歴史を知らない現代史家

秦氏の以下の記述は、典型的な慰安婦問題否認論ですが。

次に戦中のソウルの新聞に「慰安婦至急大募集。月収300円以上、本人来談」のような業者の募集広告が、いくつも発見されている事実を指摘したい。日本兵の月給が10円前後の当時、この高給なら応募者は少なくなかったろうから強制連行する必要はなかった。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130523/stt13052303220000-n2.htm

この記述が馬鹿げていることは、1930年代当時の10〜20代の女性の識字率を考えてみればわかります。1930年の識字率調査で、女性の識字率(ハングル又はカナ)は10%程度に過ぎません*1
新聞に「慰安婦至急大募集。月収300円以上、本人来談」などと広告を出したところで、それを読める女性はほとんどいませんでした。そもそも新聞を読む世帯すら限られており、1940年時点で日本語日刊紙購読者(朝鮮人)は11万人、朝鮮語日刊紙は19万人に過ぎませんでした。

この新聞広告を読める朝鮮人女性が朝鮮でも裕福な部類に入るであろうことは容易に想像できますし、そのような女性が好き好んで売春婦になることもまず考えられません。

誰がこの広告を読むかと言えば、それは女衒と立ち回れる労務補導員や貧困家庭から女性を引っ張ってこれるコネを持つ官僚関係者や斡旋業者であると考えるべきでしょう。
要するに総督府の統制下にあった新聞に女衒行為を呼びかける恥知らずな広告が載ったことの証拠であって、否認論者がドヤ顔するような資料じゃありません。

歴史を知らない現代史家って何かの役に立つんでしょうか?