“中国の防空識別圏だけが異常”って本当?

防空識別圏は多くの国が勝手に設定しています。
では、なぜ中国の防空識別圏だけ騒ぎ立ててるの?というと、それは政治的な理由なわけですが、そう認めたくない人は“中国の防空識別圏だけが異常”だからという理由を見出そうとします。

■異常な中国式防空識別圏

ならば、今回の防空識別圏策定は特に騒ぎ立てるような必要性はないのだろうか。それは違う。中国政府はは国際慣例に従って策定したと繰り返し表明しているが、実は中国の防空識別圏は上述してきたような「普通」のそれとは異なるものだからだ。23日に発表された「中華人民共和国東シナ海防空識別圏航空機識別規則公告」がそのことを明示している。
まず第一条からして「中華人民共和国東シナ海防空識別圏を飛行する航空機は必ずこのルールを守らなければならない」と、他国の航空機に義務を負わせている。以下、フライトプラン提出、無線通信ができるような状態にしておくこと、そして何より中国側の指示に必ず従うこといずれも義務としている。従わなければ、「中国武装力量は防御的緊急処置対応をとる」と明記している。

繰り返しになるが、本来、防空識別圏とは自国防衛のため勝手に策定するもので、他国の航空機になにかの義務を負わせることはできない。他国でもフライトプランを提出しているケースもあるが、それはあくまでお願いに過ぎない。その意味で義務を強要する中国の防空識別圏は通常とは異なる異質のもの。米国がそんな必要はないと一蹴したのもむべなるかな、だ。

http://kinbricksnow.com/archives/51879719.html

こんな感じですが、「中国の防空識別圏は通常とは異なる異質のもの」と言い切るからには、他の多くの国の防空識別圏について周知しているのでしょう、きっと。

私は国際法を専門としているわけではありませんので、日本以外には以下の例くらいしか見つけられませんでした。

4.ADlZ(防空識別圏

(1)ADIZの有無
タイ国のADIZは表2−5に示すとおりである。
(2)地国の航空機が自国ADIZ内に入域する場合の手続はどのようになっているのか。また制限事項等、何らかの規制を行っているのか。特に、捜索救助活動の場合については特別な取り扱いがなされるのか。
Bangkok Area Control Center(VTB BZRZX)が、Bangkok FIR(飛行情報区域)で運用するすべての航空機(計器飛行あるいは有視界飛行いずれでも)に、フライトプランの提出を求める。タイADIZ内の飛行場に向うことになっている航空機、あるいはタイADIZを越えて飛行する航空機は、フライトプランを出発地点でBangkok Area Control Centerに伝へるよう提出する必要があり、これはすべての航空機に強制される。
航空路に沿って飛行する飛行機は、正規の報告地点で報告しなければならない。航空路を離れてタイADIZに接近している航空機は、タイADIZの境界線を越える少なくとも10分前に予定時刻を連絡しなければならない。
もし適当なATCAir Trafic Control)と無線通信を行うことが出来なかった場合、航空機は最も近いGround Control Intercept(GCI)と127.0MHzまたは278.4MHzで連絡を取り、タイADIZに入る前に明確な承認を受ける。
航空防衛認識手続(Air Defence Identification Procedures)あるいは航空交通コントロール規則及び手続(Air Traffic Control Regulations and Procedures)を固く守らない飛行機、またフライトプランから逸れて地点通過予定時刻の5分問以内の進入をあやまって強制通報地点を通過してしまった場合、あるいは指定航空路の中心線から陸上10マイル、海上20マイル以上はずれて運航した場合は、タイ空軍の妨害機の妨害を受ける。タイ空軍の妨害機により妨害を受ける航空機は、Annex2、Chaptes3 Para3.8に従って厳しい妨害処置を受ける。
もし、妨害機と妨害を受けた飛行機が直接通信が出来ないときは、Appendix1 Para2による視覚信号が用いられる。
妨害を受けている飛行機が、もし妨害機の命令に従わない場合には、タイ空軍の攻撃を受ける。タイ空軍当局は、妨害機の他の方法による航空機に原因するいかなる損害にも責任を持たない。航空機の所有者は妨害機による調査、確認のための経費を負担する。

http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1996/00763/contents/072.htm

「タイADIZ内の飛行場に向うことになっている航空機、あるいはタイADIZを越えて飛行する航空機は、フライトプランを出発地点でBangkok Area Control Centerに伝へるよう提出する必要があり、これはすべての航空機に強制される。」とあり、明らかに「他国の航空機に義務を負わせてい」ます。
フライトプラン提出、無線通信ができるような状態にしておくこと」に相当する要求もありますし、「強制通報地点を通過してしまった場合」「タイ空軍の妨害機の妨害を受ける。タイ空軍の妨害機により妨害を受ける航空機は、Annex2、Chaptes3 Para3.8に従って厳しい妨害処置を受ける。」などと書かれていますが、「中国側の指示に必ず従うこといずれも義務としている」に相当すると言えるでしょう。


さて、中国とタイの防空識別圏だけが異質なのでしょうか?それとも中国の防空識別圏が異質という認識がそもそも間違っているのでしょうか?