“他に適当な人がいない”とかいうよく聞くアレ

安倍政権を支持する理由を具体的に挙げられない場合の言い訳みたいなやつですが、実態としては消去法とか消極的支持とかじゃなくて、単に他の政治家を知らないだけってのがほとんどだと思うんですよね。
そして多くの場合、“次期首相候補”としてメディアに取り上げられることが少ないから知らないんだろうな、と。

こういうと「野党ガー」とか言い出す人が多そうなのですが、自民党内に限っても同じような傾向は見られます
例えば、こういう世論調査

2018.3.13 00:46更新

【産経・FNN合同世論調査】「次の首相」で石破茂氏が28・6%、安倍晋三首相の30・0%に肉薄

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が10、11両日に行った合同世論調査で次期首相にふさわしい自民党議員を尋ねたところ、安倍晋三首相が30・0%とトップを維持したものの前回調査した1月の31・7%から微減した。逆に石破茂元幹事長は28・6%と前回の20・6%から8・0ポイント増やし、首相に肉薄した。
 調査は、9月の自民党総裁選への出馬が取り沙汰される首相と石破氏、岸田文雄政調会長河野太郎外相、野田聖子総務相の5氏を選択肢に挙げた。岸田氏は9・7%、河野氏は5・8%、野田氏は5・2%だった。
 年代別にみると、首相は40代以下の層が前回の34・1%から38・9%に増え、50代以降が29・6%から22・4%に減った。逆に石破氏は全世代で支持を伸ばした。ただ、自民党支持層でみると首相は56・2%、石破氏は18・9%だった。
 前回は18・1%を占めた小泉進次郎筆頭副幹事長が入っていないためか「他の国会議員」が前回の2・4%から13・5%に増えた。

https://www.sankei.com/politics/news/180313/plt1803130006-n1.html

この手の質問は、既に選択肢が限られているわけですが(「首相と石破氏、岸田文雄政調会長河野太郎外相、野田聖子総務相の5氏を選択肢に挙げた」)、こういう記事に接した人は次期首相候補として挙げられた面子を意識すると共に、挙げられていない人は意識に上らなくなります。

選択肢   2018年1月 2018年3月
安倍晋三  31.7 30.0
石破茂   20.6 28.6
岸田文雄  6.0 9.7
河野太郎  5.0 5.8
野田聖子  4.1 5.2
小泉進次郎 18.1 ----
その他自民 2.4 13.5
いない   9.6 ----
わからない 2.5 7.2

1月の産経FNNの世論調査*1では小泉議員を選択肢に含めていましたが、3月の世論調査*2では選択肢から消えています。産経記事は「前回は18・1%を占めた小泉進次郎筆頭副幹事長が入っていないためか「他の国会議員」が前回の2・4%から13・5%に増えた」と書いており、その見立てはおそらく正しいのでしょうが、それ以外に注目すべき点があります。

1月の世論調査で「小泉進次郎」か「その他自民」を選択した割合は合計で20.5%ですが、3月の世論調査で「その他自民」を選択した割合は13.5%に過ぎません。この期間に7%も支持者を減らすような不祥事が小泉氏にあったかというとそんなこともなく、単純に選択肢にないから他の候補に流れたと見るのが自然でしょう。実際、石破・岸田・河野・野田の4氏いずれも数字を増やしています。
小泉氏はメディア露出の多い議員ですから選択肢にあがらなくても“他の5氏よりは”と選ぶ人が多いようですが、それでも選択肢に挙がらないだけで7%の支持者が減るわけですね。

念のため2018年3月の報道ステーション世論調査結果*3を挙げておきます。

次の自民党総裁は誰がよいか?

選択肢   2018年3月
安倍晋三  19
石破茂   25
岸田文雄  8
河野太郎  3
野田聖子  3
小泉進次郎 23
その他   1
わからない 18

小泉氏の事例は、提供される選択肢に挙がらないというだけで思考上の比較対象から消えてしまう事例と言えるでしょう。

「「安倍さん以上に現状を良く扱える人がいるか?」という問い」

少し古いですが、「与党支持でも野党支持でもいいけど「安倍首相の後を誰がやるか」を考えてる人の意見が読みたい 」と題したブログ記事にこんなことが書かれていました。

「安倍さん以上に現状を良く扱える人がいるか?」という問いに答えられない限り、何を言っても彼らの心に響かないと思う

http://tyoshiki.hatenadiary.com/entry/2018/03/15/083000

この問いの答えは同じ記事内に書かれていてこんな感じです。

彼らの本音は「安倍さん以外の選択肢を考えたくない」である。いろいろな選択肢を比較して考えた結果安倍さんを選んだというよりは、安倍さん以外について考えるのがめんどくさいから、全部安倍さんに丸投げして安心したい」である。他の選択肢やリスクが存在すると考えること自体がもうストレスになっている。ゴルディロックス(適温)相場中の投資家たちと同じような状態といえる。

http://tyoshiki.hatenadiary.com/entry/2018/03/15/083000


こういう人たちが自分で首相候補となりうる政治家をピックアップして掲げている政策を比較検討するなんてことはまずないですよね。多少でも検討しようかと考えられるのは、こうやって次期総裁候補とか次期首相候補とか、メディアによって既にフィルタリングされた選択肢でしかありません。
自民党総裁に限定せず次期首相候補として野党候補も含んだ調査もありますが、せいぜい野党第一党の党首とメディア露出の多い石原慎太郎氏や橋下徹氏といった程度に過ぎないんですよね。
“他に適当な人がいない”とか言ってる人たちの思考にはその程度の選択肢しか無く、その選択肢内ですら政策レベルになるとまともな情報に欠けた状態でほとんど先入観のみで判断してる感じです(小泉進次郎氏の支持がやたら高いのもメディアを通じて形成されたイメージという先入観によるものですよね)。

“他に適当な人がいない”に隠された前提がついたりとか

単純に“次期首相として適当な人”として考えるなら、自由な思考でよいとは思うんですが大体は、安倍・石破・岸田・河野・野田あたりに別枠として小泉進次郎氏とか*4を含めて、その中でああだこうだ言ってることが多くないですかね。野党は党単位で考えられることが多い気がします、それも最初から当て馬という扱いで。
それって要するに、次期首相を狙えそうな人に限定して、その中で“次期首相として適当な人”として考えてるってことだと思います。そして、その時点で“誰が適当なのか”ではなく、“誰が勝ちそうなのか”に話が変わっちゃってるんですよね。
もう少し自由に考えてみればいいと思うんですよね。

安倍以外の“適当な人”の選択肢を提示してみる

野党政治家の中から示しても良いんですが、あえて自民党政治家の中から提示してみます。“他に適当な人がいない”と言っている人たちにとっては、全て安倍氏以下だということでいいはずですが。

菅義偉(現内閣官房長官
麻生太郎(現財務大臣
野田聖子(現総務大臣
河野太郎(現外務大臣
小野寺五典(現防衛大臣
世耕弘成(現経産大臣)
上川陽子(現法務大臣
林芳正(現文科大臣)
加藤勝信(現厚労大臣)
高村正彦(現自民党副総裁)
二階俊博(現自民党幹事長)
萩生田光一(現自民党幹事長代行)
林幹雄(現自民党幹事長代理)
金田勝年(現自民党幹事長代理)
松村祥史(現自民党幹事長代理)
柴山昌彦(現自民党筆頭副幹事長)
小泉進次郎(現自民党筆頭副幹事長)
石破茂(元自民党幹事長)
岸田文雄(現自民党政務調査会会長)
石原伸晃(現自民党外交戦略再生会議議長)

とりあえず上記20人の自民党議員を見渡しても、安倍氏以外は不適当なんですかね?
別の選択肢もありますね。例えばこんな感じ。

石井啓一 (現国交大臣)
山口那津男(現公明党代表
井上義久(現公明党幹事長)

与党としての経験を十分積んでいる政党の議員ですし、政権担当能力とやらも期待できるんじゃないですか?それともやっぱり安倍氏よりも劣りますか?