安楽死賛成派の人に答えてもらいたいこと

安楽死を認めてほしい。寝たきりになってまで生きている意味はあるのか」を見てちょっと思ったこと。
安楽死の是非についての踏み絵を踏ませるつもりではありませんので、頭の体操くらいに思ってください。

A男さん(40)とA男さんの一人息子であるB太郎さん(20)が事故に遭い、二人とも植物人間状態になりました。

A男さんはC子さん(40)と10年前に離婚しており、B太郎さんの単独親権者として懸命に育ててきました。離婚の原因はC子さんの浪費と浮気で、離婚後すぐC子さんは再婚し実の息子であるB太郎さんには会いにも来ませんでした。A男さんには病気の母D代さん(70)がいます。B太郎さんの子育てによく協力してくれましたが、1年前から重い病気で床に伏すことが多くなっています。
A男さんは子育てと並行して仕事にも頑張り、いずれB太郎さんが結婚でもしたら渡そうと思い貯金した3000万円の資産があります。A男さんはこの資産を当面は母D代さんの介護費用にも充てるつもりでした。B太郎さんは独身の大学生で資産はありません。
A男さんもB太郎さんも遺言状などは準備していませんが、日ごろから植物人間状態になってまで生きていたくない、そうなったら安楽死させてほしい、と望んでおり、それをD代さんも知っています。

さて、不幸にして植物人間状態になったA男さんとB太郎さんの父子ですが、どちらから先に安楽死させるべきでしょうか?

ちなみに、母D代さんは素朴な思いとして、子どもが親よりも先に死ぬのは辛いことだと考え、先にA男さんを安楽死させてからB太郎さんを安楽死させてあげたいと考えています。


クイズではないので正解はありませんが、かなり誘導的な状況設定にしてありますので、わかる人にはすぐわかると思います。

安楽死順がA男→B太郎になった場合

A男さんが死亡した時点で、B太郎さんは存命なので、A男さんの遺産は全てB太郎さんが相続することになります。
そして、その後、B太郎さんが死亡すると、その時点のB太郎さんの法定相続人はB太郎さんの母であるC子さんのみとなり、全額をC子さんが相続することになります*1
D代さんには何も残されません。

安楽死順がB太郎→A男になった場合

B太郎さんが死亡した時点で、存命のA男さんとC子さんがB太郎さんの遺産を相続することになりますが、B太郎さんにはそもそも資産がありませんので、ここでは何も相続が発生しません。
そして、次にA男さんが死亡すると、その時点でA男さんの法定相続人はA男さんの母D代さんのみですから、全額がD代さんに相続されます。

死亡する本人以外が死亡するタイミングを決められるということの意味

事故死や病死はいつ死ぬか誰にも予想できませんし、自殺も本人以外は死亡時点を決めることはできません。安楽死が認められるというのは、死亡する本人以外の者が死亡時点を決められるということになります。それが相続が絡む上記のような事例の場合、結構面倒な問題になると思われます。

親子が同時に植物人間になる事態なんてそうそうない、と思うかも知れませんが、高齢の親子であればさほど珍しくもないでしょう。例えば、延命治療で生きながらえている90歳の父と事故で植物人間になった70歳の息子とか。90歳の父に親はいないかも知れませんが兄弟がいた場合、先に息子が死ねば、兄弟に相続のチャンスが回りますのでさっさと安楽死させようと画策する人も出るかも知れませんね。

こういう相続順をネタにしたサスペンスとかってありそうな気もしますが、私の観測内では見かけませんね。ないのかなぁ。

*1:父母の片方が存命の場合は、存命している片方の親が全て相続し、その親(祖父母)に代襲されないはずですが、ひょっとしたら父母が離婚していると違うかも・・・。