在日外国人の犯罪を殊更に取り上げて排斥するネトウヨとどこが違うのかな?

千田氏と駒崎氏がこんな記事を書いていました。
面会交流によって、アメリカでは年間何十人もの子どもが殺されている(千田有紀 | 武蔵大学社会学部教授(社会学) 、2/28(火) 6:38 )
「面会交流」に、ひとり親は殺された(駒崎弘樹 | 認定NPOフローレンス代表理事/全国小規模保育協議会理事長 、3/1(水) 20:43 )

なるほど、日本国内から外国人が一人もいなくなれば、外国人による犯罪は無くなります。それと同様に面会交流を一切認めなければ、“面会交流に殺される”人はいなくなるでしょうね。
千田氏や駒崎氏は、面会交流が原因で子供や監護親が殺された、と主張しており、要するに“だから面会交流は行うべきでない”と主張しているわけですが、極論としか言いようがありません。
夫婦間で殺人が起きる事件は数多くありますが、だから結婚を廃止すべきだとは誰も主張しません。
婚姻中の実父母に子供が殺害される事件もありますが、だからといって子供は両親の下で育てるべきではないと主張する人もいません。
保育園で保育士に子供が虐待されても、保育園を無くせと主張する人はいないでしょうし、ましてや駒崎氏は絶対にそんなことを言わないでしょう。
片親家庭で親に虐待される子供、再婚家庭で義理の親に虐待される子供、養護施設や養父母に虐待される子供、そういう事件があっても、片親家庭や再婚家庭から子供を取り上げるべきだとか、養護施設を廃止せよとか、養子縁組制度を無くせとか主張する人はいません*1

ところが、離婚によって親権を失った親との面会交流についてだけは、事件を理由に面会交流を無くせと主張される*2
この思考回路は、外国人による犯罪を殊更に取り上げ、それを理由に外国人を排斥しようとする在特会ネトウヨやトランプ政権アメリカと同じという他ありません。

救いがたい差別的思考です。

面会交流の実施件数が増えれば、面会交流での事件も増えるのは当然

駒崎氏はこんなことを言っています。

この法案が通ると、諸外国の経験から明らかなように、面会交流での殺人は増えていくことが強く懸念されます。
長崎の悲劇を二度と繰り返さないためにも、面会交流の原則実施を掲げる家庭裁判所と、馬鹿げた「親子断絶防止法」案に反対の声をあげなくてはならないような気がするのですが、全国の皆さん、いかがでしょうか?

https://news.yahoo.co.jp/byline/komazakihiroki/20170301-00068244/

来日する外国人の人数が増えれば、当然来日外国人による犯罪件数も増えます。母集団が増えるのですから当たり前の話です。
2015年の殺人検挙件数864件中、親が子を殺害したのは112件(13.0%)、配偶者を殺害したのは147件(17.0%)、親族間全体では453件(52.4%)、面識のある者全体では754件(87.3%)になります*3
これを見て、配偶者は危険であるとか、親は危険であるとか、そんなことをまともに主張する人はまずいませんよね。濃密な人間関係の間でこそ殺人などの動機が発生するわけですから。

子供を虐待する親については2015年の総数811人中、実父336人(41.4%)、実母180人(22.2%)、養・継父152人(18.7%)、養・継母6人(0.7%)です*4
これを見て、実父・実母は危険であるとか、主張する人もまずいませんよね。実父・実母を暮らす子供の方が母集団として大きいことが常識的に明らかだからです。

面会交流もその実施件数が増えれば、そこでのトラブルが増えるのは当然ですが、それを理由として「面会交流の原則実施」に反対するのは間違いです。

ちなみに、保育所利用する児童数は2008年以降の統計を見ると増加傾向にあります*5が、同時に2008年以降、保育所での死亡事故報告件数も増加傾向にあります*6
駒崎氏の理屈で言えば、保育所での死亡事故が増えることが懸念されるので保育所利用する児童は増やすべきではないと主張しなければいけなくなりますね。

面会交流を実質禁止していることで起こること

まず、子の不当な連れ去りが助長されます。離婚裁判を有利に進めるために子供を人質にするのは現状極めて有効な手段です。相手側が子供に愛情を抱いている場合は当然ですが、そうでなくても養育費名目での金銭請求の根拠に利用できますので、離婚したい側が子を連れ去らないことのメリットはほとんどありません。
子供に愛情を持っていなくても育てるつもりが無くても、有利に離婚したいなら連れ去るというのが基本的な戦略と言えます。

次に、子供を連れ去られた側は取り返そうとして誘拐事件を発生させることがあります。2005年に離婚後親権を奪われ面会交流も妨害されていたケースで、元裁判官の父を子供を取り返そうとして、未成年者略取で逮捕・有罪判決を受けた事例があります。元裁判官の父は一度親権を失い面会交流を拒絶されたら、法的には解決不可能であることを知っていたわけです。これは面会交流を実質禁止しているからこそ起こった事件です。

この他に子供を失った親が自殺することも少なくありません。不当に子供から引き離された上に、事実の有無に関係なくDV・モラハラ加害者というレッテルと世間から貼られ精神的に追い詰められた挙句自殺するという事例がいくつもありますが、世間的にはDV・モラハラ加害者というレッテルが信じられていますので、精神異常者が勝手に自殺したとして冷淡な扱いを受けるだけです。その自殺した親にも老父母がいたりしますが、その老父母も孫と会えなくなった挙句、子供に自殺されるという苦しみを味わうことになります。これも世間的にはまるで存在しないかのように無視されてますね。

もちろん、自殺を選ぶ人ばかりではないでしょうね。正当な理由無く子供と引き離された親は、子供を引き離している当事者である監護親に対する恨みを抱いて当然の状況にあります。上であげたように日本の殺人事件件数の半数は親族間で起きています。
親族という濃密な人間関係では殺害の動機も生じやすい上に、それを実行しやすい環境でもあるからと言えるでしょうが、子供と不当に引き離された上に面会交流すら望めない状況は殺害の動機になっても不思議ではありません。逆に面会交流を通じて良好な親子関係が形成されていれば、殺害の動機は発生しにくいとも言えます。
つまり、面会交流を禁止したり、妨害したりすることの方が、殺人の動機を生じさせる可能性としては考慮されるべきだと私は思いますね。

千田氏が記事で言及しているダーシー・フリーマン事件も、事件直前に面会交流を制限させようとする交渉が確かあったはずです*7。当人の精神的な状態もあったと思いますが、面会交流制限の交渉がそれを悪化させた可能性もあり、単純に「面会交流によって(略)子どもが殺されている」などという主張は、差別主義者による悪質なすり替えと大差ありません。

*1:中にはいるのでしょうけど、社会的な影響力を持った発言がされることはほとんどないでしょう

*2:直接的に無くせといってるわけではありませんが、「面会交流の原則実施」に反対しているので、こう言って構わないでしょう

*3:「図表:1−2−1−1−3(被疑者の年齢層・被害者との関係別殺人検挙件数H17-H27 の推移)」https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/h26-27hanzaizyousei.pdf

*4:「(4) 加害者と被害者との関係別・罪種別の検挙状況」https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/jidougyakutai_fukushihan_kenkyoH27.pdf

*5:http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000072857.pdf

*6:http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000072857.pdf

*7:記事確認中