてはコメントは差し控えさせていただいているところでございますが、いずれにしても、一日も早く全ての拉致被害者の方の帰国に向けて努力を更に傾注していきたいと考えております。

○江田(憲)委員 いや、本当に北朝鮮が認めたのであれば、それは公表するのが当たり前でしょう、政府は。何が差しさわりがあるんですかね。
 二〇一四年といえば、五月にはストックホルム合意がありましたよね。その場でも一切こういう情報についてはもたらさなかったんですか。

○加藤国務大臣 先ほど申し上げた、報道の一つ一つについてのコメントは差し控えさせていただきたいということを申し上げたところでございます。

○江田(憲)委員 いやいや、事実関係を聞いているんです、報道がどうあろうが。まさに、先ほど申し上げたような拉致家族会の皆さん始め関係者の皆さんは、喉から手が出るほど欲しいんですよ。まさにこんな、北朝鮮が今まで認めなかった入国を一転して認めたという情報があるのであれば、それは真っ先に政府として公表しなきゃだめでしょう。そんな情報があるのに、また隠蔽したとなりますよ、これは。森友、加計問題じゃありませんし、何が支障があるか、私はわからない。
 未確認ならば、なかなかそれは公表までいかないけれども、北朝鮮が本当に、これがもし事実とすれば、特に田中さんについては当然我々も認定しているわけです、当然、北朝鮮も認めたということは公表すべきだと思いますけれども、それを公表していない、今みたいな、はぐらかすということは、それは間違いだということですね、この報道は。これははっきりしていただかないと、このぐらいの情報ははっきりさせていただかないと、何の情報提供だと。さっきの大臣の政治姿勢、節目節目とか云々も全部、何か本気度を疑わせるような話になりますから。田中実さんについてはいかがなんですか。はっきりさせてください。

○加藤国務大臣 一つ一つについて、これはどうだ、あれはどうだと言われても、これはなかなか……(江田(憲)委員「一つ一つが大事なんですよ」と呼ぶ)いやいや、だから一つ一つについて申し上げられても、それについて、一つ一つの状況について申し上げるということは、今後の対応にも支障を来すということがあるわけでございます。
 ただ、今お話がありましたように、それ自体、今の話、政府の関係者で云々ということも含めて報道なされているわけでありますけれども、それについてはコメントを差し控えなければならないというふうに思いますけれども、一般論として、一般論として申し上げさせていただければ、新たな事実というものが我々としてしっかり確認されれば、それはそれとして対応していくということになるんだろうというふうに思います。

○江田(憲)委員 いや、全く理解ができないんです。
 なかったのならばなかったと。それから、あったのであれば、まずはこの田中実さんの御家族や関係者の方には当然知らせないと。そもそも北朝鮮が認めたのであれば、その話ぐらいは。
 では、なかなかそういう今の立場ではあれかもしれませんけれども、一般論として、個別の拉致被害者の方の情報がこういう形で入れば、それはちゃんと伝えているんですね。

○加藤国務大臣 あくまでも一般論として申し上げれば、そうした意味において、政府から提供できるものについてはしっかり提供させていただいている、それぞれの御家族に対して提供させていただいているということでございます。

○江田(憲)委員 本当に、れっきとしたメディアがこういう報道をしている。これは、申しわけないけれども、後で判明したとなると、またあの森友、加計と同じになりますよ。なかったのならばなかったと、事実関係をはっきりさせることが家族会、家族の皆さんのためにもなると私は思いますからね。全く闇の中ですよ、こういう報道があって。間違いなら、ちゃんと共同通信に間違いだといって抗議すべきでしょう。だけれども、否定もされない、肯定もされない。
 だから、こういう状況だから、国民にとっては、家族会の皆さんは当たり前のことですが、本当に国民にとってはわけがわからないですよ、この状況。だから、小泉政権以降、全く一ミリも進んでいないと言われるんですよ。小泉政権以降、拉致問題の解決に向けて一ミリも進んでいないじゃありませんか、美辞麗句は躍っても。
 ぜひ、この関係は今後どういうふうになるのかしっかり私も見きわめさせていただいて、またしかるべき場で政府の対応を問いただしていきたいというふうに思います。
(略)

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/196/0142/main.html

安倍政権の回答は否定も肯定もせず「報道の一つ一つについてのコメントは差し控えさせていただきたい」というゼロ回答。
河野外相は「今後の対応に支障を来すおそれがある」などと言っていますが、理由としては成立していません。
田中実氏の北朝鮮入国情報を2014年に日本政府が知っていて現在まで公表していないのなら日本政府の背信行為でしかありませんので、違うなら違うと否定する以外の選択肢は日本政府にはありません。
そもそも北朝鮮側は、田中実氏の北朝鮮入国情報を2014年に日本側に伝えたという報道内容が正しいかどうかを当然に把握していますから、「今後の対応に支障を来すおそれ」自体が虚構です。まあ、「今後の対応」とやら、拉致被害者家族に対する対応を指すのであれば別ですが。




政府認定拉致被害者(生存帰国者以外)

被害者名 北朝鮮の回答 日本側の反論
横田めぐみ 「1994年 4月に死亡」           遺骨とされた骨の一部から 別人のDNAが検出
田口八重子 「1986年 7月に自動車事故で死亡」     事故記録に本人の名前なく、裏付ける資料の提出なし
市川修一  「1979年 9月、海水浴中に心臓麻痺で死亡」 裏付ける資料等の提出なし
増元るみ子 「1981年 8月に心臓麻痺で死亡」      裏付ける資料等の提出なし
石岡亨   「1988年11月にガス事故で死亡」      裏付ける資料等の提出なし
松木薫   「1996年 8月に交通事故で死亡」      遺骨とされた骨の一部から別人のDNAが検出
原敕晁   「1986年 7月に肝硬変で死亡」       裏付ける資料等の提出なし
有本恵子  「1988年11月にガス事故で死亡」      裏付ける資料等の提出なし
曽我ミヨシ 「入国を否定」              警察は拉致の実行犯を特定し、北朝鮮工作員を国際手配
久米裕   「入国を否定」              警察の捜査で拉致が明らかに 北朝鮮工作員を国際手配
松本京子  「入国の確認できず」           警察の捜査で拉致が明らかに
田中実   「入国の確認できず」           警察の捜査で拉致が明らかに
http://www.nhk.or.jp/gendai/special/23/

*1:2018年3月16日、共同通信など

金桂冠第1外務次官の談話は「瀬戸際戦術」とかではなくて、経済制裁解除を核放棄に先行させないことを容認するというメッセージじゃないのかな

この件。

北朝鮮、核放棄先行を拒否=米朝首脳会談の再考警告―強硬派のボルトン米補佐官攻撃

5/16(水) 17:23配信 時事通信
 【ソウル時事】朝鮮中央通信によると、北朝鮮の金桂冠第1外務次官は16日、談話を発表し、強硬派のボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)らが北朝鮮に対する制裁緩和より核放棄を先行させる「リビア方式」の適用を主張していると非難し、改めて拒否した。
 6月12日に予定されている史上初の米朝首脳会談の取りやめを示唆し、トランプ政権をけん制する「瀬戸際戦術」を繰り出した。
 北朝鮮はこれまでも、経済制裁の解除など「見返り」を得ながら進める段階的な非核化を要求している。長年対米外交を統括している金桂冠氏が今回、「ボルトンに対する拒否感を隠さない」と攻撃したことで、短期の非核化を目指している米国との水面下での調整が難航していることを浮き彫りにした。
 金氏は「われわれは、朝鮮半島の非核化の用意を表明し、そのためには米国の敵視政策と核脅威による恐喝を終わらせることが先決条件になると数度にわたって明言した」と強調。「トランプ米政権が一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、そのような対話にもはや興味を持たないだろう」と表明し、米朝会談の再考を警告した。 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-00000089-jij-kr

米国による軍事的圧力と経済制裁をまとめて「米国の敵視政策」と解釈すると、核放棄先行を要求する米国に北朝鮮は制裁解除先行を主張して対立しているという理解になります。ただ朝鮮中央通信記事の記載を見ると、以下のような記載もあり、少し違った印象を受けます。

미국이 우리가 핵을 포기하면 경제적보상과 혜택을 주겠다고 떠들고있는데 우리는 언제한번 미국에 기대를 걸고 경제건설을 해본적이 없으며 앞으로도 그런 거래를 절대로 하지 않을것이다.

機械翻訳
アメリカが私たちが核をあきらめれば経済的補償と恩恵を与えると騒いでいるので私たちは堤防一度アメリカに期待をかけて経済建設をしてみたことがなくて今後もそのような取り引きを絶対にしないだろう。

これ、米国の経済支援は不要だと言ってるわけで読みようによっては経済制裁解除や経済支援については核放棄に先行させる必要が無いと北朝鮮が表明しているとも取れます。
上記引用の少し前に以下の「われわれは、朝鮮半島の非核化の用意を表明し、そのためには米国の敵視政策と核脅威による恐喝を終わらせることが先決条件になると数度にわたって明言した」という記載があります。

우리는 이미 조선반도비핵화용의를 표명하였고 이를 위하여서는 미국의 대조선적대시정책과 핵위협공갈을 끝장내는것이 그 선결조건으로 된다는데 대하여 수차에 걸쳐 천명하였다.

機械翻訳
私たちはすでに朝鮮半島非核化用意を表明したしこれのためではアメリカの対朝鮮敵対視政策と核脅威恐喝をけりをつけることがその先決条件になるというのに対して数回にかけて明らかにした。

上記二つの引用を考慮すると、北朝鮮は米国による軍事的圧力と経済制裁を分けて考えていて、経済制裁解除は核放棄に先行しないことを容認するが、軍事的圧力の解除は核放棄より先行させなければ認めない、という考えであることが読み取れます。
そうすると、落としどころとして以下の3段階を思い描いているのではないかと思えます。

(1)米国の軍事的圧力の解除>(2)核放棄完了>(3)経済制裁解除

(2)>(3)は米国としても異論は無いでしょうから、論点は(1)の具体的な中身ということになり、朝鮮戦争終結は勿論含まれているでしょうが、それに加えて米韓合同軍事演習や在韓米軍の取り扱いあたりが現在、水面下での議題になっているのかも知れません。



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5月16日付の朝鮮中央通信による米韓合同演習(マックス・サンダー)に関する記事とそれに付随する話

北朝鮮 南北閣僚級会談の中止を表明(5月16日 5時24分)

北朝鮮が16日に予定していた南北閣僚級会談を突如中止することを表明しました。
日本側では南北・米朝関係が再び緊張化することを歓迎しているかのようなコメントが目立ちます。
北朝鮮は信用できない”“どうせ裏切る”といった先入観でものを見るようによく調教されている感じです。
NHK記事でも「来月の米朝首脳会談の中止の可能性もちらつかせてトランプ政権をけん制」と表現しています。

では北朝鮮はどういう理由で南北閣僚級会談中止を表明したのでしょうか。

理由として挙げているのは、5月11日から25日まで実施される米韓合同軍事演習(マックス・サンダー)で、特にB-52戦略爆撃機F-22ステルス戦闘機の参加についての懸念です。
参加機数は約100機で例年通りの規模で、2017年12月の米韓合同軍事演習(ヴィジラント・エース)での230機よりも少ないのですが、F-22の機数は2017ヴィジラント・エースで6機だったものが2018マックス・サンダーでは8機に増え、B-52の参加も予定されています。
この辺が、北朝鮮にとって脅威に感じられたということでしょう。

2017ヴィジラント・エースではB-1爆撃機も参加しましたが、その時点では南北関係はいまだ緊迫した状態でした。南北首脳会談を経た現時点において、戦略爆撃機を参加させた合同訓練は確かに、緊張緩和に逆行すると言えます。

朝鮮中央通信記事)
이번 훈련은 남조선강점 미제침략군과 남조선공군의 주관하에 미군의 《B-52》전략핵폭격기와 《F-22랩터》스텔스전투기를 포함한 100여대의 각종 전투기들이 동원되여 25일까지 진행된다.
내외여론들은 이번 훈련이 력대 최대규모라고 하면서 이는 우리에 대한 《최고의 압박과 제재》를 계속 가하려는 미국과 남조선의 변함없는 립장의 반영이라고 평하고있다.
남조선전역에서 우리를 겨냥하여 벌어지고있는 이번 훈련은 판문점선언에 대한 로골적인 도전이며 좋게 발전하는 조선반도정세흐름에 역행하는 고의적인 군사적도발이다.

別の米韓合同軍事演習フォール・イーグルは今回の南北緊張緩和に歩調を合わせ、平昌五輪を理由に時期をずらした上に期間も短縮させ、空母の参加も見送りました。あくまで米韓の自発的な対応としての規模縮小の体を取りましたが、明らかに北朝鮮に対する譲歩ですし、この米韓の譲歩に対応して、北朝鮮側も米韓合同軍事演習実施について容認するという形で譲歩しています。

明確な条件での合意があるわけでは無いでしょうが、2018フォール・イーグルでは北朝鮮が米韓合同軍事演習を容認するという譲歩をし、米韓は自発的に演習規模を縮小するという譲歩をしていたと言えます。
おそらく北朝鮮は、2018マックス・サンダーでも米韓側に同様の譲歩を期待していたのでしょうし、南北首脳会談の流れから見てもそれ自体が不当な期待とも思いません。そのため、報道されているようなB-52の参加まで含む例年と同等の“自発的な譲歩のない”規模での合同演習が完遂される前に、南北閣僚級会談の中止という形で意思表示をした、という感じに見えます。

さて、これに対して米国防総省は、合同演習は「防衛的な性質のもの」だと主張しました。

国防総省「防衛的な性質のもの」

アメリカ国防総省のマニング報道部長は15日、声明で、現在、実施中の韓国軍との共同訓練について「目的は韓国を守るための同盟の能力を強化することにあり、防衛的な性質のものであることは何十年にもわたって明確に示され、今も変わっていない」として、あくまで防衛目的の定期的な訓練だと強調しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180516/k10011439981000.html

ただまあ「あくまで防衛目的の定期的な訓練」ならばB-52戦略爆撃機は不要ですから、これを言葉通り受け止めるわけにはいきませんし、当然北朝鮮もそう感じているでしょう。そして北朝鮮がそう感じていることを韓国も米国も朝鮮中央通信記事から間違いなく読み取ったはずです。

で、こういう動きになったと。
実施中の韓米演習にB52参加せず 北朝鮮の南北会談中止と関連か(5/16(水) 9:56配信)

朝鮮中央通信記事が名指ししていた2機種のうち一つであるB-52戦略爆撃機の参加を見送る方向で動く見込みのようです。

実際この通りにB-52が不参加となれば、当然北朝鮮はその意図を読み取るでしょうから、おそらくそれで対話の方向に戻るでしょうね。

日本政府と日本人の多くにとっては不本意かも知れませんけど。




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産経新聞、また印象操作。与野党双方の譲歩による国会正常化を野党の“完敗”と歪曲

例によって産経新聞

戦略なき審議拒否に限界、折れた野党 「18連休」批判で追い込まれ

5/8(火) 8:30配信 産経新聞
 18日間の国会審議拒否を続けた立憲民主党などの野党は審議復帰を決めたが、条件として求めた麻生太郎副総理兼財務相の辞任や柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)の証人喚問は勝ち取れなかった。与党は野党に構わず審議を進め、世論の批判の矛先は安倍晋三政権から「連休」をとり続ける野党へと変わっていった。目立った成果に乏しく、野党は国会戦術で完敗したといえる。
(略)
 自民党幹部は7日夜、迷走した野党の国会戦術をこうあざ笑った。「野党は税金泥棒といわれるのが嫌だろうからな」(田中一世、小沢慶太)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180507-00000562-san-pol

8億円値引きという形で税金を盗んだ安倍政権に対して異常に甘い産経新聞が事実を捻じ曲げるのはいつものことですけどね。

毎日新聞では国会正常化について次のように報じています。

 焦点は、柳瀬唯夫元首相秘書官の国会招致だった。強引な国会運営との批判を懸念する与党は、加計(かけ)学園問題を巡って、柳瀬氏が参考人招致に応じて2015年4月に同学園関係者と会ったと認めるという新たな「カード」を事実上提示。証人喚問にこだわっていた野党も、柳瀬氏の新証言を得られる確証を得てこれに乗った。「た野党も、柳瀬氏の新証言が得られる確証を得て、これに乗った。」*1
 加計学園は昨年1月、安倍晋三首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議で事業者に選ばれた。与党は手続きに問題がないとの証言を得るため、同会議メンバーの八田達夫大阪大名誉教授も招致することを野党に受け入れさせた。一方、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんでは財務省に決裁前文書を18日までに公開させ、自衛隊の日報問題では防衛省の調査チームに月内に結果を報告させることを決定。予算委集中審議は14日に加えて少なくとももう1回開くことで一致。いずれも野党の要求を受け入れた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180507-00000085-mai-pol

証人喚問を求める野党に対して、与党は参考人招致に加えて新証言を出すという条件を追加したわけですから、野党が与党側から譲歩を勝ち取ったと言える部分ですが、産経に言わせれば、要求が100%通ったわけではないから野党の「完敗」ということになるようです。
与党も野党に対して、擁護担当として国家戦略特区諮問会議メンバーである八田達夫氏を招致するという条件を飲ませたわけで、これは野党側の譲歩とも言えますが、野党にとってさほど拒否する理由があるようにも思えません。

まあ、柳瀬氏の参考人招致ですが、結果的には安倍政権に都合のいい記憶の無くし方をしていたようですね。首相秘書官が、紹介されてもいない相手から会いたいと言われるがままに会って国家戦略特区の話をしていながら、メモも取らず、首相に報告もせず、2014年には官邸には「笑っていいとも」に電話で出演した記録すら残っていると安倍が自慢げに語っていたにもかかわらず、加計関連の官邸訪問者の記録は突如として残されていないことになるとか*2

その意味では、参考人招致を与党に認めさせたのは野党の成功だったと言えるでしょうね。



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アメリカに対する「けん制」と呼ばれる北朝鮮の反応について

少し古くなりましたが、この記事。

2018.5.6 13:30

北朝鮮情勢】制裁、人権問題…「刺激すれば対話白紙に」 北朝鮮が米国をけん制

 北朝鮮外務省の報道官は6日、米国が米朝首脳会談を前に、核放棄するまで制裁を緩めないとしていることや、人権問題を取り上げる構えを見せていることなどを非難し「相手を意図的に刺激する行為は対話ムードに冷や水を浴びせ、情勢を白紙に戻す危険な試みだ」と米国をけん制した。朝鮮中央通信が伝えた。
 報道官は、北朝鮮が非核化の意思を示したことを、米国が制裁や圧力の結果だとアピールして「世論をミスリードしている」と反発。「われわれの平和愛好の意思を軟弱さと勘違いし、圧力や軍事的威嚇を追求し続けるのは、問題の解決に役立たない」と警告した。(共同)

http://www.sankei.com/world/news/180506/wor1805060028-n1.html

関連する朝鮮中央通信記事は多分これ。

조선외무성 대변인 공화국에 대한 압박도수를 높이고있는 미국에 경고

(평양 5월 6일발 조선중앙통신)
조선민주의의인민공화국 외무성 대변인은 미국이 우리에 대한 압박도수를 높이고있는것과 관련하여 6일 조선중앙통신사 기자가 제기한 질문에 다음과 같이 대답하였다.
최근 미국이 력사적인 북남수뇌회담에서 채택된 판문점선언에 밝혀진 우리의 조선반도비핵화의지와 관련하여 그 무슨 제재압박의 결과인듯이 여론을 오도하고있다.
이와 동시에 미국은 우리가 핵을 완전히 포기할때까지 제재압박을 늦추지 않겠다고 로골적으로 떠들어대면서 조선반도에 전략자산들을 끌어들이고 반공화국《인권》소동에 열을 올리는 등 조선반도정세를 또다시 긴장시키려 하고있다.
력사적인 북남수뇌회담과 판문점선언으로 조선반도정세가 평화와 화해의 방향으로 나아가고있는 이때 상대방을 의도적으로 자극하는 행위는 모처럼 마련된 대화분위기에 찬물을 끼얹고 정세를 원점으로 되돌려세우려는 위험한 시도로밖에 달리볼수 없다.
미국이 우리의 평화애호적인 의지를 《나약성》으로 오판하고 우리에 대한 압박과 군사적위협을 계속 추구한다면 문제해결에 도움이 되지 않을것이다.(끝)

機械翻訳

朝鮮外務省スポークスマン共和国に対する圧迫導水を高めているアメリカに警告

(平壌ピョンヤン)5月6日発朝鮮中央通信)
朝鮮民主意義人民共和国外務省スポークスマンはアメリカが私たちに対する圧迫導水を高めているのと関連して6日朝鮮中央通信社記者が提起した質問に次の通り答えた。
最近アメリカが歴史的な南北首脳会談で採択された板門店(パンムンジョム)宣言に明らかになった私たちの朝鮮半島非核化意志と関連してその何の制裁圧迫の結果のようだが世論を誤った導きをしている。
これと同時にアメリカは私たちが核を完全にあきらめる時まで制裁圧迫を遅らせないと露骨的に喚き出して朝鮮半島に戦略資産を引き込んで反共和国《人権》騒動に熱を上げるなど朝鮮半島情勢をまた再び緊張させようとしている。
歴史的な南北首脳会談と板門店(パンムンジョム)宣言で朝鮮半島情勢が平和と和解の方向に進んでいるこの時相手方を意図的に刺激する行為はせっかく用意された対話の雰囲気に冷水を浴びせて情勢を原点で戻してたてようとする危険な試みだとしか別に見ることはできない。
アメリカが私たちの平和愛好的な意志を《脆弱性》で誤認して私たちに対する圧迫と軍事的威嚇をずっと追求するならば問題解決に役に立たないだろう。(終わり)

「반공화국《인권》소동(反共和国《人権》騒動)」が何を指しているのか、この記事だけだとよくわからないのですが、前日5月5日の記事がこんなのが出ていました。

《민주조선》 인권유린왕초 미국의 반공화국《인권》타령을 조소

(평양 5월 5일발 조선중앙통신)
미국이 《2017년 나라별인권보고서》에서 《지독한 인권침해》니,《일상적으로 자국내에서 인권을 침해하는 불안정세력》이니 하면서 공화국을 헐뜯어댔다.
5일부 《민주조선》은 개인필명의 론평에서 이것은 공화국의 존엄높은 체제에 대한 공공연한 부정이고 용납 못할 우롱이며 터무니없는 모략중상이라고 단죄하였다.
론평은 미국이 고아대고있는 《인권문제》란 애당초 공화국에 있어본적이 없으며 이에 대해서는 공화국을 다녀간 외국인들과 해외동포들 누구나가 인정하고 세계가 격찬하고있다고 밝혔다.
미국이 그 누구의 《인권문제》에 대해 삿대질을 해대고있지만 실지로 피고석에 끌려나와 심판받아야 할 인권유린범죄국가는 다름아닌 미국이라고 하면서 론평은 다음과 같이 지적하였다.
그런데도 인권유린의 왕초인 미국이 격에 맞지 않게 《인권재판관》흉내를 내며 다른 나라들을 헐뜯어대고있는것이야말로 도적이 도적이야 하는 격의 파렴치하고 비렬한 추태가 아닐수 없다.
지금 전체 조선민족은 물론 국제사회는 미국이 우리의 성의있고 아량있는 주동적인 조치에 화답하여 대조선적대시정책을 하루빨리 철회하고 조선반도에 공고한 평화체제를 수립해야 한다고 일치하게 요구하고있다.
그럼에도 불구하고 미국이 다 낡아빠진 《북인권》나발을 불어대는것은 미국에 대조선적대시정책을 철회할 의사가 없으며 어렵게 마련된 현정세흐름을 과거에로 되돌려세우려는것으로밖에 달리 볼수 없다.
미국은 황당한 반공화국《인권》소동으로 우리를 중상모독하는것이 대사를 그르치는 돌이킬수 없는 후과를 초래하게 된다는것을 똑바로 알고 제 집안의 인권문제해결에나 신경을 쓰는것이 좋을것이라고 론평은 강조하였다.(끝)

《民主朝鮮》人権蹂躪王初アメリカの反共和国《人権》たわごとを嘲笑

(平壌ピョンヤン)5月5日発朝鮮中央通信)
アメリカが《2017年国星人権報告書》で《ものすごい人権侵害》君の、《日常的に自国内で人権を侵害する不安定勢力》としながら共和国をけなしまくった。
5日付《民主朝鮮》は個人ペンネームの論評でこれは共和国の尊厳高い体制に対するおおっぴらな不正で容認できない愚弄でありとんでもない謀略重傷だと断罪した。
論評はアメリカが煮込みまくっている《人権問題》欄当初共和国にあって見たことがなくてこれに対し対しては共和国に立ち寄った外国人らと海外同胞誰でもが認めて世界がほめちぎっていると明らかにした。
アメリカがその誰の《人権問題》に対して妨げまくっているが実地で被告席にクルリョナと審判受けなければならない人権蹂躪犯罪国家は他でもないアメリカといって論評は次の通り指摘した。
それでも人権蹂躪の超招引アメリカが格に合わないように《人権裁判官》まねて他の国々をけなしまくっていることこそ盗賊が盗賊はするようなものの破廉恥で卑劣な醜態に違いない。
今全体朝鮮民族はもちろん国際社会はアメリカが私たちの誠意あって寛大な心ある主動的な措置にうなずく返事をして対朝鮮敵対視政策を一日も早く撤回して朝鮮半島に公告した平和体制を樹立しなければなければならないと一致するように要求している。
それにもかかわらず、アメリカがみな非常に古臭い《北人権》ラッパを吹きつけるのはアメリカに対朝鮮敵対視政策を撤回する意思がなくて難しく用意された現情勢の流れを過去に戻してたてようとすることとしか別に見ることはできない。
アメリカはあきれる反共和国《人権》騒動で私たちを重傷冒とくすることが大使を誤らせる元に戻すことはできない後日の禍を招くことになるというのを真っすぐ知って私の家の人権問題解決にでも気を遣うことが良いことだと論評は強調した。(終わり)

2018年4月20日に公表された米国による2017年国別人権報告で北朝鮮の人権状況が非難されたことを「반공화국《인권》타령(反共和国《人権》たわごと)」と呼んで反論しています。
この人権報告は毎年出されているもので、北朝鮮の人権状況も毎回非難されています。2017年にも2016年国別人権報告が出されていて北朝鮮の人権状況を非難しています。この時既にトランプ政権になっていましたが就任間もない時期でしたので、実質的に今回のがトランプ政権で初の人権報告と判断しているようです。
で、このある意味“いつも通り”の北朝鮮の人権問題指摘に対して、北朝鮮も“いつも通り”に反発しているということになるでしょうか。

冒頭挙げた「核放棄するまで制裁を緩めないとしていることや、人権問題を取り上げる構えを見せていることなどを非難し「相手を意図的に刺激する行為は対話ムードに冷や水を浴びせ、情勢を白紙に戻す危険な試みだ」と米国をけん制した」という共同通信記事ですが、「人権問題を取り上げる構えを見せていること」については、あまり重要視すべき箇所ではなさそうに思えます。

もう一件、北朝鮮の人権状況に関わる話があります。
米国務省 北朝鮮の人権状況「深刻に憂慮」と表明(毎日新聞2018年5月3日 21時51分(最終更新 5月3日 21時51分))」にある通り、4月28日~5月5日が「北朝鮮自由週間」に定められており、それに関連して国務省報道官が「「世界で最も抑圧的で劣悪な体制のもとで苦しむ多くの北朝鮮国民のことを忘れてはならない」と強調し、北朝鮮の人権状況を「深刻に憂慮している」と表明した」そうです。ですので、それに対する反応という意味もありそうです。
で、この「北朝鮮自由週間」を主導しているのは、韓国の反共保守派で、こんな感じの主張をしています。

この日、北朝鮮自由週間開幕式を支援した自由韓党議員は、27日開かれた南北首脳会談に対して「対国民詐欺」,「惨憺たる結果」と壇上で苦言を呈した。

http://asian-reporters.com/nkjiyujinkensyukannews/

そして「<北核廃棄、自由統一のためのソウル宣言文>」ではこう述べています。

金正恩が白旗を揚げて降参する時まで、つまり北朝鮮に存在する全ての核兵器と大量殺傷武器を国際社会の目前で完全に廃棄するときまで、北朝鮮圧迫と経済制裁は続けなければならないというのが、私たち脱北者と国際NGO団体の変わりない立場だ。
よって今後の南北首脳会談は、料理の種類と晩餐のリハーサルに集中する会談でなく、北核廃棄に焦点を合わせた建設的な会談になるように願う。また、会談の重要議題として北朝鮮政治犯収容所解体問題、韓国と日本、国際社会に広がった拉致とテロ問題の再発防止と解決策が幅広く扱われることを促す。
北朝鮮の人権問題解決は核とミサイル、麻薬とニセ札など、北朝鮮が抱える全ての問題の先決条件だ。よって米国のトランプ大統領も、米朝首脳会談を通じて核問題とともに北朝鮮の人権問題、日本人拉致問題を主な議題として扱うことを改めて促す。

http://asian-reporters.com/nkjiyujinkensyukannews/

要するに、北朝鮮の人権問題解決と核兵器大量破壊兵器の完全廃棄まで圧力と経済制裁を続けよ、という主張です。「金正恩が白旗を揚げて降参する時まで」と言っているように、北朝鮮を無条件降伏させることを要求しているわけですが、現実主義とはかけ離れた主張と言わざるを得ませんね*1

まあそれはそれとして、この「北朝鮮自由週間」には自由韓国党が深く関わっているという点が重要で、朝鮮中央通信では「남조선보수패거리들의 히스테리적발작증(南朝鮮保守連中のヒステリー的発作)」という記事を同じ5月6日付けであげています。

지금 온 남녘땅이 력사적인 판문점수뇌상봉과 판문점선언발표로 환희와 격정속에 들끓고있는 가운데 유독 남조선보수패거리들만이 이를 악랄하게 비방중상하며 북남관계개선분위기를 흐려놓고있다.
홍준표를 비롯한 《자유한국당》패들은 《이번 남북정상회담은 북과 문재인정권이 합작한 위장평화쇼에 불과했다.》,《우리 민족끼리의 북의 주장에 동조한 회담이다.》고 고아대면서 그 의미와 성과를 깎아내리기 위해 분주탕을 피우고있다.

機械翻訳
今来た南の方の土が歴史的な板門店(パンムンジョム)首脳対面と板門店(パンムンジョム)宣言発表で歓喜と激情の中に沸き立っている中で唯一南朝鮮保守やからだけがこれをあくらつに誹謗中傷して南北関係改善の雰囲気を曖昧にしている。
ホン・ジュンピョをはじめとする《自由韓国当たり》パドルは《今回の南北首脳会談は北とムン・ジェイン政権が合作した胃腸(偽装)平和ショーに過ぎなかった。》、《私たちの民族どうしの北の主張に同調した会談だ。》で孤児対としながらその意味と成果を引き降ろすために奔走汁を吸っている。

この記事は結構長くて“米国に対するけん制”だという記事の2倍以上あります。北朝鮮としては、自由韓国党による反北朝鮮プロパガンダに対するけん制を主な目的としていそうな感じです。
北朝鮮の“けん制”については、BBCも報じていますが*2、「トランプ大統領は、自分の厳しい姿勢が南北対話につながったとして、引き続き北朝鮮に制裁や圧力をかけていくと述べている」点に触れてはいるものの、人権問題に関する言及は見られません。もっともロイターの報道では人権問題に関する言及に触れていますので、全く無視されているわけではありませんが。

単純に“圧力の成果だ”と公言するアメリカと“平和的な意図”による対話と主張する北朝鮮の両者によるプロパガンダ合戦の一幕

と見ていいんじゃないかなと思います。もちろん、水面下の交渉の一角が顔をのぞかせたとも言えるでしょうね。

トランプアメリカは“圧力で北朝鮮を屈服させた”という体で交渉に臨みたいし、金正恩北朝鮮は“核武装によって米国と対等になった”という体で交渉に臨みたい、と。
会談日時と場所について合意したとのことですが、具体的に公表されていないというのも関わっているかもしれません*3

まあ、いずれにせよ、“圧力で北朝鮮を屈服させた”という体で交渉に臨みたいアメリカも“核武装によって米国と対等になった”という体で交渉に臨みたい北朝鮮も、お互いそれが体裁に過ぎないことは理解していることは間違いないでしょうね。
双方とも口頭では勇ましいことを言っていながら、米韓合同演習の規模を縮小したり、演習の実施を容認したり、在韓米軍の存在を容認したり、在韓米軍の縮小を検討したりしているわけですから。

トランプ大統領が圧力の成果だと触れ回ってきたことを踏まえれば、北朝鮮の今回の反応は“けん制”としてささやかなものであって、むしろ米朝交渉自体は相当程度進展していることを匂わせるものだと思いますけどね。

そういうわけで、ここのブコメのような“効いてる効いてる”みたいな反応は、何だかなぁ、と思ってます。



*1:もちろん理想主義は大事ですが、理想を実現させるために現実的な行程を採るというのも大事であって、少なくとも南北融和と緊張緩和を経て北朝鮮内部の状況も改善することを求めるというのは現実的な行程だと言えますし、そもそも韓国政府の統一方策もそれを志向しています。

*2:北朝鮮「米国の『挑発』が平和を脅かす」 首脳会談前にけん制(5/7(月) 13:04配信 BBC News)

*3:敵国の軍隊に囲まれて、まるで降伏文書に調印するかのような環境が生じえる場所が会談場所であれば、事前に釘を刺したいところでしょう。

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補足的な話

臨床薬理学会がTBSに出した苦情に関連して。

この中にこう書かれています。

治験にかかわるものたちが驚愕したのが、患者さんへの負担軽減費300万円というものです。負担軽減費は治験に参加することによって生じる種々の損失をなんとか補おうという趣旨で始まった制度です。いくらという決まりはありませんが、あくまで負担軽減費です。ほとんどのところで、一回の来院あたり、7000円〜8000円としています。患者様と付き添いの方が来院する交通費と軽い昼食代に相当する額を調査し、この額なら治験参加の誘因にならないだろうと定められた背景があります。高額の軽減費で治験への参加を誘導することは厳に戒められておりますし、負担軽減費の具体的な額は治験審査委員会でその額の妥当性についてあらかじめ審査されています。300万円という額はなんらかの別の費用を誤解されたものと思われます。

https://www.facebook.com/jscptkoho/posts/419004868578254

私も健康食品の治験に参加したことがありますが、交通費程度の金額しかもらいませんでしたので「300万円」とかドラマの演出にしてもひどいと思いますね。

臨床薬理学会の言う「この額なら治験参加の誘因にならないだろうと定められた」とか「負担軽減費の具体的な額は治験審査委員会でその額の妥当性についてあらかじめ審査されています」については、法令上の根拠もあります。
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」です。
省令条文に明記されているわけではありませんが、運用上の留意事項について厚労省から以下の文書が出ています。。

医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について

(治験審査委員会の責務)
第 32 条 第 27 条第1項の治験審査委員会(以下本条において「治験審査委員会」という。)は、第 30 条第1項の規定により実施医療機関の長から意見を聴かれたときは、審査の対象とされる治験が倫理的及び科学的に妥当であるかどうかその他当該治験が当該実施医療機関において行うのに適当であるかどうかを、次に掲げる資料に基づき審査し、文書に
より意見を述べなければならない。
1)第 10 条第1項各号又は第 15 条の7各号に掲げる文書
2)被験者の募集の手順に関する資料
3)第7条第5項又は第 15 条の4第4項に規定する情報その他治験を適正に行うために重要な情報を記載した文書
4)治験責任医師等となるべき者の履歴書
5)その他当該治験審査委員会が必要と認める資料


2 専門治験審査委員会は、第 30 条第4項の規定により実施医療機関の長から意見を聴かれたときは、審査の対象とされる特定の専門的事項について前項各号に掲げる資料(当該専門治験審査委員会が必要と認めるものに限る。)に基づき審査し、文書により意見を述べなければならない。

〈第1項〉〈第2項〉

9 治験審査委員会は、被験者に対する金銭等の支払がある場合には、その支払額及び支払方法を審査し、これらが被験者に治験への参加を強制したり、不当な影響を及ぼさないことを確認すること。被験者への金銭等の支払は、参加期間等によって案分されなければならず、被験者が治験を完遂しなければ支払が全くなされないような方法は不適当である。
10 治験審査委員会は、被験者に対する金銭等の支払がある場合には、その支払方法、支払金額、支払時期等の情報が説明文書に記述されていることを確認し、参加期間等による案分の方法が明記されていることを確認すること。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/dl/130415_2_4.pdf

被験者に金銭などの支払いがある場合は、治験審査委員会が支払額及び支払方法を審査することになっていて、その際、「これらが被験者に治験への参加を強制したり、不当な影響を及ぼさないことを確認すること」が求められています。
そしてそれらは「説明文書に記述されていること」が必要だと。

借金に困っている人に300万円で治験に参加させるとか、まあ、あり得ないんですよね。

ちなみに生活保護受給者の治験参加についても、相当慎重に判断されます(参加を認めない治験もあったはず)。
例えばこんな感じ。

国立病院機構における治験等受託研究 Q&A

Q72 生活保護受給者が治験に参加することは可能か。

生活保護法第52条第2項の規定により、生活保護受給者は保険外併用療養費制度が適用されず、また、被験者負担軽減費の受取により生活保護が打ち切られる可能性もあることから、生活保護受給者の治験参加については、管轄の福祉事務所に相談のうえ、十分に検討し、決定してください。

http://www.chiba-easthp.jp/wp-content/uploads/2017/04/5ba596abb60b3fdbaf86982773d767d7.pdf