元々、日本主導のアジア開発銀行(ADB)は融資に関して硬直性が指摘されていて、よく言えば審査基準が厳格、悪く言えば使い勝手が悪いという評判でした。ADBには中国も出資していましたが、日本主導のADBでは中国側の発言権はかなり制約されていたと言えます。歴代のADB総裁は全て日本人が独占しており、日本企業のための銀行だったわけで、まあ日本がアジア最大の先進国であった時代にはそれでも良かったわけです。
援助を受ける途上国側にしても、使い勝手の悪いADBであっても、事実上それしかないという状況ではそれに縋るしかなかったと言えます。
ところが、中国が経済成長するにつれて、中国側はADBの現状に不満を持ち、途上国側も中国側の資金力に魅力を感じるようになりました。前ADB総裁の黒田東彦氏ですが、安倍政権によりADB総裁の任期途中で辞職し日銀総裁になっています。もし協調路線を考慮するなら、新ADB総裁として日本人以外から選出するという手もあったと思いますが、結局は日本の中尾武彦氏が新総裁になっています。
この時点で、経済成長しているにも関わらず、それに見合った中国の関与を安倍政権が望んでいない、と言うのが明らかだったと言えるかもしれません。
中国側にしても、ADBを通じた影響力拡大には早々に見切りを付けたようで、それがアジアインフラ投資銀行(AIIB)の構想につながります。
AIIBに対しても安倍政権は協力を事実上拒絶する方針を堅持しています。
日本主導のADBに中国が出資しているように、中国主導のAIIBに日本が出資するという手段もありましたが、安倍政権は拒絶しました。外交的な失策と言うか、反中イデオロギーに支配された安倍政権では中国側と協力と言うこと自体ができないのでしょう。イデオロギーが外交に優先しているわけですね。
むしろ中国側の方がイデオロギーフリーな感じで、日本に協力を呼びかけている状況ですが、日本語ネット上では“中国が金の無心をしている”程度の認識で凝り固まり、安倍政権もそのレベルから抜け出せない状況では話にならないでしょう。
「安倍首相、AIIBに対抗し投資表明 「これが日本のやり方だ」(SankeiBiz 5月22日(金)8時15分配信 )」で安倍政権が、AIIBの一割増しの投資額を提示したのはかなり子供じみた対応です。
安倍政権は、中国との協力ではなく対立を選んだわけですが、現実的な選択とは言いがたく反共イデオロギーの産物としか言いようがありません。
自民党の事実上の機関紙である産経は「安倍首相、AIIBに対抗し投資表明」と安倍首相の代弁をしていますが、さすがにこれはまずいと思ったのか、麻生財務相が否定する発言をしています。
「AIIBへの対抗でない=麻生財務相(時事通信 5月22日(金)11時14分配信 )」
まあ、「中国包囲網」とかを夢見る安倍政権ですから、麻生財務相の口先否定なんて誰も信じてませんけどね。
いよいよアジアの覇権をかけた日中対立が経済面でも色濃くなってきたと言えるでしょう。
しかし、まあ次期大統領選前後に、米中接近とかではしごを外されるとかいうオチが結構な確率でありそうなんですよね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150522-00000059-jij-polAIIBへの対抗でない=麻生財務相
時事通信 5月22日(金)11時14分配信
. 麻生太郎財務相は22日、閣議後の記者会見で、安倍晋三首相が発表したアジアのインフラ整備支援策について「アジアインフラ投資銀行(AIIB)の話は首相の頭の中にはないと思う。対抗するような種類の話ではない」と述べた。AIIBの設立を主導する中国への対抗策との見方を否定したものだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150521-00000012-fsi-bus_all安倍首相、AIIBに対抗し投資表明 「これが日本のやり方だ」
SankeiBiz 5月22日(金)8時15分配信
安倍晋三首相は21日、東京都内で開かれた国際交流会議の晩餐(ばんさん)会に出席。スピーチで「質の高いインフラをアジアに広げていきたい」と述べ、アジアでのインフラ整備拡充を表明した。アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を目指す中国に対抗するのも狙い。日本が主導するアジア開発銀行(ADB)との連携や政府開発援助(ODA)を活用することで、今後5年間で、約1100億ドル(約13兆3000億円)の投資を目指すとした。
安倍首相は「世界中から多様な資金をアジアに呼び込み、ダイナミックなイノベーションが開花する大地へと変えていきたい」と訴え、各国や国際機関などと協働し、日本の高い技術力を生かす「質の高いインフラ投資」の推進を打ち出した。
また、「質の高いインフラ投資」の柱としては、(1)円借款や技術協力などODA支援の拡大・迅速化(2)融資能力の拡大などのADB改革を後押し(3)国際協力銀行(JBIC)によるリスク資金の積極的供給(4)質の高いインフラの世界標準化−を挙げ、「質も量も二兎(にと)を追う」と強調。
その上で、「日本の技術を単に持ち込むのではなく、人を育て、しっかりと根付かせる。これが日本のやり方だ」と語った。
日本のアジアインフラ投資拡大をめぐっては、麻生太郎財務相が今月4日、アゼルバイジャンで開かれたADB年次総会の演説で、同政策パッケージの実施を明らかにしていたが、具体的な投資規模については言及していなかった。
同総会ではADBの中尾武彦総裁が、年間融資枠を最大1.5倍に拡大する意向を示したほか、官民連携の強化を強調。将来の増資について触れるなど、アジアのインフラ需要に対応するため、改革の進展をアピールした。2017年に横浜での総会開催が決まった日本も、麻生財務相がADBの機能強化への貢献を表明していた。
成長著しいアジアでは、鉄道や道路などインフラ整備に毎年100兆円が必要とされている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150521-00000576-san-bus_all&pos=5安倍首相「質も量も、二兎を追う」 アジア向けインフラ投資、5年間で13兆円表明
産経新聞 5月21日(木)21時41分配信
安倍晋三首相は21日、東京都内で開かれた国際交流会議で講演し、公的資金によるアジア向けのインフラ投資を今後5年間で約3割増やすと表明した。日本が主導するアジア開発銀行(ADB)や政府開発援助(ODA)を通じた融資を含め、約1100億ドル(約13兆2千億円)の投資拡大を目指す。アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を目指す中国に対抗する狙いがある。
講演で安倍首相は、「世界中から多様な資金をアジアに呼び込み、ダイナミックなイノベーションが開花する大地へと変えたい」と訴えた。各国や国際機関などと協働し、日本の高い技術力を生かす「質の高いインフラ投資」を推進する考えだ。
その上で、具体的な施策として(1)円借款や技術協力などODA支援の拡大・迅速化(2)融資能力の拡大などのADB改革を後押し(3)政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)によるリスク資金の積極的供給(4)質の高いインフラの世界標準化−を挙げた。
成長著しいアジアでは、鉄道や道路などインフラ整備に毎年100兆円が必要とされている。安倍首相は「質も量も。二兎(にと)を追う」と語った。
アジアの資金需要に応じるため、ODAの実施機関である国際協力機構(JICA)を活用し、5年間で4兆円を超える支援をする。JBICなども官民連携のインフラ事業への融資や出資で計約2兆4千億円を投じる。途上国政府の保証がなければ融資できなかった比較的リスクの高い事業にも資金を提供する。
今回の日本の投資総額約1100億ドルには、ADBによる5年間の融資額など約530億ドル(約6兆3600億円)が含まれる。
日本のアジア向けインフラ投資については、麻生太郎財務相が今月、アゼルバイジャンで開かれたADB年次総会で、投資拡大を表明していた。だが具体的な投資規模については言及していなかった。
中国主導のAIIBの融資枠は未定だが、設立時の資本金は1千億ドル近くになる可能性がある。