燐は燃焼するとホスフィンを発生させる

最初に言っとくと、別にホスフィンが成分の大半を占めるとかいう主張じゃありません*1
白燐の燃焼で発生するホスフィンが問題となるには、それなりに条件が整う必要があるでしょうし、どんな条件下が危険かについては今後の研究・実験を待たねばならないでしょうね。

もちろん、”実験で危険性や因果関係が明確になるまで、危険であることを訴えることすらデマとみなす”という態度は人としていただけません。
そのような態度の容認は、例えば、水俣病患者に対して、”病気と工場廃水の有機水銀との因果関係を証明するまで、工場廃水を止めろとか言うな”と脅すのに等しい態度です。

で、燐とホスフィンの話。

白燐の場合

CDC(米国疾病予防管理センター)のサイトには、以下のように記載されています。

www.atsdr.cdc.gov/toxprofiles/tp103.pdf

Wind-tunnel tests in which white phosphorus was burned and oxygen was non-limiting produced an average aerosol mass concentration between 2,500 and 3,000 mg/m3, with the major components being polyphosphates, phosphine, and elemental phosphorus (Van Voris et al. 1987).

白燐の燃焼実験で発生した気体(aerosol)の主成分(the major components)のひとつに、ホスフィン(phosphine)がある、と明記されています。

今回問題となっている赤燐、黄燐は白燐が含まれておりさらに似た反応をすることでも知られ、赤燐も黄燐も白燐も問題となる5酸化2燐が発生し、これに強塩基性の水溶液と反応するとホスフィンが発生します。

「赤燐、黄燐は(略)さらに似た反応をすることでも知られ」というトンチキな発言はほっといて*2
「これに強塩基性の水溶液と反応するとホスフィンが発生します。」というのは別にホスフィンの発生条件が「強塩基性の水溶液と反応する」のに限定されるわけじゃありません。上記で示したように、燐の燃焼でホスフィンが発生するのは普通のことです。その意味ではこのコメンタはなぜこの一文を書いたのか不思議でなりませんね。

この一文に何か意図があったのでしょうか?

例えば、”白燐弾規制派は、白燐が燃えてホスフィンが発生するというデマをばら撒いている”という印象操作をしたかったとか。

ま、燐の燃焼でホスフィンが発生するのは普通のことなので邪推ですよね、きっと。

赤燐の場合

赤燐も燃焼すると、ホスフィンを発生させます。
これは一時期問題になったんですが、カーテンなどに使われる赤燐系難燃剤が火災時にホスフィンを発生させて危険ではないか、と指摘されたことがあります。
このとき業界団体は赤燐系難燃剤がどの程度ホスフィンを発生させるかの実験を行い、通常の火災時に人体に有害な濃度でのホスフィンは発生しないことを検証しています。

本来、白燐弾が人体に(ほとんど)無害であることを主張したいのなら、主張する側が上の業界団体のように検証すべきなんですが、ネットの白燐弾擁護派は挙証責任を相手に押し付けて逃げています。

*1:こう言っとかないと、いちいち上げ足を取ろうとする輩がいるので・・・

*2:赤燐と黄燐は、毒性・発火性などさまざまな点で異なります。黄燐は自然発火しますが、赤燐は自然発火はしません。また、黄燐は猛毒ですが、赤燐はほとんど無害です。どこが似た反応なんでしょうか?