この件。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160809-00000011-mai-pol<稲田防衛相>常時破壊措置を発令 対北朝鮮ミサイル
毎日新聞 8月9日(火)1時53分配信
◇3カ月ごとに更新
稲田朋美防衛相は8日、自衛隊によるミサイル迎撃を可能とする破壊措置命令を出した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は移動式発射台が使われることなどで兆候がつかみにくくなっており、政府は常に迎撃態勢をとれるように今後は3カ月ごとに更新して常時発令にする方針。
自衛隊は命令を受け同日、東京・市ケ谷の防衛省敷地内に航空自衛隊の地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)を配置するとともに、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載する海上自衛隊のイージス艦を日本近海へ展開した。
政府は3日に秋田県沖の排他的経済水域(EEZ)に着弾した北朝鮮の弾道ミサイルに対して破壊措置命令を出せずにおり、対策を加速させていた。【町田徳丈】
8月3日の北朝鮮によるミサイル発射は、これまでの「迎撃態勢」が茶番に過ぎないことを示したわけですが、これに対して安倍政権が取った対応は茶番劇の第二幕という有様です。
自衛隊法で破壊措置命令が認められるのは、“弾道ミサイル等が日本に飛来するおそれがある場合”か“事態が急変して日本に向けて弾道ミサイルが飛来する緊急の場合”です。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO165.html自衛隊法
(弾道ミサイル等に対する破壊措置)
第八十二条の三 防衛大臣は、弾道ミサイル等(弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のものをいう。以下同じ。)が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、我が国に向けて現に飛来する弾道ミサイル等を我が国領域又は公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)の上空において破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる。
2 防衛大臣は、前項に規定するおそれがなくなつたと認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、速やかに、同項の命令を解除しなければならない。
3 防衛大臣は、第一項の場合のほか、事態が急変し同項の内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため、防衛大臣が作成し、内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、同項の命令をすることができる。この場合において、防衛大臣は、その命令に係る措置をとるべき期間を定めるものとする。
自衛隊法の条文上「常時破壊措置を発令」というのは、常時“弾道ミサイル等が日本に飛来するおそれがある”ということを意味します。同時に、自衛隊法82条の三の2項には「おそれがなくなつたと認めるとき」は「速やかに、同項の命令を解除しなければならない」とありますが、これが完全に空文化したことになります。
稲田防衛大臣が“弾道ミサイル等が日本に飛来するおそれがある”と主張し、安倍総理大臣がそれを承認する限り、「おそれがなくなつたと認めるとき」は永久に来ないということです。
“弾道ミサイル等が日本に飛来するおそれがある”というのが具体的にどういう事態を想定しているのか、そういった議論がされないまま漫然と解除規定が空文化され、それがろくに批判もされない状況というのはかなり怖いことです。
近い将来、沖縄米軍基地反対運動を「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で多数の人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為が行われるおそれ」があるとみなして、自衛隊が警護出動(第81条の二)することだってあるかも知れませんね。