やっぱりザル法

離婚届:面会の仕方、養育費分担の新チェック欄…4月から
 未成年の子を持つ父母が離婚する際に、子との面会交流の仕方や養育費の分担を取り決めるよう明文化した改正民法が4月に施行されるのに伴い、法務省は、離婚届の書式に新たな項目を設けることを決めた。
 4月から従来の書式に追加されるのは、面会交流と養育費の分担の2点について父母間で取り決めているかどうかを尋ねる項目。「取決めをしている」と「まだ決めていない」のいずれかにチェックを入れる。
 改正法は「父母が離婚をする時は、親子の面会や交流、養育費の分担などは協議で定める」と明記している。
 今回の書式改定は、この新規定の周知を図るためのもので、新項目に記入がなくても離婚届は受理される。【伊藤一郎】
毎日新聞 2012年2月4日 13時40分

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120204k0000e040182000c.html

ハーグ条約と直接関連する部分ではありませんが、これまで野放し状態だった離婚後の養育費、面会交流に関して少しだけ良くなった民法改正です。ただし、ホントに少しだけ。

国会提出日 法律案名
平成23年3月4日 民法等の一部を改正する法律案
  可決成立日  23年5月27日
  公布日  23年6月3日 
  官報掲載日  23年6月3日(第5568号)
  施行日  24年4月1日

引用した記事に関連するのはこの法律です。

民法等の一部を改正する法律
民法の一部改正)
第一条民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
第七百六十六条第一項中「その他」を「、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の」に改め、同項後段を次のように改める。
この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00043.html

その結果、民法第766条1項が以下のように変わります。

(現行)
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条  父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。

(改正後 2012年4月以降)
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条  父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。 この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

何となくよくなったように見えますが、実態としてはほとんど変わってません。何といっても面会交流、養育費に関して、離婚の際に定めなくてはならないわけではありませんから。
だから「4月から従来の書式に追加されるのは、面会交流と養育費の分担の2点について父母間で取り決めているかどうかを尋ねる項目」には「「取決めをしている」と「まだ決めていない」のいずれかにチェックを入れる」だけでいいのですね。

「まだ決めていない」にチェックすれば役所は離婚届を受理し、その後本当に決めるかどうかに関しては一切タッチしません。養育費を求める場合も、面会交流を求める場合も、これまでどおり、家庭裁判所に調停を申し立てる以外ありません。家庭裁判所的にはこれまでと何も変わりません。

改正過程をちゃんと追っていませんし、今回の民法改正はこの部分だけではないのですが、改正までに相当な審議時間を費やしたはずです。にもかかわらず、おそらくは官僚が手を入れて骨抜きにしてしまった、そんな感じがします。彼らにとっては「子の利益」より、業務が増えないようにすることの方が重要なんでしょうね。