舛添氏に関する記事の一部についての指摘、補足

石原慎太郎氏のような救いがたいレイシストを10年以上も都知事に戴き続けた都民が、過去から何一つ学ぶことなく懲りずに選んだ舛添氏に関する記事ですが、違和感のある部分について指摘しておきます。
記事内容に関しては、基本的に舛添氏の人間性を疑うようなものであり、記事中の批判には共感できることを先に述べておきます。念のため。

ありえない通知

 舛添氏から扶助料の支払いは一応、続けられていた。子供が19歳の時、成人になるので公正証書を更新したが、22年間のあいだAさんと子どもに舛添氏が直接連絡を取ることはなかった。金を払いさえすればいいだろうとばかりに、舛添氏は実子に会うことなく過ごしてきたのだ。子供が集団いじめに会おうが、長期入院をしようが一切関知せず、「自分には家庭があるから、メールもよこすな」と弁護士を通して脅してきたという。
 その22年の沈黙のあとに、舛添氏の弁護士からAさん宛にある通知が送られてきた。2012年4月のことだ。その通知には、子どもに対する扶助料を減らしたいということが書かれていた。その理由は、「子供がある程度自立していること」「自分の収入が激減していること」だという。
 Aさんが、不誠実だと感じ、この通知を拒否したところ、舛添氏はすぐに調停を申し立てた。すぐに調停に入ったということは、当事者間で直接話し合いをする機会を持とうとはしなかったということだ。つまり、Aさんや子どもの現在の生活状態を確かめようとする気もなく、自分の事情を直接説明する気もなかったということだ。非常に一方的で強圧的なやり口だ。

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/124234

調停を申し立てたこと自体は「一方的で強圧的なやり口」とは言えません。一応は事前に通知しているわけで、いきなりというわけでもありません。最初から弁護士を通していることで誠意を感じさせないのは確かですが、調停以前に「当事者間で直接話し合いをする機会」を設けることが良いとは思えません。
例えば、強圧的な相手と「当事者間で直接話し合いを」しても、双方納得できる結論になるとは考えにくく、むしろ威圧的な態度で、“合意”を強要する可能性の方が高いでしょう。

そもそも調停自体、当事者間での話し合いを調停委員の同席の下で行うのが主旨であって「強圧的なやり口」ではありません。「Aさんや子どもの現在の生活状態」については調停の場で説明できますし、舛添氏の事情についても調停委員を通じて説明を求めることができます。
少なくとも調停制度の主旨からすれば、記事の記述はちょっとずれています。

 Bさんは次のように言う。
 「舛添の婚外子扶助料減額請求について、少々補足申し上げたいと思います。舛添の弁護士が家庭裁判所に提出した調停要求には、『子供がある程度自立していて、自分の収入が激減しており、調停により、減額させ、2012年4月にさかのぼって差額分を返せ』という趣旨のことが記載されていました」
 Aさんの子供は重度の自閉症であり、かつ統合失調を併発し、週5回病院に通院している状況だ。多量の服薬を余儀なくされている。調停員も、舛添氏に調停を取り下げるよう何度も説得したが、2年近くにわたり、舛添氏は嫌がらせをするかのように取り下げようとはしない。

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/124234

「2012年4月にさかのぼって差額分を返せ」という舛添氏の主張は無理筋ですので、ふっかけてると言えるでしょう。差額分返却要求を取り下げる代わりに、扶助料減額は認めろ、という交換条件のためのものでしょう。調停での交渉であるが故に可能な戦法で、審判とかに入ればまあ相手にもされない条件と言えます*1
「2年近くにわたり、舛添氏は嫌がらせをするかのように取り下げようとはしない。」というのも微妙です。調停合意も審判決も新たに出ていない以上、既存の公正証書の効力が有効でしょうから、調停期間中も既定の扶助料を請求できるはずです。記事では既に減額しているのかどうか不明ですので、この辺は判断しにくいのですが、もし現時点で減額していないとすれば、そのまま継続してもAさんに対して経済的な影響は少ないはずです(精神的な影響はあるでしょうが)。あるいは現時点で勝手に減額されているなら、保全処分などの審判を申し立てできます。もっとも弁護士への依頼料がかかりますので、経済的な負担にはなるでしょうが生活困窮者の場合はそれなりの支援があるはずです。
言うまでも無く、こういった交渉ごと自体が精神的に大きな負担になるということはありますので、その意味では「嫌がらせ」というのはありえますが。

 確かに舛添氏の手法は「嫌がらせ」に見える。調停で解決しない場合は、審判になり、さらには、裁判を起こすことが可能だからだ。舛添氏が裁判に持ち込まないのは勝つ見込みがないからと、マスコミが調停の間は入れないからだ。だから、ずるずると調停を引き延ばし、要求を呑むようにAさんに金銭的にも、精神的負担を掛けているのではないか、そう邪推したくなる。

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/124234

ここも少しどうかと思う部分です。舛添氏が裁判になれば負けるので裁判を避け調停を引き伸ばしているという内容ですが、基本的に調停は当事者間の話し合いの場ですので、舛添氏だけの意志で、調停を継続させることは出来ません。極端な話、Aさんが“減額要求には絶対に応じない。話し合うつもりはない”と蹴ってしまえば調停は不成立となり、舛添氏にはさらに審判や裁判へと継続させるか諦めるか、の二者択一しか残りません。
既存の公正証書がある以上、新たな調停合意や審判決がない限り、それが有効ですから、Aさんにとってさほど不利な状況とは言えません。舛添氏の減額要求の根拠が収入が減ったからだとすれば、今回の都知事当選で、そのようなことは誰も信じないでしょう。

ではなぜ調停が継続しているのか、その辺が疑問ですが、審判に移行した場合、別途弁護士への依頼費用がかかりますから、あるいはAさんはそれを懸念して調停を蹴ることに逡巡しているのかもしれません。

*1:もちろんしっかりと反論しておく必要はあるでしょうが。