植民地出身の慰安婦の場合の拘束の形態のひとつ

従軍慰安婦否定論者でまともに吉見教授の「従軍慰安婦」を読んでいる人はいなさそうなので、少し紹介(P151-152)。

 経済的・精神的拘束
 植民地出身の慰安婦の場合、前借金で債務奴隷状態にされていることも逃亡ができない理由のひとつだった。軍は、慰安婦の借金をなくすように業者に指導していた。しかし、業者が慰安婦にかける借金の利子、病気などで休んだときの稼ぎの欠損を借金に繰り入れたり、衣服・化粧品などを法外な価格で貸し付けたりして、借金を加重していくことには、軍は介入しなかった。たとえば、長沢健一軍医大尉は、借金のある慰安婦には金銭は一銭も渡らなかったとして、つぎのようにのべている。

したがって慰安婦の日常の入用は、楼主や帳場から借金をすることになった。こうした借金は台帳に記載されないから、それを返すには、楼主は、たとえば十人の客を取れば表向き八人と報告し、二人分の揚げ代で高利をつけて返金させる。そこまでは兵站も監督の目が届かないから、事実上目こぼしの状態であった。(『漢口慰安所』)

 このような借金づけの状態は、慰安婦の精神をしばり、行動を拘束していた。また、契約期間がある慰安婦の場合、年季が明けて借金を返し終えれば、帰国することができたはずだったが、交通手段がないためにあきらめなければならなかった慰安婦も少なくなかった。たとえば一九四三年六月、ビルマの第一五軍司令部は借金を返済し終えた者の帰国を認めることにし、そのうちの一部は帰国することができたが、第一一四連隊の朝鮮人慰安婦たりは戦況を理由に帰国が認められなかった。条件を満たしているので帰国を希望したある慰安婦は「説得されて残留することに」なってしまったという(前掲「心理戦尋問報告」第二号。『資料集』100)。

特にコメントはしませんが、興味があるなら図書館でも行って読んでみてはどうかと思います。
まあ、とりあえず読みもせず否定するってのはどうかと思います。