安倍・産経デマコンビ VS 菅元首相

なぜ今なのか、そりゃ少なくとも安倍氏による誹謗中傷被害が発生した当時は菅政権が全力で震災対応していて提訴する余裕がなかったからでしょうね。
この件ですが。

読みが違うだけで、安倍首相による中傷の被害者と安倍首相の腰巾着という差が生じる不思議。

菅元首相の安倍首相提訴、「なぜ参院選終盤の今なのか」菅長官が不快感
2013.7.17 12:48 [安倍内閣
 菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で、民主党菅直人元首相が東京電力福島第1原発事対応を批判した安倍晋三首相のメールマガジンの内容に名誉を傷つけられたとして、首相を提訴したことに不快感を示した。「2年以上前のことをなぜ今更(提訴)なのか。参院選も終盤になり、投票が差し迫っているので、何か思惑があるのかな、とさえ思う」と述べた。
 同時に、首相のメルマガ内容について「首相は、それなりに確たるものがあって書いたのだろう」と指摘。提訴を受けた首相側の対応に関しては「参院選の真っ最中だ。当然、終わってからになるだろう」と語った。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130717/plc13071712520007-n1.htm

安倍現首相が菅政権の震災対応を妨害するためにデマ情報を流したのは2011年5月20日です。さすがに3月4月ほど過酷な状況は過ぎていたというものの、この頃原子炉内でメルトダウンメルトスルーが起きていることが確実視され、野党議員の誹謗中傷に首相自ら提訴するような余裕などありませんでした。
まあ、野田政権になった後については提訴する余裕もあったかも知れません。

例えば、安倍氏と同様にデマ情報を流して菅政権の震災対応を妨害した産経新聞の阿比留記者に対して、デマ情報で名誉毀損被害を受けた辻元議員が提訴したのは2012年1月19日です。
「虚偽報道による名誉毀損」で産経新聞社と同社記者を提訴しました
この訴訟は、産経新聞社と阿比留記者の敗訴で幕を閉じていますが、阿比留記者は今も産経新聞政治部記者として誹謗中傷記事を書き続けています。

2012年頃の菅元首相は脱原発再生可能エネルギー関連で色々活動していましたし、退陣したことで産経新聞のような悪質なデマ・誹謗中傷から解放されると思っていたのかもしれません。それに菅首相が注水中止を命じたというデマを拡散したのは産経新聞ですが、デマの発信源は安倍氏でしたので辻元氏のように産経新聞を相手に提訴するのも容易ではなかったでしょう*1
安倍首相の腰巾着である菅官房長官は「参院選も終盤になり、投票が差し迫っているので、何か思惑があるのかな、とさえ思う」と邪推していますが、安倍政権成立以降は安倍氏に対する批判を行っています。

(2012年12月31日)
今日の朝刊に、安倍首相が原発新設を明言という記事が踊っている。首相は「脱原発」を言葉遊びと言っている。それでは首相自身が自民党総裁選で「脱原発依存」を公約したのも」言葉遊び」だったということか。

http://ameblo.jp/n-kan-blog/entry-11438651028.html

安倍氏産経新聞がやったようなデマ・中傷ではなく、政権政党に対する真っ当な批判です。

そして、海水注入デマに関しては、2013年1月28日には産経新聞に対する非難としてブログに掲載されています。

 産経新聞民主党や私に対する批判記事はいやというほど掲載するが、誤った批判報道に対してはだんまりを決め込んだままで、謝罪も訂正もしようとはしない。私が首相在任中の2011年5月21日付の産経新聞朝刊の紙面で「首相激怒で海水注入中断」という記事はその典型。
 この記事では、2011年3月12日、私が1号機への海水注入の開始を聞いて激怒し、そのために海水注入が約1時間中断したと記述している。しかし、その後の政府事故調民間事故調、国会事故調各種事故調でも明らかになったように、私には海水注入が始まったこと自体がその時点では伝わっておらず、知らないことに「激怒」しようもなく、もちろん注水中断の指示も出していない。また、東電の武黒フェローからの中断の指示に対して、吉田所長は注入継続が必要と判断し、武黒氏の間違った指示を無視して海水注入を続けたことが分かっている。産経新聞の明らかな誤報である。
 この産経新聞の記事では2011年5月20日付の安部晋三氏の同趣旨の誤った内容のメールマガジンまで紹介している。
 産経新聞が、私に対する批判記事を書くことはかってだが、自らの誤報記事についてはきちんと調査すべきだ。 産経新聞にはこのブログを通して、改めて2011年5月21日付の誤報記事掲載に対する謝罪と訂正を求める。

http://ameblo.jp/n-kan-blog/entry-11458530015.html

しかし、産経新聞は自らのデマ報道による被害者をせせら笑うだけで謝罪も訂正もしていません。
海水注入デマについて厳密に言えば、産経新聞誤報とは言えません。というのも産経新聞安倍氏のメルマガなどを根拠として報道しているからです。産経新聞に言わせれば、結果として誤報にはなったが、ちゃんとした取材に基づいており産経新聞に責任はない、となるでしょう。この場合、誤報の責任は安倍首相にあり、産経新聞は安倍首相の責任を問うことはできます。
しかし、産経新聞安倍氏に責任を問うなどということがあり得ないのは容易に理解できますし、実際には安倍氏産経新聞の阿吽の呼吸による共謀行為としてのデマ・中傷行為だったのは誰の目にも明らかと言えます。デマの発信源と拡散を分離することで責任が問われにくい構造を、安倍・産経は作り上げたわけです。

では、この場合報道被害に遭った者は泣き寝入りするしかないのか、というと手段としてはデマを拡散した産経新聞ではなく、デマを発信した安倍晋三首相に対する提訴があります。
その結果がこれです。

訴状

第1 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、被告が管理するメールマガジン バックナンバーから、2011年5月20日付け「菅総理の海水注入指示はでっち上げ」と題する記事を削除せよ。
 2 被告は、原告に対し、被告が管理するメールマガジンに、別紙謝罪記事目録記載の記事を掲載し、これを2年以上掲載し続けよ。
 3 被告は、原告に対し、11,000,000円及びこれに対する2011年5月21日から完済に至るまで年5分の割合による金員を支払え。
 4 訴訟費用は被告の負担とする。
 5 第3項について仮執行宣言

http://ameblo.jp/n-kan-blog/entry-11574298649.html


「2年以上前のことをなぜ今更(提訴)なのか。」と菅官房長官はそら惚けてますが、震災以来の経緯を考えれば別に不自然でもありません。

官房長官、首相メルマガのデマを容認

官房長官は「首相のメルマガ内容について「首相は、それなりに確たるものがあって書いたのだろう」と指摘」していますが、海水注入の件に関しては様々な調査結果からデマであることが確定しています。仮に意図的なデマでなかったとしても、事実が明らかになった後でも訂正せず、そのままウェブ上で表示し続けるのは悪質と言わざるを得ません。しかし、菅官房長官はそれを容認しています。これはかなり酷い態度です。

問題の安倍メルマガ

菅元首相が削除を求めている記事は以下です。

菅総理の海水注入指示はでっち上げ』
最終変更日時 2011年5月20日

福島第一原発問題で菅首相の唯一の英断と言われている「3月12日の海水注入の指示。」が、実は全くのでっち上げである事が明らかになりました。
複数の関係者の証言によると、事実は次の通りです。

12日19時04分に海水注入を開始。
同時に官邸に報告したところ、菅総理が「俺は聞いていない!」と激怒。
官邸から東電への電話で、19時25分海水注入を中断。
実務者、識者の説得で20時20分注入再会。

実際は、東電はマニュアル通り淡水が切れた後、海水を注入しようと考えており、実行した。
しかし、 やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです。

この事実を糊塗する為最初の注入を『試験注入』として、止めてしまった事をごまかし、そしてなんと海水注入を菅総理の英断とのウソを側近は新聞・テレビにばらまいたのです。

これが真実です。

菅総理は間違った判断と嘘について国民に謝罪し直ちに辞任すべきです。

http://www.s-abe.or.jp/topics/mailmagazine/2291

安倍首相は、わざわざ「これが真実です」とデマを書いています。
安倍総理は間違った情報と意図的な嘘について国民に謝罪し直ちに辞任すべきです。”

*1:産経新聞は少なくとも安倍氏に取材した結果を報道したと強弁でき、それがデマでも産経新聞の責任とは言いがたい。