【平野発言と産経症】多分また辞任に追い込まれるんだろうな

平野復興相の10月18日参院民主党の研究会での発言です。

 「ここの高さに逃げてれば大丈夫だと言って、皆で20〜30人そこで集まってて、そこに津波が来て飲み込まれた方々もいます。逆に、私の高校の同級生みたいに逃げなかったばかなやつもいます。彼は亡くなりましたけど。ばかなやつって、今、言ってもしょうがないんですけどね」(平野達男復興相)

http://www.mbs.jp/news/jnn_4854730_zen.shtml

どう聞いても犠牲者をバカにした発言ではなく、逆にどうして逃げなかったのか?どうして逃げれなかったのか?という無念の思いが行間に読み取れる内容ですが、現状の民主党・野田政権の政治基盤の脆弱さを考慮すると、松本龍前復興相や鉢呂吉雄経産相と同様に近いうちに辞任に追い込まれるでしょうね。
個人的には、この平野発言にかんして全く問題あるとは思えません。もう少し言葉を選ぶべきという指摘には同意できますが、陳謝で済む程度でしょう。実際、平野復興相は、上記発言の当日夜には以下のように陳謝しています。

 夜、平野氏は自身の発言について釈明しました。
 「同級生というのは高校のときの私の友人で、この間の同級会でもそういう話で、『あいつはばかだった。何で逃げなかったんだ』ということをちょっと言ったのですが、そのときの思いが今日の中で出てしまいまして、冷静に客観的にしゃべらなくちゃならないところに個人的な思いが入ってしまいました。不快な思いをされた方については、心からお詫び申し上げます」(平野達男復興相)

http://www.mbs.jp/news/jnn_4854730_zen.shtml

本来ならこれでおしまいのはずですが、政権奪回のためには何でもやる自民党あたりは猛反発してますね。マスコミは18日時点では産経新聞を除いて様子見といった感じ。


野田政権は前菅政権よりは安定している感じですがねじれ状態であることは変わりなく、自民党公明党が足を引っ張り続けるだけで復興や経済対策が停滞してしまい一気に支持を失いかねない状況です。
鉢呂吉雄経産相の「死の町」発言も辞任に値するような失言ではありませんでしたが、政権を不安定化させてまで守ろうとはせず国会開催前に辞任させています*1。さすがに次の第179回国会は10月20日からで、開催までに平野復興相を辞任させて後任を充てるのは時間的に無理そうですし、鉢呂吉雄経産相と同様の大臣交代を二度もやるわけにはいかないでしょうが、批判の声が高まればどうなるかわかりません。

産経新聞はさっそく平野発言を改ざんし、次期国会での野党*2による平野発言の援護射撃を開始しています。

「逃げなかったバカなやついる」津波避難で平野氏
2011/10/18 18:52更新
 平野達男震災復興担当相は18日、東日本大震災津波被害に関し「私の高校の同級生みたいに逃げなかったバカなやつがいる。彼は亡くなったが、しょうがない」と述べた。福島県二本松市で行われた参院民主党の研修会のあいさつで語った。犠牲者やその遺族への配慮を欠いた発言で、進退問題に発展する可能性も出てきた。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/532151/

実際の平野発言は「彼は亡くなりましたけど。ばかなやつって、今、言ってもしょうがないんですけどね」ですが、産経新聞はこの部分を改ざんして「彼は亡くなったが、しょうがない」にすりかえています。他紙も「逃げなかったバカなやつ」で切り取るようなことをしているので似たりよったりかもしれませんが、産経新聞の場合は、「今、言ってもしょうがない」が「彼は亡くなったが、しょうがない」に変造されているので悪質極まりないですね*3


そして、鉢呂前経産相を追い込んだ時にも使った、被災者の政治利用も産経新聞がトップを切って行っています。

怒りの被災者「母はバカだから死んだのか」平野復興相発言で
産経新聞 10月18日(火)20時53分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111018-00000618-san-soci

この記事の内容は、実際の平野発言を踏まえたものとは到底思えないものばかりです。

 「ここの高さに逃げてれば大丈夫だと言って、皆で20〜30人そこで集まってて、そこに津波が来て飲み込まれた方々もいます。逆に、私の高校の同級生みたいに逃げなかったばかなやつもいます。彼は亡くなりましたけど。ばかなやつって、今、言ってもしょうがないんですけどね」(平野達男復興相)

http://www.mbs.jp/news/jnn_4854730_zen.shtml

この発言から、どうして「母はバカだから死んだのか」となるのか、まるで理解不能です。

 「おふくろは足腰が悪くて逃げたくても逃げられなかった。バカだから死んだの? 大臣、議員として以前に人としてありえない。辞職どころではすまされない」
 宮城県南三陸町の無職、三浦達也さん(43)は声を荒らげた。

実際の平野発言には、バカだから死んだとは一言もありません。

 知人の消防署員は、救助に向かう途中で亡くなった。近所の自転車店の店主は、顧客の自転車を守ろうとトラックに積んでいる最中に流された。友人は妻と3歳の子を亡くし、4カ月の子はいまも見つからない。「亡くなった2万人の遺族の前で言えるの? 唖(あ)然(ぜん)とするしかない」。三浦さんの怒りは収まらない。

これも同じく、実際の平野発言は亡くなった友人に対する無念の思いを語ったもので、遺族の前で言っても大きな問題になるような発言ではないでしょう。
ところで、この三浦達也さん、5月4日の産経新聞で初登場、8月10日にも再登場し、菅総理の退陣表明に対し、「さっさと辞めていれば法案も早く進んだ。尊敬できない変な総理だった」と語るなど、民主政権批判の材料として産経新聞的には重宝している人材にも見えます。*4

 市内で米穀店を営む桑原賢治さん(68)は「とんでもない発言だ。言葉が軽すぎる」と驚きを隠さない。「被災地に来てくれるのは良いが、本当に地元の気持ちが分かっているのかと思う。真剣に地元の立場に立って対策に取り組んでほしい」と話した。

「言葉が軽すぎる」というのは用語の選択が軽率という意味なら理解できますが、発言内容全体を見る限り「とんでもない発言」とまでは言えないでしょう。

 福島県と隣接し、津波被害で沿岸部が大きな被害を受けた茨城県北茨城市の元市議松本健一郎さん(56)は「津波が来ると分かっていたら家でふんぞり返っている人はいないよ。逃げ遅れた人もいたのに…。被災者の立場を分かっていない」と嘆いた。

これも実際の平野発言を聞いた上での感想かは疑問です。なお、松本健一郎氏は米穀肥料店経営の元市議で、震災後6月5日の北茨城市長選に出馬し現職に敗れています*5

 仙台市の会社経営、安藤哲夫さん(64)は「被災者がどれほど苦しんでいて、そのような発言でどれだけ傷つくか、自分のこととして考えないからそんな軽い発言ができるのではないか」とあきれる。
 「他の国にこんな発言が伝わると思うと恥ずかしい。平野さんには『あなたがバカだ』と言いたい」と怒りを語った。

さて、この安藤哲夫氏は「救う会」宮城の会長です*6。当然、産経新聞ともつながりが深くそのつてでの取材でしょう。産経新聞としても、
安藤哲夫氏に聞けば、当然のように民主政権批判のコメントをしてくれますから利用価値の高い人ではあります。
で、安藤哲夫氏は散々平野発言を罵っていますが、震災復興よりも拉致問題を煽り続けることを優先している人なので、実際の平野発言を聞いたとしても曲解して攻撃しそうです。

しかし3月11日の震災で支援者からも「こんなときに拉致を訴えても反感を持たれるだけだ」との意見が出た。中止や延期を検討していたとき、救う会宮城会長の安藤哲夫さん(63)から「ぜひやりましょう」と声がかかった。

安藤さんらは宮城県内で10年以上、毎月街頭署名を行ってきたが、震災で3月以降はとりやめた。自宅が被災したメンバーもいた。安藤さんは「何をすればいいか迷いもあったが、われわれは震災で助け合う大切さを学んだ。今こそやるべきだと感じた」と話す。

http://tachiagare962.blog27.fc2.com/blog-entry-757.html

安藤哲夫氏は、7月に徳島県阿南市まで行って「私の震災復興と拉致問題*7の講演をしていますが、それより他に優先してやるべきことがありそうな気もします。

不思議なのは、産経新聞は安藤哲夫氏の経歴をなぜ「仙台市の会社経営」などと曖昧な書き方をした点です。まさか「救う会」宮城会長という肩書きを出したらプロ市民だとばれるからでしょうか?

*1:鉢呂吉雄経産相は第178回国会(2011年9月13日〜30日)の直前9月11日に辞任。

*2:というより自民党

*3:産経新聞の書き方では、津波で逃げなかったバカなやつは死んでもしょうがない、という意味にしかなりません。実際にそう思ってるのはむしろ産経新聞の記者の方だと思いますが・・・。江沢民死去誤報に見られるように、事実より願望を優先するのが産経新聞ですから。

*4:http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110504/dst11050421490030-n1.htmhttp://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110810/dst11081021390033-n1.htm

*5:http://ibarakinews.jp/news/news.php?f_jun=13055566153786

*6:http://sukuukai.jp/kyougikai/index.html

*7:http://www.city.anan.tokushima.jp/docs/2011072500013/