産経・名村記者、終戦宣言に拘束力がないなどと訳の分からぬことを言う

産経がこんな記事を書いていました。

 終戦宣言は平和協定の締結とは違い、あくまでも“象徴的”な意味合いを持つもので、それには拘束されない。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180624-00000003-san-kr

南北首脳会談で合意された“今年中の終戦宣言”に関連しての名村記者の説明です。
まあ、名村記者はご存じないようですが、日ソ共同宣言というのがありまして、その第1項にはこう書かれています。

日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の全権団の間で行われたこの交渉の結果,次の合意が成立した。
1 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の戦争状態は,この宣言が効力を生ずる日に終了し,両国の間に平和及び友好善隣関係が回復される。

http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/docs/19561019.D1J.html

日ソ間の終戦宣言にあたる条項ですが、さて現在、日本とロシアはこの宣言に「拘束されない」のでしょうか?
もちろんそんなことは無く、一般的に日ソ共同宣言は広義の条約の一種とみなされています。

きょうどうせんげん【共同宣言 joint declaration】

国際法上の宣言は,本来,ある国家あるいは複数の国家の政策表明として行われるもので,一方的な意思表示を意味する。しかし,ときには国家間の合意を内容とする場合がある。この場合は広義の条約の一種ということができる。たとえば,1956年の日ソ共同宣言などはそれにあたる。第2次大戦後における日本とソ連の国交回復に関して,本来ならば平和条約方式によるのが望ましかったわけであるが,最大の懸案事項であった領土問題について合意に至らず,この問題を棚上げしたまま,とりあえず国交を回復するために,正式の条約よりも軽便な方式である共同宣言という形式を採ることになったといえる。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について

https://kotobank.jp/word/%E5%85%B1%E5%90%8C%E5%AE%A3%E8%A8%80-159041

日本政府見解も同様で、日ソ共同宣言を「法的拘束力を有する条約」とみなしています。

Q4 1956年の日ソ共同宣言とはどのようなものですか?

A4 ソ連がサン・フランシスコ平和条約への署名を拒否したため、我が国はソ連との間で平和条約交渉を別途行うこととなり、1956年、日ソ両国は日ソ共同宣言を締結して、戦争状態を終了させ、外交関係を再開しました。日ソ共同宣言は、日ソ両国の立法府での承認を受けて批准された法的拘束力を有する条約です。  
同宣言において、両国は、正常な外交関係が回復された後、平和条約の交渉を継続することとなっており、またソ連は、平和条約の締結後に歯舞群島及び色丹島を我が国に引き渡すこととなっています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/mondai_qa.html#q4

つまり、北朝鮮、米国、韓国、中国といった朝鮮戦争当事国間での合意という形で終戦宣言がされるなら、それは広義の条約であり、当然に拘束力を持つと言えるわけです。
産経・名村記者は、そんなことも知らない、あるいは知らないふりをしてデマをばら撒いている、と。

まあ、所詮産経だから、こんなもんでしょうけど。