「米韓首脳会談たった「2分」」というフェイクニュース

文大統領“屈辱” 米韓首脳会談たった「2分」 北への制裁解除熱望も成果ゼロ(2019.4.12)
とか
文在寅とトランプ「かみ合わなかった米韓首脳会談」の舞台裏(4/16(火) 8:01配信)
とかいうフェイクニュース

実際の2019年4月11日の米韓首脳会談ですが、12時18分からOval Officeでテタテ会談を行ない、13時21分からCabinet Roomで拡大首脳会談を行っています。

まず、zakzakの記事ですがこう書かれています。

 韓国・聯合ニュースによると、トランプ氏と文氏の2人きりの会談は29分間行われたが、報道陣との質疑応答が27分間続き、実際の会談は2分程度だったのだ。
 決して、トランプ氏に時間がなかったわけではない。報道陣とのやり取りでは、ゴルフのマスターズ・トーナメントについて「誰が勝つと思うか?」と聞かれ、タイガー・ウッズなど有力選手の名前まで挙げて冗舌に答えていた。
 トランプ氏の米韓首脳会談での態度について、米国政治に詳しい福井県立大学島田洋一教授は「事実上、『韓国との首脳会談を拒否した』といってもいいぐらいの対応といえる。2分というのは、通訳の時間を入れたらゼロに近い。文氏は首脳会談前、マイク・ポンペオ国務長官や、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と会っている。トランプ氏としては『文氏に伝えるべきことは2人を通じて言ってあるので、首脳会談では具体的なことを話す必要はない』ということではないか」と説明した。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190412/soc1904120015-n1.html

まるで首脳会談の時間が質疑応答で潰されたかのように書いていますけど、この記者会見は首脳会談前に開かれるもので割とよくあります*1
実質的な首脳会談は、この後に小規模サミットとして約30分間、拡大会談として約60分間行っており、決して短い時間とは言えません。
ちなみに質疑応答中の「ゴルフのマスターズ・トーナメント」に関するものは一番最後に出てきたもので、ごく短いものに過ぎません。

さらに言えば、記者会見の約30分間についても両大統領による冒頭発言がありますから、質疑応答だけ27分間というのはかなり眉唾です。

トランプ大統領による冒頭発言中に以下のような部分があります。

So we’ll be having individual meetings later on and all throughout the day with different people from different departments and representatives. The President and myself will be meeting right now in the Oval Office. Then we’ll meet with our groups in the Cabinet Room, as you know. And I think it’ll be very productive. It’s going to be a very productive day.

https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-president-moon-jae-republic-korea-bilateral-meeting/

“これから個別会合を行う予定だし、今日一日各部署・各代表による会合を行う予定だ”と言ってますね。実際、この記者会見前には、ポンペイ国務長官及びボルトン補佐官との会見*2やペンス副大統領との会見*3を行っています。記者会見後もだいたい14時半まで首脳会談を行っています。

福井県立大学島田洋一氏の言うように「トランプ氏としては『文氏に伝えるべきことは2人を通じて言ってあるので、首脳会談では具体的なことを話す必要はない』ということ」であるならば、トランプ大統領と文大統領は共に12時48分から14時28分までの約100分間、黙って座っていたということになってしまいます。

まともな感覚を持っていれば、そんなことはあり得ないとすぐわかるんですが、こと韓国のことになるとその程度の常識すら失ってしまう異常性が今の日本社会には蔓延してるんですよね。

zakzak記事は、記者会見の30分以外に首脳会談が無かったかのように書いていますのでわかりやすいフェイクニュースですが、現代ビジネス記事は記者会見以外の会談についても一応言及しています。

 話を米韓首脳会談に戻すと、その形式も、「3段構え」という珍しいものとなった。すなわち、最初にテタテ会談(両首脳に通訳を交えただけの会談)をオーバル・オフィス(大統領執務室)で30分、次に互いの側近を交えただけの少人数会合を、隣のキャビネット・ルーム(閣議室)で30分、そしておしまいに実務担当者を含めた拡大会合を同室で60分、計2時間というものだ。ワシントンの外交関係者が続ける。
 「韓国側は特に、『テタテ会談を重視したい』と要請してきた。つまり文在寅大統領が、金正恩委員長の意向を直接、トランプ大統領にだけ伝え、大統領自身を口説き落とそうという算段だ。
 これにアメリカ側は難色を示したが、やはり『秘策』を考えて受諾した。それは第一に、テタテ会談の冒頭で記者団を入れるが、その時間を最大限長くとって、トランプ大統領のメッセージを、テレビカメラを通じて、アメリカ国民と平壌に伝えること。第二に、テタテ会談にメラニア夫人を入れて互いに夫人同伴とし、『秘匿性』と『非公式性』を薄めることだった。
 この日のトランプ大統領は、千両役者だった。30分のテタテ会談のうち、記者との応答に、何と26分も使い、残りはたったの4分。移動時間や通訳が訳す時間を除けば、文大統領が切望したテタテ会談は2分だけだった」

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190416-00064132-gendaibiz-int&p=2

しかしながら、ここでの情報源である「ワシントンの外交関係者」が謎です。
そもそも、会談前の記者会見を行い、そのままその場で少人数での首脳会談を開き、その後実務担当者を交えた拡大会談をやるというのは首脳会談の形式として別に珍しいものでもありません。「秘策」でも何でもありません。しかも、4月11日の米韓首脳会談ですが、「互いの側近を交えただけの少人数会合」は「隣のキャビネット・ルーム(閣議室)」ではなく、記者会見を開いたOval Officeでそのまま行っています。
トランプ大統領自身が記者会見で「The President and myself will be meeting right now in the Oval Office. Then we’ll meet with our groups in the Cabinet Room, as you know.」と言ってますよね。
そうすると「ワシントンの外交関係者」の言っている「30分のテタテ会談のうち、記者との応答に、何と26分も使い、残りはたったの4分。移動時間や通訳が訳す時間を除けば、文大統領が切望したテタテ会談は2分だけ」におかしな部分が生じます。記者会見と少人数会合は同じ場所で行っているのですから「移動時間」なんて無いんですよね。


というわけで、「米韓首脳会談たった「2分」」などというニュースは、韓国を貶める目的のフェイクニュースという他ありません。

まあ、そういう嫌韓フェイクニュースを信じたい人には理解できないでしょうけどね。



*1:例えば、2018年11月30日の日米首脳会談でも会談前に記者会見を行っています。

*2:https://www1.president.go.kr/articles/5982

*3:https://www1.president.go.kr/articles/5983