“戦勝国でさえ放棄した「賠償請求権」を韓国が主張できるはずがない”?

こんなツイート。

元ネタはこっちですかね。
日朝関係からみた「徴用工」問題 防衛大学校教授・倉田秀也

そもそもサンフランシスコ講和条約第4条(a)でいう「特別取極」が日韓基本条約などに結実したわけだし、それは戦勝国でさえ放棄した「賠償請求権」(第19条)を日本からの分離「独立」が承認された「朝鮮」(第2条(a))半島の一部しか実効支配していない韓国が主張できるはずがない、と。

https://twitter.com/YukiAsaba/status/1166628695936786438

で、サンフランシスコ平和条約第4条(a)を基にしている以上、戦勝国でさえ放棄した「賠償請求権」を主張できるわけがないなんてことはありません。
例えばインドネシアですが、1951年に賠償を放棄するサ条約に署名しながら国内事情で批准せず、対日国交正常化の前提条件として賠償問題の解決を掲げ*1、1958年に日本から賠償を勝ち取っています。
ちなみに1953年時点でインドネシアが要求した損害賠償額は172億ドルです。最終的には賠償額2億2308万ドルで合意しています。

日本国とインドネシア共和国との間の平和条約

この条約ですが文言上、日本はものすごく低姿勢です。
日本は戦争中に日本が与えた損害及び苦痛を償うために賠償を支払う用意があるが、その全ての損害及び苦痛に対して完全な賠償を行えるほどの十分な資源が無いので、インドネシアはそれを承認して、条約に記載した賠償額に同意し、それ以外のすべての賠償請求権を放棄する、という条文になっています(第4条)。

いうまでもなく、インドネシアは1945年8月17日に独立したもので日本と戦争状態にあったわけではありません。
にもかかわらず、第1条では、日本とインドネシアが戦争状態にあったことを認めています。

戦勝国でさえ放棄した「賠償請求権」をインドネシアは主張していますね。

「「独立」が承認された「朝鮮」(第2条(a))半島の一部しか実効支配していない韓国が主張できるはずがない」

というのもおかしな話で、日韓基本条約第3条で日本は韓国政府が「朝鮮にある唯一の合法的な政府であること」を確認しています。

大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。

日本政府の公式見解では韓国政府が「朝鮮にある唯一の合法的な政府であること」になっていますから、韓国が賠償を請求することに何の支障もありません。
そもそも亡命政権とかじゃない限り、実効支配下には日本に賠償を求める国民がいるわけで、分断されているかどうかは賠償が請求できない理由にはなりません。

実際、日本は1959年に南北に分断されているベトナムに賠償を支払っています。
日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定

まとめ

要するに、防衛大学校教授の倉田秀也氏はその程度のことを知らないか、知ってて隠蔽しているわけで、この「正論」記事を肯定的に引用している浅羽祐樹氏もその程度であるということです。