『法理論上できるがやるつもりはない』という答弁が法案審議でまかり通るなら立法府は不要

戦争法案に対する安倍政権の答弁で何度も繰り返されている詐欺手法。

防衛相“国際テロ対処 自衛隊 貢献の幅広げる”

8月19日 19時23分
(略)
また、中谷大臣は「法理論上、過激派組織IS=イスラミックステートの掃討作戦を行っている外国軍隊を後方支援することはありうるのか」とただされたのに対し、「一般論としてはありうるが、ISILについては、軍事活動、後方支援をする考えは全くない。それは法案が成立したあとも不変だ」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150819/k10010195531000.html

イスラム国に対する軍事行動を制限するような法案になっていないにも関わらず、「考えは全くない」「法案が成立したあとも不変だ」などと無責任な答弁を繰り返すいつもの常套手段です。
類例でこんなのもあります。

平和安全法制に関する特別委員会(平成27年6月1日 議事録)

安倍内閣総理大臣 (略)政府としては、海外派兵は一般に許されないという立場でございまして、武力の行使を目的としていわば自衛隊を海外派兵するということは一般に許されないという立場でございます。
(略)
安倍内閣総理大臣 (略)一般にということはほとんどのものが該当していくということでございまして、ですから、その上において、果たして、では例外は何かということで念頭にあるのはまさにホルムズにおける機雷掃海でございまして、これ以外のものは念頭にはございません。

http://www.kgemba.com/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/1377/

武力行使目的の自衛隊海外派兵は「一般に許されない」「ほとんどのものが該当」とか言いながら「例外は」「ホルムズにおける機雷掃海」などと言い出し、「これ以外のものは念頭にはございません」とだけ述べています。結局のところ、安倍政権の戦争法案は、武力行使目的の自衛隊海外派兵を認めており、具体的な条文で「例外」の範囲を限定してもいないザル法案です。
それを「これ以外のものは念頭には」ないから、法案を通せ、と主張しているわけで、武力行使目的の自衛隊海外派兵が認められる「例外」は安倍首相の「念頭」以外に根拠がなく、ただ安倍政権を信じよ、とだけ言っています。

安倍政権のやり口は典型的な詐欺の手法としか言いようがありません。

自民党の圧倒的な議席数がそのごり押しを容認し、利権のために信仰と平和を売り払った公明党が賛同し、安倍政権の威圧に屈したメディアがそれを批判せず、ネット上に溢れかえるネトウヨ自民信者が政権批判を圧殺する、と。

その結果、『法理論上できるがやるつもりはない』という答弁がまかり通っているわけです。法理論上できるのであれば、法律は何の制約にもなっておらず、ただ権力者にフリーハンドを与えるだけです。「やるつもりはない」という何の強制力も持たない口約束だけで、権力者に課せられた法という縛りを取っ払う。それが、国会という立法機関での法案審議でまかり通る。

それなら、一体、国会は何のためにあるんでしょうか。「悪用しない」という政府の口約束だけで政府権力を無制限にする法案を通すなら、立法府の存在意義なんてありません。そんなのただの協賛機関です。

憲法違反と言われている戦争法案を、「悪用しない」という政府の口約束だけで実質的な審議もなしにただ通すだけなら、事実上、立法権司法権も行政府に集中しているに等しく、三権分立すら成立していないことになります。


ここまで言っても安倍信者には理解できないでしょうが、せめて安倍の洗脳にかかりきっていない人たちにこの異常で危険な状況を認識してほしいものです。